3 / 7
第3話
しおりを挟む
あのあと。
僕は、何もなかったかのように、
病室にいて、朝食を食べていた。
何を話していたのかは、聞かないことにした。
きっと僕には、関係のないこと。
僕が知って、カナさんが得することはない。
そう思った。
「焼き鮭だ。おいしそう」
「こっちは、だし巻きか」
つい独り言が、口からこぼれてしまう。
すると、カナさんが。
「奏斗くん、面白い。独り言が多いんだね」
と言って、クスクスと笑っていた。
その笑顔に、ドキッとした。
彼女は、こんなにも可愛く笑うのか。
今のカナさんがあることが、ますます分からない。
こんな良い人が、こんな所にいては、勿体ない。
そう思ってしまうほどだ。
「今のは、ついだよ」
「ううん。なんか羨ましいな。
私、奏斗くんみたいに自然体でいたい」
と言われ、ふいをつかれた。
奏斗くんみたいに。
そんなこと、初めて言われた。
やっぱり、カナさんは良い子だ。
どうして、今の彼女があるのだろう。
「えへへ。なんか、ありがと」
今日の朝食は、いつもより美味しい気がした。
朝食が終わり、自由時間に。
お昼までは、4時間もある。
その間、どうしよう。
せっかくカナさんが、勉強しているから、
僕も、勉強しようかな。
入院してて、不登校になってるから、
きっと穴があいているだろう。
それに、課題とか宿題とか、
色々と溜まっているに、違いない。
そう思いながら、病室を出た。
この病院内の公衆電話は、カードのみが使える。
そのカードは、入院者だけが持つ。
確か、ポケットに入れたはず。
ズボンの右ポケットから、カードを取り出した。
あった。
カードは、意外にオシャレで、マリンブルーのしましま。
その柄を、僕は気に入っていた。
「あ、もしもし。お母さん?」
「もしもし。どうかしたの?」
「お母さんに頼み事があるんだけど。ちょっといい?」
「いいわよ。あ、メモ取るから、ちょっと待ってて」
と言い、電話の向こうで物音がした。
数分が経って、お母さんが戻ってきた。
「はい。どうぞ。言って」
「うん。明日、数学の教科書とノートに参考書も持ってきて。あと、筆箱も」
「それだけね?」
「うん」
「分かったわ。明日、持っていくわね」
「うん。じゃあ、また明日」
「あ、ちょっと待って。奏斗」
ふぅ。
ベッドに座って、ふとため息をついたとき。
「あ、カナさん。今日、お家の人が来るんだけど。大丈夫かな?」
と言うと、カナさんは勉強をする手を止めた。
「どうして、私に?」
そう僕に聞くカナさん。
当たり前かな。
「いや、それがさ…」
と言いかけたとき。
ガラリ。
病室の扉が開いた。
「奏斗!来たわよ!」
と僕の母が、元気にやってきた。
というか、元気過ぎ。
母のテンションに、僕もカナさんも
固まった。
「お、お母さん……」
「え…?奏斗くんのお母さん…?」
と聞いてくるカナさん。
「うん。そうだよ。僕のお母さん」
「そうなんだ。あ、あの!」
とカナさんは、そう言った。
「あの!私、宮本 カナって言います!
奏斗くんとは、同じ病室で!お世話になってます!」
とお辞儀をしたカナさん。
なんて、良い子なんだろう。
やっぱり、ここにいるのは、勿体ない。
僕じゃない誰かと、付き合っているんだろう。
彼氏とかいないほうが、可笑しい。
「いえいえ♪こちらも、お世話になっております♪奏斗の母です♪」
「お母さん。頼むから、そのテンションはやめて」
おどおどと、そう言った。
「良いじゃない♪せっかくの彼女さんだもの♪」
と言った瞬間、僕とカナさんは固まった。
僕の彼女?
つまり、好き同士?
は、はい?
お母さんは、一体何を言って…。
母の言っていることが、理解できなかった。
「あ、あの!違うんです!奏斗くんとは、ただの患者同士で…」
僕が黙っていると、カナさんはそう言ってくれた。
「はい?」
と今度は、母が固まった。
僕は、何もなかったかのように、
病室にいて、朝食を食べていた。
何を話していたのかは、聞かないことにした。
きっと僕には、関係のないこと。
僕が知って、カナさんが得することはない。
そう思った。
「焼き鮭だ。おいしそう」
「こっちは、だし巻きか」
つい独り言が、口からこぼれてしまう。
すると、カナさんが。
「奏斗くん、面白い。独り言が多いんだね」
と言って、クスクスと笑っていた。
その笑顔に、ドキッとした。
彼女は、こんなにも可愛く笑うのか。
今のカナさんがあることが、ますます分からない。
こんな良い人が、こんな所にいては、勿体ない。
そう思ってしまうほどだ。
「今のは、ついだよ」
「ううん。なんか羨ましいな。
私、奏斗くんみたいに自然体でいたい」
と言われ、ふいをつかれた。
奏斗くんみたいに。
そんなこと、初めて言われた。
やっぱり、カナさんは良い子だ。
どうして、今の彼女があるのだろう。
「えへへ。なんか、ありがと」
今日の朝食は、いつもより美味しい気がした。
朝食が終わり、自由時間に。
お昼までは、4時間もある。
その間、どうしよう。
せっかくカナさんが、勉強しているから、
僕も、勉強しようかな。
入院してて、不登校になってるから、
きっと穴があいているだろう。
それに、課題とか宿題とか、
色々と溜まっているに、違いない。
そう思いながら、病室を出た。
この病院内の公衆電話は、カードのみが使える。
そのカードは、入院者だけが持つ。
確か、ポケットに入れたはず。
ズボンの右ポケットから、カードを取り出した。
あった。
カードは、意外にオシャレで、マリンブルーのしましま。
その柄を、僕は気に入っていた。
「あ、もしもし。お母さん?」
「もしもし。どうかしたの?」
「お母さんに頼み事があるんだけど。ちょっといい?」
「いいわよ。あ、メモ取るから、ちょっと待ってて」
と言い、電話の向こうで物音がした。
数分が経って、お母さんが戻ってきた。
「はい。どうぞ。言って」
「うん。明日、数学の教科書とノートに参考書も持ってきて。あと、筆箱も」
「それだけね?」
「うん」
「分かったわ。明日、持っていくわね」
「うん。じゃあ、また明日」
「あ、ちょっと待って。奏斗」
ふぅ。
ベッドに座って、ふとため息をついたとき。
「あ、カナさん。今日、お家の人が来るんだけど。大丈夫かな?」
と言うと、カナさんは勉強をする手を止めた。
「どうして、私に?」
そう僕に聞くカナさん。
当たり前かな。
「いや、それがさ…」
と言いかけたとき。
ガラリ。
病室の扉が開いた。
「奏斗!来たわよ!」
と僕の母が、元気にやってきた。
というか、元気過ぎ。
母のテンションに、僕もカナさんも
固まった。
「お、お母さん……」
「え…?奏斗くんのお母さん…?」
と聞いてくるカナさん。
「うん。そうだよ。僕のお母さん」
「そうなんだ。あ、あの!」
とカナさんは、そう言った。
「あの!私、宮本 カナって言います!
奏斗くんとは、同じ病室で!お世話になってます!」
とお辞儀をしたカナさん。
なんて、良い子なんだろう。
やっぱり、ここにいるのは、勿体ない。
僕じゃない誰かと、付き合っているんだろう。
彼氏とかいないほうが、可笑しい。
「いえいえ♪こちらも、お世話になっております♪奏斗の母です♪」
「お母さん。頼むから、そのテンションはやめて」
おどおどと、そう言った。
「良いじゃない♪せっかくの彼女さんだもの♪」
と言った瞬間、僕とカナさんは固まった。
僕の彼女?
つまり、好き同士?
は、はい?
お母さんは、一体何を言って…。
母の言っていることが、理解できなかった。
「あ、あの!違うんです!奏斗くんとは、ただの患者同士で…」
僕が黙っていると、カナさんはそう言ってくれた。
「はい?」
と今度は、母が固まった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
彼女があなたを思い出したから
MOMO-tank
恋愛
夫である国王エリオット様の元婚約者、フランチェスカ様が馬車の事故に遭った。
フランチェスカ様の夫である侯爵は亡くなり、彼女は記憶を取り戻した。
無くしていたあなたの記憶を・・・・・・。
エリオット様と結婚して三年目の出来事だった。
※設定はゆるいです。
※タグ追加しました。[離婚][ある意味ざまぁ]
※胸糞展開有ります。
ご注意下さい。
※ 作者の想像上のお話となります。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【男性向けシチュボ】裏社会の後輩に騙されて、同僚の命を盾に人生全てを屈服させられる【フリー台本】
真己
恋愛
「ふふっ、そのかお、とーっても、かわぁいい♡ 剥製にして、飾りたいぐらいです♡♡」
騙してきた裏社会の後輩に、同僚の命を盾に、重い愛で屈服を迫られるフリー台本。
pixiv版フリー台本まとめ https://www.pixiv.net/novel/series/10923558
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる