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おはなし
あやかしざくら
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それはある春の日のことぢゃった。
村を訪れた若者が奇怪なことを口にした。
「峠の桜がとても綺麗ですね」
この村の周囲には、桜の木なんぞない。
それこそ九里ほど離れた非常に遠い地にあるくらいぢゃった。
村の人々は皆おかしいと気づいてはいたが、旅人がそう言うのだからどこか遠い場所で見た記憶が混ざっているのではないかと思っていた。
その晩、旅人は宿をとって夜を明かした。
朝方女将が旅人に挨拶に行くと、旅人の姿はなかったという。
ただ、寝床には大量の桜の花びらが散らばっていたのぢゃ…。
旅人の荷物は全て残されていたため夜逃げを図ったとは考えにくい。
村人はその桜を酷く恐れた。
その後も旅人の中に峠で桜を見たという者が幾らかいたが、その全てが宿をとった翌日に姿を消したのぢゃ。
村人は峠の妖桜と名付け、峠に立ち寄ることを警戒した。
ぢゃから村人は桜を見ることもなく、見ていないのだから当然村人が消えてしまうこともなかった。
…ここまできいたらもうわかったぢゃろう。
そう、お主が見たのは峠の妖桜。
今まで桜の話をして生きて帰ったものはいないのぢゃ。
その者達がどうなったかは知らんよ。
死ぬのか、それともどこかで幸せに暮らしとるのか。
ただ、おぬしは間違いなく妖桜に魅入られておる。
……今夜は村で一番の馳走を用意しよう。
良い夢を見ろよ、客人よ。
村を訪れた若者が奇怪なことを口にした。
「峠の桜がとても綺麗ですね」
この村の周囲には、桜の木なんぞない。
それこそ九里ほど離れた非常に遠い地にあるくらいぢゃった。
村の人々は皆おかしいと気づいてはいたが、旅人がそう言うのだからどこか遠い場所で見た記憶が混ざっているのではないかと思っていた。
その晩、旅人は宿をとって夜を明かした。
朝方女将が旅人に挨拶に行くと、旅人の姿はなかったという。
ただ、寝床には大量の桜の花びらが散らばっていたのぢゃ…。
旅人の荷物は全て残されていたため夜逃げを図ったとは考えにくい。
村人はその桜を酷く恐れた。
その後も旅人の中に峠で桜を見たという者が幾らかいたが、その全てが宿をとった翌日に姿を消したのぢゃ。
村人は峠の妖桜と名付け、峠に立ち寄ることを警戒した。
ぢゃから村人は桜を見ることもなく、見ていないのだから当然村人が消えてしまうこともなかった。
…ここまできいたらもうわかったぢゃろう。
そう、お主が見たのは峠の妖桜。
今まで桜の話をして生きて帰ったものはいないのぢゃ。
その者達がどうなったかは知らんよ。
死ぬのか、それともどこかで幸せに暮らしとるのか。
ただ、おぬしは間違いなく妖桜に魅入られておる。
……今夜は村で一番の馳走を用意しよう。
良い夢を見ろよ、客人よ。
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