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7話.G.Wの終わり
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G.Wも終わりを迎えようとしていた最終日、初日以降は特に予定もなくあれから勉強会が開かれる事もなかった、皆の予定が合わずに中々集まる事ができなかったからだ。
最終日の今日は、晴香が無事に熱も下がり元気になったとの事で二人で遊ぶことにしていた。
「熱は大丈夫なのか?」
「ごめんね~もう、ほら!大丈夫」
そう笑いながらこちらに顔を向けている、長い付き合いだから分かるが、病み上がりで無理をしている顔つきだ、昔から無理をする事が多くよく心配していた。
「あまり無理するなよ?」
「う、うん…ありがとう」
「さて、今日はどこにいく?」
「勉強はいいの?」
「あぁ、誰とも予定が合わなくてな、おかげさまで部屋にこもって勉強漬けだったよ」
「そっか、ならショッピングに付き合ってよ!」
「おう、じゃああそこに行こうか」
そうして、二人で電車に乗って少しだけ移動する。晴香が好きな、流行り物が集まる場所に向かっていた。
俺も、そろそろ夏服が欲しかったので丁度いい、お互いに買い物をして、昼ご飯でも食べてゆっくりしたらそんなに疲れる事もないだろう。
そうして、電車で数駅移動して目的の場所に着いた。
昔から、何か買い物があれば二人でよく出かけていたものだ、お互いに好きな物もある程度は知り尽くしているので、いつも行く店も決まっている。
「いつものとこだよな?」
「うん!」
そうして二人で、いつも同じ古着屋さんで服を買っているので、馴染みの店へと入っていく。
「あら、晴香ちゃんいらっしゃい」
「やほーっ!また来たよ~」
「嬉しいね~、新作入ってるから見ていきな」
「ういっす」
「来たな、晴香ちゃんに吸い付く害虫が」
この人はこの店の店主、一人で古着屋さんを経営しているようで、ここで取り扱う服は全てこの人の目利きで仕入れいるらしい、それが俺たちに刺さるのでいつもここに来ている。
だが、何故か俺の事は嫌っているらしい。
「晴香ちゃん!あいつに何か変な事されてない?」
「だ、大丈夫です…うぅーっ…」
いつもの光景だ、晴香に抱きつきながらこちらを睨みつけている。自分のお気に入りが男と歩いてる事自体が、気に食わないのだろう。
「ほら、そろそろ離せよ【立花】さん」
「あぁ~っん、晴香ちゃん~また後でね~」
「立花さんすみません、また後で~」
俺はいつも通りに、晴香からひっつき虫を引き剥がす。隙あらば抱きついて、離さなくなるから厄介なもんだ。
「おい、害虫…」
「なんすか、ひっつき虫」
「服買ってさっさと帰れ」
「やだね、ゆっくりと選んでやる」
「ちっ、」
これで接客業が成り立ってるんだから、不思議なもんだ。まぁ、こんな感じなのも俺ぐらいかとは思うが。
そうして店内を見て周り、お互いに目ぼしい物を探していく、店の奥からひっつき虫の叫ぶ声が聞こえるが無視。俺は、自分の夏服を探していく。
ある程度店内は見て回り、数点見繕った。晴香にも見てもらい、問題なさそうなのでそのままレジに移動する、晴香は既に買い物を済ましているようで、袋を手に持ち待っていてくれた。
「はい、お釣り……害虫、晴香ちゃん置いて失せな」
「晴香も持って帰りますので、ご安心下さい」
俺は、満面の笑顔で返す。
「聞いたこいつ!晴香ちゃん持ち帰るって!最低!」
「ほえっ?」
晴香の顔が急に赤くなった、やりとりは聞いていなかったようなので、そこだけ切り取るとおかしな事になる。
「ばっ、ちがっ、そう意味じゃ!!」
「最低ー!男なんて獣!淫獣!!」
「違うっつってんだろうがぁー!」
俺は手に持っていた袋で、口を抑える。何かモゴモゴ言っているが関係ない、そのまま必死に晴香に弁明する。分かってくれたようで、誤解は解けた。
…いつか、この店は燃やしてやる。
そんな物騒な事を考えながら、後ろの方で叫んでいる声を無視して店を後にする。
「ははっ、いつもながらだね~」
「こっちは疲れたよ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
「さてどうする、ご飯食べて帰るか?」
「お持ち帰りするの?私の事」
「はっ!?しねぇよ!」
「ふふふふっ、冗談だよ~」
無邪気に笑う晴香にからかわれたようだ。こんなからかい方は心臓に悪い、耳まで熱くなっている気がする。今はまともに顔を見れない、晴香も先ほどから耳を赤くして俯いている、どうやら無理したようだな。
そうして、近くにおしゃれな喫茶店があるとの事で寄ってみるが、G.Wという事を忘れていた、そこはかなり長蛇の列が出来上がっていた、さすがは超人気店。
「どうする、他行こうか?」
「ううん、誠となら並んでいられるよ、行こうよ」
そう言いながら俺の腕を引っ張り、その喫茶店の列へと並んだ。ふわふわのパンケーキや、食材にこだわりながらも、魅せ方を意識したランチメニューなど、テレビでも取り上げられるほどの店だった。
店の中を覗くと、確かに満席だった。
ただ、出ていく人もそれなりにいるようなので、思っているよりかは順番が回ってくるのが早そうだ。
そうして、晴香と色々話していると順番が回ってきた。中に入ると聞いてた以上の内装だった、これは期待できる。
二人で席に着くと、ランチセットを二つ注文する。
「すごい人だね」
「さすが、テレビでやってる効果だろうな」
「ランチも凄いよきっとこれは」
「あぁ、楽しみだな」
暫くして、料理が運ばれてきた。思わず二人して写真を撮り始める、それほどに色鮮やかで芸術品のように作り上げられた料理は見応えがあった。
「食べるのもったいないね」
「食べないと失礼だけどな」
勿体無い気持ちを抑えながら、絶品のランチに何度も“美味しい“と言いながら二人揃って完食した。もう少しゆっくりしたかったが、外を見るとまだまだ並んでいたので、すぐに退店する。
「いやーっ、あれは良かったな」
「うんっ!また行きたいね~!」
「あぁ、また友成たちも連れて行きたいな!」
「……うん、そうだね…」
「ん?どうかした?」
「ううん、なんでもないよ、帰ろっか~」
それから少しだけ寄り道をして、久々に息抜きが出来た、晴香も病み上がりの運動としては丁度良かったらしい。でも、さすがにしんどそうな顔をしていたので、早めに切り上げる事にした、そこからは少しだけ休憩しながら家に帰る。
また明日学校で、と話して家に帰っていく。
翌日からは、いつもと変わらない生活が待っていた。
気がつけば中間試験が迫っており、皆で追い込みをかけるように、放課後は図書館や、ファストフード店に集まって勉強会を開いていた。
迎えた中間試験、これである程度の点数を取っていれば、親には大学に行きたいと強く言えるようになるだろう。ただ、何をしたいかと言われれば何もない。
せめて、やりたい事が見つかった時に、大学に通いたいと強く言えるような準備はしておきたいと思う。それに、ここまで勉強に付き合ってくれた皆に、胸を張って“ありがとう”と伝えたいとも思う。
そうして、今まで以上に緊張した中間試験が始まる。
試験の期間は、流れるように時間が過ぎていった。一日目、二日目、三日目とあっという間に試験は終わった。
「終わったなーっ、誠…どうだった??」
「まぁまぁかなー、自己採点は後で確認するが…今までよりかは確実に良いと思うよ、少し早めのありがとう」
「なんのなんの、またいつでも付き合うよ」
「新良さん、試験はいかがでしたか?」
「あ、愛染さん…おかげさまでなんとかね」
それから皆に試験の手応えを聞かれていた、やはり心配してくれているのだろう。点数が良いと思うが、返ってくるまでは不安が拭えないな。
そうして、学校を終えて自宅へと帰る。
土日の休みを挟んで迎えた月曜日、テストが返される。この学校では毎回一教科ずつではなく、全てのテストがまとまって返される。他の教科が返ってこないと、心配する事もないのでありがたいが。
「はい、新良ーっ取りにこーい」
「はい」
そうして名前が呼ばれ、担任の元へとテストを取りに行く。受け取った封筒の中に、全てのテストの答案が入っているので、俺は席に戻りすぐに封筒からテストを取り出す。
周りからの視線を感じるが、今は答案用紙に目線がいく。
「おぉっ!?」
思わず声が出てしまった、なんと平均点数は80点以上。今までよりはるかに好成績だ、これも皆のおかげだと胸を張って言えるだろう。
「良かったな、誠!」
「友成もな!ありがとう」
「私たちのおかげね!」
「あぁ、感謝してるよ」
答案用紙を封筒に戻し喜んでいると、全員分の答案用紙が返されていた。クラスの順位等は公表されることは無いが、全教科満点の神崎さんが一位だろう。さすがだ。
そうしてそこからは、いつも通りの授業に戻る。各教科の時間に、試験の振り返りを行いながら一日が終わっていき放課後を迎える。
皆にお礼がしたいと思い、ファストフード店に行こうと誘うが、晴香しか予定が空いてなかった。他の人はまた別の日にとの事なので、また明日と告げて晴香と二人でファストフード店に向かう。
「晴香ありがとうな、今日は俺の奢りだ!」
「やったね~!覚悟しといてよ~??」
「任せとけ!そのために準備はしてきた!」
すると、晴香がファストフード店に向かう途中の、人気のない線路の下を歩いてる時に立ち止まった。
「おい、どうした?」
晴香が俯いて止まっていたので、具合でも悪くなったのかと、顔を下から覗き込むように確認をしてみる。
不意に勢いよく顔を上げて、こちらの目を真っ直ぐと見てくる。
「な、なんだよ…ファストフード店以外が良いか?」
「ううん、違う…」
「具合でも悪いか?」
「ううん、違う…」
珍しく歯切れが悪い、元気もないように見えるが。
「実は、試験が終わったら言いたい事があって…」
「なんだ、なんでも言ってみろ!」
「違うくて…」
「じゃあどうした?」
「好きなんだ…誠のことが…その、前から…」
「えっ、」
頭上を通る電車の音と、心臓の音が同じくらい五月蝿く鳴り響いていた。思いもしなかった言葉に息が詰まりそうになる、なんで返すべきかと頭を動かすが、真っ白になってしまったまま固まっていた。
「誠の事が好きなの!ずっと前から!」
「ええっ!?まじで!?」
「最近、愛染さんとかと仲良いし…それで焦って」
「今に至ると?」
首を優しく縦に振り、頷く。
心の底から、嬉しいという感情が溢れ出していた。
晴香も、多分俺もだが顔が燃え上がるように熱いだろう、その証拠に顔は真っ赤に色づいていた。
自分の気持ちに嘘はつけない。
「誠に、私と付き合ってほしいなって」
「お、おぅ…よろしく」
「本当に!?」
「おう、」
「本当の本当に!?」
「嘘はつかねぇよ」
晴香がその場で飛び跳ねるように喜んでいた、満面の咲き乱れるような笑顔をこちらに向けながら。こんな笑顔を今までに見た事があっただろうか、いや、これから沢山見る事になるのだろう。
彼女となった、晴香の隣で……。
二人ではしゃいでいると、足音が聞こえてきた。誰か人が来たのだろう、お互いに少しだけ恥ずかしくなり大人しくなる。
「じゃあ、行こうか晴香」
「うんっ!」
照れくさそうに答える晴香と手を繋ごうと差し出した時、聞こえてきていた足音が途端に速くなった。晴香も俺も、何かあったのかと気になり、足音の方へと顔を向けた。
だが、気づくのが遅かった。
真っ黒のパーカーに、フードを深く被ったその人物は、鈍い音を上げながら晴香に激しくぶつかった。
俺は、ぶつかった衝撃で倒れそうになった晴香に、手を伸ばそうとした時、信じられないものが視界に入った。
「うわぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁあ゛!?!?」
晴香の腹部に、包丁のようなものが突き刺さっていた。意味がわからない、一体何が起きた?
腰が抜けて立てなくなる、なんとか体を這いずりながら晴香の側へと寄る。
間違いない、包丁が刺さっている。
そこからは、真っ赤な血が服全体に滲み出していた。
泣き叫ぶことしかできない、どうして良いのかわからず、その包丁を抜く事も何も出来ない。
刺した人物がそばにいる事よりも、守れなかった後悔と、罪悪感の波に押し潰されそうになる。
回らない頭を必死に動かし、そのぶつかってきた人物の方へと顔を向ける、そいつはまだそこにいたからだ。
見上げると、フードの中の顔が見えた。
「えっ、愛染……さ、ん?」
「こんにちは、新良さん」
最終日の今日は、晴香が無事に熱も下がり元気になったとの事で二人で遊ぶことにしていた。
「熱は大丈夫なのか?」
「ごめんね~もう、ほら!大丈夫」
そう笑いながらこちらに顔を向けている、長い付き合いだから分かるが、病み上がりで無理をしている顔つきだ、昔から無理をする事が多くよく心配していた。
「あまり無理するなよ?」
「う、うん…ありがとう」
「さて、今日はどこにいく?」
「勉強はいいの?」
「あぁ、誰とも予定が合わなくてな、おかげさまで部屋にこもって勉強漬けだったよ」
「そっか、ならショッピングに付き合ってよ!」
「おう、じゃああそこに行こうか」
そうして、二人で電車に乗って少しだけ移動する。晴香が好きな、流行り物が集まる場所に向かっていた。
俺も、そろそろ夏服が欲しかったので丁度いい、お互いに買い物をして、昼ご飯でも食べてゆっくりしたらそんなに疲れる事もないだろう。
そうして、電車で数駅移動して目的の場所に着いた。
昔から、何か買い物があれば二人でよく出かけていたものだ、お互いに好きな物もある程度は知り尽くしているので、いつも行く店も決まっている。
「いつものとこだよな?」
「うん!」
そうして二人で、いつも同じ古着屋さんで服を買っているので、馴染みの店へと入っていく。
「あら、晴香ちゃんいらっしゃい」
「やほーっ!また来たよ~」
「嬉しいね~、新作入ってるから見ていきな」
「ういっす」
「来たな、晴香ちゃんに吸い付く害虫が」
この人はこの店の店主、一人で古着屋さんを経営しているようで、ここで取り扱う服は全てこの人の目利きで仕入れいるらしい、それが俺たちに刺さるのでいつもここに来ている。
だが、何故か俺の事は嫌っているらしい。
「晴香ちゃん!あいつに何か変な事されてない?」
「だ、大丈夫です…うぅーっ…」
いつもの光景だ、晴香に抱きつきながらこちらを睨みつけている。自分のお気に入りが男と歩いてる事自体が、気に食わないのだろう。
「ほら、そろそろ離せよ【立花】さん」
「あぁ~っん、晴香ちゃん~また後でね~」
「立花さんすみません、また後で~」
俺はいつも通りに、晴香からひっつき虫を引き剥がす。隙あらば抱きついて、離さなくなるから厄介なもんだ。
「おい、害虫…」
「なんすか、ひっつき虫」
「服買ってさっさと帰れ」
「やだね、ゆっくりと選んでやる」
「ちっ、」
これで接客業が成り立ってるんだから、不思議なもんだ。まぁ、こんな感じなのも俺ぐらいかとは思うが。
そうして店内を見て周り、お互いに目ぼしい物を探していく、店の奥からひっつき虫の叫ぶ声が聞こえるが無視。俺は、自分の夏服を探していく。
ある程度店内は見て回り、数点見繕った。晴香にも見てもらい、問題なさそうなのでそのままレジに移動する、晴香は既に買い物を済ましているようで、袋を手に持ち待っていてくれた。
「はい、お釣り……害虫、晴香ちゃん置いて失せな」
「晴香も持って帰りますので、ご安心下さい」
俺は、満面の笑顔で返す。
「聞いたこいつ!晴香ちゃん持ち帰るって!最低!」
「ほえっ?」
晴香の顔が急に赤くなった、やりとりは聞いていなかったようなので、そこだけ切り取るとおかしな事になる。
「ばっ、ちがっ、そう意味じゃ!!」
「最低ー!男なんて獣!淫獣!!」
「違うっつってんだろうがぁー!」
俺は手に持っていた袋で、口を抑える。何かモゴモゴ言っているが関係ない、そのまま必死に晴香に弁明する。分かってくれたようで、誤解は解けた。
…いつか、この店は燃やしてやる。
そんな物騒な事を考えながら、後ろの方で叫んでいる声を無視して店を後にする。
「ははっ、いつもながらだね~」
「こっちは疲れたよ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
「さてどうする、ご飯食べて帰るか?」
「お持ち帰りするの?私の事」
「はっ!?しねぇよ!」
「ふふふふっ、冗談だよ~」
無邪気に笑う晴香にからかわれたようだ。こんなからかい方は心臓に悪い、耳まで熱くなっている気がする。今はまともに顔を見れない、晴香も先ほどから耳を赤くして俯いている、どうやら無理したようだな。
そうして、近くにおしゃれな喫茶店があるとの事で寄ってみるが、G.Wという事を忘れていた、そこはかなり長蛇の列が出来上がっていた、さすがは超人気店。
「どうする、他行こうか?」
「ううん、誠となら並んでいられるよ、行こうよ」
そう言いながら俺の腕を引っ張り、その喫茶店の列へと並んだ。ふわふわのパンケーキや、食材にこだわりながらも、魅せ方を意識したランチメニューなど、テレビでも取り上げられるほどの店だった。
店の中を覗くと、確かに満席だった。
ただ、出ていく人もそれなりにいるようなので、思っているよりかは順番が回ってくるのが早そうだ。
そうして、晴香と色々話していると順番が回ってきた。中に入ると聞いてた以上の内装だった、これは期待できる。
二人で席に着くと、ランチセットを二つ注文する。
「すごい人だね」
「さすが、テレビでやってる効果だろうな」
「ランチも凄いよきっとこれは」
「あぁ、楽しみだな」
暫くして、料理が運ばれてきた。思わず二人して写真を撮り始める、それほどに色鮮やかで芸術品のように作り上げられた料理は見応えがあった。
「食べるのもったいないね」
「食べないと失礼だけどな」
勿体無い気持ちを抑えながら、絶品のランチに何度も“美味しい“と言いながら二人揃って完食した。もう少しゆっくりしたかったが、外を見るとまだまだ並んでいたので、すぐに退店する。
「いやーっ、あれは良かったな」
「うんっ!また行きたいね~!」
「あぁ、また友成たちも連れて行きたいな!」
「……うん、そうだね…」
「ん?どうかした?」
「ううん、なんでもないよ、帰ろっか~」
それから少しだけ寄り道をして、久々に息抜きが出来た、晴香も病み上がりの運動としては丁度良かったらしい。でも、さすがにしんどそうな顔をしていたので、早めに切り上げる事にした、そこからは少しだけ休憩しながら家に帰る。
また明日学校で、と話して家に帰っていく。
翌日からは、いつもと変わらない生活が待っていた。
気がつけば中間試験が迫っており、皆で追い込みをかけるように、放課後は図書館や、ファストフード店に集まって勉強会を開いていた。
迎えた中間試験、これである程度の点数を取っていれば、親には大学に行きたいと強く言えるようになるだろう。ただ、何をしたいかと言われれば何もない。
せめて、やりたい事が見つかった時に、大学に通いたいと強く言えるような準備はしておきたいと思う。それに、ここまで勉強に付き合ってくれた皆に、胸を張って“ありがとう”と伝えたいとも思う。
そうして、今まで以上に緊張した中間試験が始まる。
試験の期間は、流れるように時間が過ぎていった。一日目、二日目、三日目とあっという間に試験は終わった。
「終わったなーっ、誠…どうだった??」
「まぁまぁかなー、自己採点は後で確認するが…今までよりかは確実に良いと思うよ、少し早めのありがとう」
「なんのなんの、またいつでも付き合うよ」
「新良さん、試験はいかがでしたか?」
「あ、愛染さん…おかげさまでなんとかね」
それから皆に試験の手応えを聞かれていた、やはり心配してくれているのだろう。点数が良いと思うが、返ってくるまでは不安が拭えないな。
そうして、学校を終えて自宅へと帰る。
土日の休みを挟んで迎えた月曜日、テストが返される。この学校では毎回一教科ずつではなく、全てのテストがまとまって返される。他の教科が返ってこないと、心配する事もないのでありがたいが。
「はい、新良ーっ取りにこーい」
「はい」
そうして名前が呼ばれ、担任の元へとテストを取りに行く。受け取った封筒の中に、全てのテストの答案が入っているので、俺は席に戻りすぐに封筒からテストを取り出す。
周りからの視線を感じるが、今は答案用紙に目線がいく。
「おぉっ!?」
思わず声が出てしまった、なんと平均点数は80点以上。今までよりはるかに好成績だ、これも皆のおかげだと胸を張って言えるだろう。
「良かったな、誠!」
「友成もな!ありがとう」
「私たちのおかげね!」
「あぁ、感謝してるよ」
答案用紙を封筒に戻し喜んでいると、全員分の答案用紙が返されていた。クラスの順位等は公表されることは無いが、全教科満点の神崎さんが一位だろう。さすがだ。
そうしてそこからは、いつも通りの授業に戻る。各教科の時間に、試験の振り返りを行いながら一日が終わっていき放課後を迎える。
皆にお礼がしたいと思い、ファストフード店に行こうと誘うが、晴香しか予定が空いてなかった。他の人はまた別の日にとの事なので、また明日と告げて晴香と二人でファストフード店に向かう。
「晴香ありがとうな、今日は俺の奢りだ!」
「やったね~!覚悟しといてよ~??」
「任せとけ!そのために準備はしてきた!」
すると、晴香がファストフード店に向かう途中の、人気のない線路の下を歩いてる時に立ち止まった。
「おい、どうした?」
晴香が俯いて止まっていたので、具合でも悪くなったのかと、顔を下から覗き込むように確認をしてみる。
不意に勢いよく顔を上げて、こちらの目を真っ直ぐと見てくる。
「な、なんだよ…ファストフード店以外が良いか?」
「ううん、違う…」
「具合でも悪いか?」
「ううん、違う…」
珍しく歯切れが悪い、元気もないように見えるが。
「実は、試験が終わったら言いたい事があって…」
「なんだ、なんでも言ってみろ!」
「違うくて…」
「じゃあどうした?」
「好きなんだ…誠のことが…その、前から…」
「えっ、」
頭上を通る電車の音と、心臓の音が同じくらい五月蝿く鳴り響いていた。思いもしなかった言葉に息が詰まりそうになる、なんで返すべきかと頭を動かすが、真っ白になってしまったまま固まっていた。
「誠の事が好きなの!ずっと前から!」
「ええっ!?まじで!?」
「最近、愛染さんとかと仲良いし…それで焦って」
「今に至ると?」
首を優しく縦に振り、頷く。
心の底から、嬉しいという感情が溢れ出していた。
晴香も、多分俺もだが顔が燃え上がるように熱いだろう、その証拠に顔は真っ赤に色づいていた。
自分の気持ちに嘘はつけない。
「誠に、私と付き合ってほしいなって」
「お、おぅ…よろしく」
「本当に!?」
「おう、」
「本当の本当に!?」
「嘘はつかねぇよ」
晴香がその場で飛び跳ねるように喜んでいた、満面の咲き乱れるような笑顔をこちらに向けながら。こんな笑顔を今までに見た事があっただろうか、いや、これから沢山見る事になるのだろう。
彼女となった、晴香の隣で……。
二人ではしゃいでいると、足音が聞こえてきた。誰か人が来たのだろう、お互いに少しだけ恥ずかしくなり大人しくなる。
「じゃあ、行こうか晴香」
「うんっ!」
照れくさそうに答える晴香と手を繋ごうと差し出した時、聞こえてきていた足音が途端に速くなった。晴香も俺も、何かあったのかと気になり、足音の方へと顔を向けた。
だが、気づくのが遅かった。
真っ黒のパーカーに、フードを深く被ったその人物は、鈍い音を上げながら晴香に激しくぶつかった。
俺は、ぶつかった衝撃で倒れそうになった晴香に、手を伸ばそうとした時、信じられないものが視界に入った。
「うわぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁあ゛!?!?」
晴香の腹部に、包丁のようなものが突き刺さっていた。意味がわからない、一体何が起きた?
腰が抜けて立てなくなる、なんとか体を這いずりながら晴香の側へと寄る。
間違いない、包丁が刺さっている。
そこからは、真っ赤な血が服全体に滲み出していた。
泣き叫ぶことしかできない、どうして良いのかわからず、その包丁を抜く事も何も出来ない。
刺した人物がそばにいる事よりも、守れなかった後悔と、罪悪感の波に押し潰されそうになる。
回らない頭を必死に動かし、そのぶつかってきた人物の方へと顔を向ける、そいつはまだそこにいたからだ。
見上げると、フードの中の顔が見えた。
「えっ、愛染……さ、ん?」
「こんにちは、新良さん」
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