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強くなりたくて
エトン
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今日からエデンズカフェの特訓がスタートする。私は張り切って朝から目が冴えて仕方なかった。寝ぼけたモカちゃんを引きずりながら校庭に向かった。
「おはよ!みんな!」
「お、元気だなリリィ」
「あったりまえだよ!まさかみんなの特訓に参加できるなんて!」
「これからはそれが当たり前だ。お前もお前自身が憧れる自分になるんだ」
「ひゅ~っ!ダイヤかっこい~!」
「クローバー。お前はもう少し真面目にやれ」
「うげっ…流れ弾」
「クローバーさんもカッコいいですよねっ!」
「そういうことを言ってるんじゃないんだが…」
「さあ、始めようぜ!」
「あ、はーい」
「スパーダ。まずは何をする?」
「ストレッチをして軽く走った後に軽く魔力コントロールをするんだ。朝練だからな。そんなに重くはしないし時間もかけない」
「流石スパーダ!よく考えてる!」
「ダイヤが決めたメニューなんだけどね~」
「余計なことを言わないで!」
「へへ~」
「よし、じゃあストレッチ!」
私たちは2人ずつ3組に分かれてストレッチをした。
「クローバーがペアか!」
「よろしくねリリィ!」
「クローバーって、小さい割にかなりしっかりした筋肉なんだね」
「ちっさいは禁句!でもそうだね。私って双剣を使うから足腰は特にちゃんとやってるんだ」
「あれはやっぱり筋力なの?」
「魔力も使ってるよ。剣の柄が柑橘類みたいになってるでしょ?あそこの果肉みたいな部分がバーニアになっててぶしゃあって魔力を放出するの。そうすると勢いをつけた斬撃を放てるってワケ」
「うわぁ…すごいなぁクローバー!」
「へへん!いいでしょ~。」
「おいおい手が止まってるぞ。しっかりやれ。身体を痛めても知らんぞ」
「はーい」
「よし、じゃあ…ぎゅ~!」
「いた!いたたたた!ちょっと強いって!」
「あれ?固いねリリィ」
「クローバーが強いんだって!」
「いやでも私半分くらいしか押し込んでないよ?」
「え、ほんと?」
「うん。もっと押そうか?」
そう言いながらクローバーはさらに力を込めてくる。
「うわああ!いたいい!」
「ちょっと、いじめちゃだめでしょ!」
「わ、いじめてないよ!ストレッチは大事でしょ?」
「しかし私も見てたが固いなリリィは」
「個人差あるでしょ!」
「いいや甘い!唐突に襲われた時や機敏な判断を問われた時に身体が動かなければ命を落とすこともある!常に身体はしなやかに保つべきなんだ!」
「それはそうかも…ごめんダイヤ」
「気にすることはない。確かに個人差があるというのも事実だ」
「私たちがみんなで柔軟手伝ってやるからさ!ね!」
「え、そこまでは…」
「そうですよ!やりすぎるとむしろ身体に悪いですから!日々の積み重ねが大事です!」
「ちぇ…押してやろうと思ったのに」
「なんかスパーダからは悪意を感じたよ…」
「なんだとー!」
「まぁまぁ、みんなそれくらいにしようよ」
「そうだな。ストレッチで終わってしまう」
「じゃあここらで切り上げて走るか!」
「おー!」
「それで、どのくらい走るの?」
「校庭を10周だ」
「軽くって言ったよね!?」
「軽いだろ?」
「うん」
「リリィさん、普段あまり運動はされないのですか?」
「いや、なんというか…なんとも言えない…」
「とりあえず走ってみるか?」
「羽根を使うのはなしだぞ」
「まだ使えないんだよ」
「なら好都合かな」
「速さを競うんじゃないからな」
「無理せず頑張ればいいんだよ~。やった分だけ次できるようになるからさ!」
「わかった!頑張ってみる!」
「ファイトです!リリィさん!」
「ありがとうハート!」
そして私たちは走り出した。
「あれっ!意外と…走れる!」
多分この身体と元の身体では肺機能が違うからだろう。身体能力にもこうまで差がつくと非常に爽快だ。
「おいおい!さっき泣き言言ってたやつがあんなに走れるものか?」
「杞憂だったみたい!」
「すごーいリリィねぇね!」
「でもなんやかんやみんな同じくらいの速度だね」
「クローバーはぶっちぎりだけどね…」
「あれ?私の話?」
「1周差をつけられた!」
そして私たちは10周を走りきった。
「はぁ、気持ちよかった!走るのがこんなに楽しかったのははじめてだよ!」
「みんなで走るのがまたいいよね!」
「ほんとね!」
「よし!次は魔力コントロール!武器を出せ!」
みんなが一斉に武器を具現化する。
「扱いには注意しろよ!特に火を使う時はな!」
「はーいママ~!」
「おらっ!」
「おわっ!危なっ!」
クローバーは足元からツタを生やされた。
「よし、じゃあやろう」
「うおー!」
「がおー!」
「えいっ!」
みんなそれぞれ武器の扱いを特訓した。
「ふうっ。いい汗かいた!」
「みんなおつかれ!」
「それじゃあ教室に行こうか!」
私たちは特訓を終えてホームルームの始まる前に教室に向かうことにした。
「はい、みなさん。先日の迎撃戦お疲れ様でした。各自報酬を付与しますのでエトンのチェックをよろしくお願いします」
「報酬…エトン…」
「リリィさんは知らないだろうから説明するよ。魔法生物との戦闘が行われた場合戦果に応じて報酬を付与することになっているの。その報酬は各自の所持するエトンに送られるの。あ、まだリリィさんのエトンは登録されてないからとりあえず説明だけね」
「はい!」
「まずエトンっていうのはこれ。一見して魔導書みたいでしょ?でもページが自動で更新される魔法がかかってるからお知らせや情報が追加されるんです。お知らせがある時はエトンに宿る精霊が教えてくれるから安心して」
「わかりました!」
エトンは物語の根幹に関わるものだ。タイトルの『グリーン☆ぐりもわーる』のぐりもわーるに該当する存在といえばわかりやすい。タイトルに入っているくらいだからね。でもみんなが持っているエトンの色はグリーンではない。
「それで、報酬っていうのはね。ざっくり言うと財である二ーディがもらえるの。お買い物に自由に使っていいからね。でも二ーディ欲しさに敵を横取りしたり汚い真似をしたら…許しませんからね」
レイン先生は釘を刺すように殺気の籠った笑みを浮かべた。
「肝に銘じておきます…」
「それで、まだエトンはないんだけどリリィさんにも報酬が出てるので明細を渡しておきますね」
レイン先生から二ーディの金額が書かれた紙を受け取った。
「500二ーディ…これってどのくらいなのかな?」
「リリィ、500か。なかなかあるね」
「スパーダは?」
「私は1200」
「倍以上だね」
「医務室送りになったからちょっと引かれてるぞ」
「あーやっぱりそうなんだ」
「まぁ私は前線ってのもあるしね」
「そういえばエトンってどこにあるの?」
「呼ぶんだよ。ロメオっ!」
「はいはいっ!」
貴族的な服を着たペンギンが出てきた!
「わ、すごい」
「エトンには精霊が宿ってるからね。私の精霊はロメオ。かわいいだろ?」
「まぁ…うん」
「微妙な反応!」
「あ、リリィさーん!報酬どうでしたかぁ?」
「ハート!ねぇねぇ!ハートのエトン見せてっ!」
「はい!ミューズ!」
「にゃおんっ!」
宝石の装飾品をつけた猫がでてきた!
「ミューズ!かわいい~!!」
「絶妙な反応!」
「あんたはちょっと派手すぎるのよ。あたしみたいにさりげなく煌びやかにしないと」
「大きなお世話!」
「にゃんですって!?」
精霊たちが短い手足をぱたぱたと動かしながら争い始めた。
「ちょっといきなりケンカしないでよ」
「やめなさいミューズ…」
「ごめんなさい…」
2匹はしょんぼりとしながらお互いに離れた。
「楽しそうだよね精霊がいると」
「まぁ1人の時は頼りになるけど誰かといる時には基本的に出さないよね。うるさいし」
「うるさいっ!?」
「そういうとこだぞ」
「そういえばどんな手続きしたらエトンがもらえるの?」
「エトンはね、適正を検査したら学園長が自らお作りになられるんだよ」
「あれだけの生徒のエトンを作っちゃうのってすごいですよね!」
「精霊は自分の心から生まれるらしいぜ。なんでこんな騒がしいペンギンに…」
「失礼ッ!」
「まあロメオもマスコット的にはありだよね」
「サポート役なんだがな…」
「リリィさんの精霊、楽しみですね!」
「ね!どんな粗を探してやろうか楽しみだね!」
「いやスパーダさん…そんなことないですよ」
「あれ?違った?」
「大丈夫!私の精霊は完璧なはずだから!」
「私も初めはそう思ったさ」
「完璧だろッ!?」
「叫ぶばっかであんま説明してくんねぇんだもんこいつ」
「………」
「うわだんまり…ロメオ…それはないんじゃない?」
「こういうやつなんだよ。だから私もそれなりの対応をしている」
「ちくしょーッ!」
「あ、帰っちゃった。」
「エトンの精霊にもちゃんと機嫌とかあるから気をつけなよ」
「スパーダが言うんだ…」
「おーいロメオっ!」
「………」
「な。フォローしないとしばらく出てこないから」
「ちゃんとしておきなよ…」
「ミューズはそんなことないんですけどね…」
「あんなへそ曲がりと一緒にしないでちょうだい」
「あ、ごめんなさい」
「さて、じゃあまた特訓の時にな」
「あ、はーい」
「また会いましょう。失礼します」
「ばいばーい」
2人は去っていった。
昼休みにレイン先生に声をかけられた。
「リリィさん。適性検査をするので後で学園長室に行ってください」
「あ、わかりました!」
「放課後すぐがいいと思いますよ」
「ありがとうございます!」
「それじゃあね。お昼に邪魔してごめんなさい」
「はーい」
放課後にハーベスト学園長に会いに行かなくてはならないようだ。特訓はどうしようか…。
「あ、聞いてたよ~リリィ。放課後の特訓遅れそうだね?」
「クローバー」
「みんなに言っておくから行っておいで」
「ありがとう!」
「学園長の質問でエトンの精霊が変わるって噂があるよ。なるべく正直に答えなね」
「そうなんだ!わかったよ!」
「うん!変に完璧そうなの狙ってめちゃくちゃな精霊ができちゃった人もいるから気をつけてね!」
それは避けたい…。
そして放課後。
「すみません、キューティ・リリィです」
「……入りなさい」
学園長の許しを得た私はその重い扉を開く。
「どうだね…。学校には慣れたかい?」
「はい!もう魔法も使えますしみんなとも仲良くてしています!」
「そうか…それは良かった…。さて、適性検査だな」
「はい!」
「まずは魔力の確認をする。…手をこちらに。魔力を手に集中させなさい」
「はい!こうですか?」
軽く右手を前に差し出してみる。
「…よろしい。ふむ…なかなかの魔力を秘めているな…」
「そうなんですか!?」
「まだはっきりとはせんがな。伸ばすのも縮めてしまうのも君次第だ」
「頑張ります…!」
「さて…ではいくつか質問をする。可能な限り正直に答えなさい」
「はい!」
「1つ目。君は魔法を何と心得る?」
「えっと…心の力を反映させる…鏡みたいなもの…です」
「……ふむ。では2つ目。君にとって正義とは何か?」
「…自分の属する物、それを守るための意思です。敵対する者も同じ物を持つのだと認識しています」
「……なるほど。では3つ目。戦いにおいて最も大切なことは何か?」
「それは…命に対する尊重だと思います。仲間の命、敵の命、それは全て戦場では等しい。奪うのも奪われるのも、守るのだって等しいんです。相手に敵対の意思がなければその対象は敵だろうと等しいはずです」
「…君は最近この世界に来たのだったな?」
「はい。しかしこの世界の天使としての意見です」
そう、紛れもなく。私はいつだってこの世界を夢見てきた。そうして常に考え続けてきた。失われていく仲間、育まれる絆。その全てが等しく平等に敵味方に存在していたから。
「…先の戦いを踏まえての意見ならば真実なのだろう。わかった。君のエトンを作ろう」
「ありがとうございます!」
「見ていなさい」
「え?」
「エトンは君本人がいないと完成しない」
「これを全校生徒分やったんですか!?」
「それくらいすぐにできるということだ」
魔力の消費は問題ないといわんばかりだ…流石学園長…。
「ではお願いします」
「うむ…」
学園長が目を閉じると周囲に光が集まってきた。それを溜めるように手を前に出し大きな光が手に集まった時、学園長は開眼した。
「ふんっ!」
学園長が低く唸り手を握ると目の前の光が弾けその中から魔導書のようなものがでてきた!
「できたな」
「これが…エトン…」
光の残像の中に浮かぶエトンはだんだんはっきりと姿が見えるようになってきた。
「これは……!」
そこにあったのは、緑色のエトンだった。
「おはよ!みんな!」
「お、元気だなリリィ」
「あったりまえだよ!まさかみんなの特訓に参加できるなんて!」
「これからはそれが当たり前だ。お前もお前自身が憧れる自分になるんだ」
「ひゅ~っ!ダイヤかっこい~!」
「クローバー。お前はもう少し真面目にやれ」
「うげっ…流れ弾」
「クローバーさんもカッコいいですよねっ!」
「そういうことを言ってるんじゃないんだが…」
「さあ、始めようぜ!」
「あ、はーい」
「スパーダ。まずは何をする?」
「ストレッチをして軽く走った後に軽く魔力コントロールをするんだ。朝練だからな。そんなに重くはしないし時間もかけない」
「流石スパーダ!よく考えてる!」
「ダイヤが決めたメニューなんだけどね~」
「余計なことを言わないで!」
「へへ~」
「よし、じゃあストレッチ!」
私たちは2人ずつ3組に分かれてストレッチをした。
「クローバーがペアか!」
「よろしくねリリィ!」
「クローバーって、小さい割にかなりしっかりした筋肉なんだね」
「ちっさいは禁句!でもそうだね。私って双剣を使うから足腰は特にちゃんとやってるんだ」
「あれはやっぱり筋力なの?」
「魔力も使ってるよ。剣の柄が柑橘類みたいになってるでしょ?あそこの果肉みたいな部分がバーニアになっててぶしゃあって魔力を放出するの。そうすると勢いをつけた斬撃を放てるってワケ」
「うわぁ…すごいなぁクローバー!」
「へへん!いいでしょ~。」
「おいおい手が止まってるぞ。しっかりやれ。身体を痛めても知らんぞ」
「はーい」
「よし、じゃあ…ぎゅ~!」
「いた!いたたたた!ちょっと強いって!」
「あれ?固いねリリィ」
「クローバーが強いんだって!」
「いやでも私半分くらいしか押し込んでないよ?」
「え、ほんと?」
「うん。もっと押そうか?」
そう言いながらクローバーはさらに力を込めてくる。
「うわああ!いたいい!」
「ちょっと、いじめちゃだめでしょ!」
「わ、いじめてないよ!ストレッチは大事でしょ?」
「しかし私も見てたが固いなリリィは」
「個人差あるでしょ!」
「いいや甘い!唐突に襲われた時や機敏な判断を問われた時に身体が動かなければ命を落とすこともある!常に身体はしなやかに保つべきなんだ!」
「それはそうかも…ごめんダイヤ」
「気にすることはない。確かに個人差があるというのも事実だ」
「私たちがみんなで柔軟手伝ってやるからさ!ね!」
「え、そこまでは…」
「そうですよ!やりすぎるとむしろ身体に悪いですから!日々の積み重ねが大事です!」
「ちぇ…押してやろうと思ったのに」
「なんかスパーダからは悪意を感じたよ…」
「なんだとー!」
「まぁまぁ、みんなそれくらいにしようよ」
「そうだな。ストレッチで終わってしまう」
「じゃあここらで切り上げて走るか!」
「おー!」
「それで、どのくらい走るの?」
「校庭を10周だ」
「軽くって言ったよね!?」
「軽いだろ?」
「うん」
「リリィさん、普段あまり運動はされないのですか?」
「いや、なんというか…なんとも言えない…」
「とりあえず走ってみるか?」
「羽根を使うのはなしだぞ」
「まだ使えないんだよ」
「なら好都合かな」
「速さを競うんじゃないからな」
「無理せず頑張ればいいんだよ~。やった分だけ次できるようになるからさ!」
「わかった!頑張ってみる!」
「ファイトです!リリィさん!」
「ありがとうハート!」
そして私たちは走り出した。
「あれっ!意外と…走れる!」
多分この身体と元の身体では肺機能が違うからだろう。身体能力にもこうまで差がつくと非常に爽快だ。
「おいおい!さっき泣き言言ってたやつがあんなに走れるものか?」
「杞憂だったみたい!」
「すごーいリリィねぇね!」
「でもなんやかんやみんな同じくらいの速度だね」
「クローバーはぶっちぎりだけどね…」
「あれ?私の話?」
「1周差をつけられた!」
そして私たちは10周を走りきった。
「はぁ、気持ちよかった!走るのがこんなに楽しかったのははじめてだよ!」
「みんなで走るのがまたいいよね!」
「ほんとね!」
「よし!次は魔力コントロール!武器を出せ!」
みんなが一斉に武器を具現化する。
「扱いには注意しろよ!特に火を使う時はな!」
「はーいママ~!」
「おらっ!」
「おわっ!危なっ!」
クローバーは足元からツタを生やされた。
「よし、じゃあやろう」
「うおー!」
「がおー!」
「えいっ!」
みんなそれぞれ武器の扱いを特訓した。
「ふうっ。いい汗かいた!」
「みんなおつかれ!」
「それじゃあ教室に行こうか!」
私たちは特訓を終えてホームルームの始まる前に教室に向かうことにした。
「はい、みなさん。先日の迎撃戦お疲れ様でした。各自報酬を付与しますのでエトンのチェックをよろしくお願いします」
「報酬…エトン…」
「リリィさんは知らないだろうから説明するよ。魔法生物との戦闘が行われた場合戦果に応じて報酬を付与することになっているの。その報酬は各自の所持するエトンに送られるの。あ、まだリリィさんのエトンは登録されてないからとりあえず説明だけね」
「はい!」
「まずエトンっていうのはこれ。一見して魔導書みたいでしょ?でもページが自動で更新される魔法がかかってるからお知らせや情報が追加されるんです。お知らせがある時はエトンに宿る精霊が教えてくれるから安心して」
「わかりました!」
エトンは物語の根幹に関わるものだ。タイトルの『グリーン☆ぐりもわーる』のぐりもわーるに該当する存在といえばわかりやすい。タイトルに入っているくらいだからね。でもみんなが持っているエトンの色はグリーンではない。
「それで、報酬っていうのはね。ざっくり言うと財である二ーディがもらえるの。お買い物に自由に使っていいからね。でも二ーディ欲しさに敵を横取りしたり汚い真似をしたら…許しませんからね」
レイン先生は釘を刺すように殺気の籠った笑みを浮かべた。
「肝に銘じておきます…」
「それで、まだエトンはないんだけどリリィさんにも報酬が出てるので明細を渡しておきますね」
レイン先生から二ーディの金額が書かれた紙を受け取った。
「500二ーディ…これってどのくらいなのかな?」
「リリィ、500か。なかなかあるね」
「スパーダは?」
「私は1200」
「倍以上だね」
「医務室送りになったからちょっと引かれてるぞ」
「あーやっぱりそうなんだ」
「まぁ私は前線ってのもあるしね」
「そういえばエトンってどこにあるの?」
「呼ぶんだよ。ロメオっ!」
「はいはいっ!」
貴族的な服を着たペンギンが出てきた!
「わ、すごい」
「エトンには精霊が宿ってるからね。私の精霊はロメオ。かわいいだろ?」
「まぁ…うん」
「微妙な反応!」
「あ、リリィさーん!報酬どうでしたかぁ?」
「ハート!ねぇねぇ!ハートのエトン見せてっ!」
「はい!ミューズ!」
「にゃおんっ!」
宝石の装飾品をつけた猫がでてきた!
「ミューズ!かわいい~!!」
「絶妙な反応!」
「あんたはちょっと派手すぎるのよ。あたしみたいにさりげなく煌びやかにしないと」
「大きなお世話!」
「にゃんですって!?」
精霊たちが短い手足をぱたぱたと動かしながら争い始めた。
「ちょっといきなりケンカしないでよ」
「やめなさいミューズ…」
「ごめんなさい…」
2匹はしょんぼりとしながらお互いに離れた。
「楽しそうだよね精霊がいると」
「まぁ1人の時は頼りになるけど誰かといる時には基本的に出さないよね。うるさいし」
「うるさいっ!?」
「そういうとこだぞ」
「そういえばどんな手続きしたらエトンがもらえるの?」
「エトンはね、適正を検査したら学園長が自らお作りになられるんだよ」
「あれだけの生徒のエトンを作っちゃうのってすごいですよね!」
「精霊は自分の心から生まれるらしいぜ。なんでこんな騒がしいペンギンに…」
「失礼ッ!」
「まあロメオもマスコット的にはありだよね」
「サポート役なんだがな…」
「リリィさんの精霊、楽しみですね!」
「ね!どんな粗を探してやろうか楽しみだね!」
「いやスパーダさん…そんなことないですよ」
「あれ?違った?」
「大丈夫!私の精霊は完璧なはずだから!」
「私も初めはそう思ったさ」
「完璧だろッ!?」
「叫ぶばっかであんま説明してくんねぇんだもんこいつ」
「………」
「うわだんまり…ロメオ…それはないんじゃない?」
「こういうやつなんだよ。だから私もそれなりの対応をしている」
「ちくしょーッ!」
「あ、帰っちゃった。」
「エトンの精霊にもちゃんと機嫌とかあるから気をつけなよ」
「スパーダが言うんだ…」
「おーいロメオっ!」
「………」
「な。フォローしないとしばらく出てこないから」
「ちゃんとしておきなよ…」
「ミューズはそんなことないんですけどね…」
「あんなへそ曲がりと一緒にしないでちょうだい」
「あ、ごめんなさい」
「さて、じゃあまた特訓の時にな」
「あ、はーい」
「また会いましょう。失礼します」
「ばいばーい」
2人は去っていった。
昼休みにレイン先生に声をかけられた。
「リリィさん。適性検査をするので後で学園長室に行ってください」
「あ、わかりました!」
「放課後すぐがいいと思いますよ」
「ありがとうございます!」
「それじゃあね。お昼に邪魔してごめんなさい」
「はーい」
放課後にハーベスト学園長に会いに行かなくてはならないようだ。特訓はどうしようか…。
「あ、聞いてたよ~リリィ。放課後の特訓遅れそうだね?」
「クローバー」
「みんなに言っておくから行っておいで」
「ありがとう!」
「学園長の質問でエトンの精霊が変わるって噂があるよ。なるべく正直に答えなね」
「そうなんだ!わかったよ!」
「うん!変に完璧そうなの狙ってめちゃくちゃな精霊ができちゃった人もいるから気をつけてね!」
それは避けたい…。
そして放課後。
「すみません、キューティ・リリィです」
「……入りなさい」
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「どうだね…。学校には慣れたかい?」
「はい!もう魔法も使えますしみんなとも仲良くてしています!」
「そうか…それは良かった…。さて、適性検査だな」
「はい!」
「まずは魔力の確認をする。…手をこちらに。魔力を手に集中させなさい」
「はい!こうですか?」
軽く右手を前に差し出してみる。
「…よろしい。ふむ…なかなかの魔力を秘めているな…」
「そうなんですか!?」
「まだはっきりとはせんがな。伸ばすのも縮めてしまうのも君次第だ」
「頑張ります…!」
「さて…ではいくつか質問をする。可能な限り正直に答えなさい」
「はい!」
「1つ目。君は魔法を何と心得る?」
「えっと…心の力を反映させる…鏡みたいなもの…です」
「……ふむ。では2つ目。君にとって正義とは何か?」
「…自分の属する物、それを守るための意思です。敵対する者も同じ物を持つのだと認識しています」
「……なるほど。では3つ目。戦いにおいて最も大切なことは何か?」
「それは…命に対する尊重だと思います。仲間の命、敵の命、それは全て戦場では等しい。奪うのも奪われるのも、守るのだって等しいんです。相手に敵対の意思がなければその対象は敵だろうと等しいはずです」
「…君は最近この世界に来たのだったな?」
「はい。しかしこの世界の天使としての意見です」
そう、紛れもなく。私はいつだってこの世界を夢見てきた。そうして常に考え続けてきた。失われていく仲間、育まれる絆。その全てが等しく平等に敵味方に存在していたから。
「…先の戦いを踏まえての意見ならば真実なのだろう。わかった。君のエトンを作ろう」
「ありがとうございます!」
「見ていなさい」
「え?」
「エトンは君本人がいないと完成しない」
「これを全校生徒分やったんですか!?」
「それくらいすぐにできるということだ」
魔力の消費は問題ないといわんばかりだ…流石学園長…。
「ではお願いします」
「うむ…」
学園長が目を閉じると周囲に光が集まってきた。それを溜めるように手を前に出し大きな光が手に集まった時、学園長は開眼した。
「ふんっ!」
学園長が低く唸り手を握ると目の前の光が弾けその中から魔導書のようなものがでてきた!
「できたな」
「これが…エトン…」
光の残像の中に浮かぶエトンはだんだんはっきりと姿が見えるようになってきた。
「これは……!」
そこにあったのは、緑色のエトンだった。
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