ほしくずのつもるばしょ

瀬戸森羅

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おはなし

やまよりもおおきなりゅう

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 それは、魔法の国の、おおきなおおきな竜のお話。
 魔法の国には、竜が暮らしています。
 大きな竜もいれば小さな竜もいます。
 基本的には子どもくらいの大きさから、車より大きいくらいの大きさがほとんどです。
 ですが、ある日見つかった竜は、なんと大きな大きな山より、さらに大きいというのです。
 そんなに大きな竜がどこからやってきたのか?
 人々に危害を加えないのか?
 魔法の国は大きな竜の話題で持ち切りでした。
 魔法の国の少年ザインも、その竜に憧れる1人でした。
 そんなに大きな竜と友達になったら、きっと誰よりも高い場所からこの国をみることができるぞ。
 ザインはそれを想像するととても愉快なのだと思ったのでした。
 ある日、ザインが山で遊んでいると、遮るものの無いはずの山の上に、大きな影ができました。
 曇ってきたかな、と思い慌てて空を見上げると、そこには大きな大きな竜がいたのでした。
「坊や、何してる」
 大地が揺れるような大きく低い声でした。
「僕はザインだ。坊やじゃない」
 震える声でザインが返すと竜もまた声を上げました。
「ザイン、君は1人か」
「そうだ」
「悪い大人はいないか」
「いないよ」
「ならこの山のことは内緒にしといてくれ。この山は私の身体でもうまく隠れられる数少ない山なのだ」
「わかったよ」
「最近約束した子が秘密を言ってしまったらしくてな。噂を聞いた大人たちが私を狙いに来る…」
「僕もその話、きいたよ。山より大きな竜がいるって」
「大きいだけさ。私はヒトに危害を加えるつもりはない。でもヒトはその言葉だけで理解してはくれない。いつだって安心したがるものさ…。君が喋れば、きっと私は無事では済むまい」
 大きな竜は震えながら涙を流していました。
 こんなに大きな存在が、繊細で不安定な水面のように感じられました。
「うん、約束するよ。」
 ザインは竜と友達になりました。
 大きな大きな竜の背に乗り、高い高い空の上から魔法の国を見下ろすと、この国の何よりも偉くなったような気分になれるのでした。
 ある日、竜が言いました。
「ザイン、君はもうくるな」
 あまりに唐突な言葉に、ザインはどうしていいかわかりませんでした。
「いいから、くるな」
 突き放すように言われたザインは、悲しくなって何も言わずに山を下りました。
 それからもう山には行かないことにしました。
 10日程経ったある日、魔法の国に大きな音が響き渡りました。
 びっくりしてザインが外を見ると、竜のいた山があったはずの場所が、煙を上げてなくなっていました。
 それから二度と、ザインは竜と会うことはありませんでした。
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