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第37話『二人三脚』

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 樹木も色付き始め、秋らしさを感じるようになった頃、商人のフレディから紅茶が届いた。
 
 クオンは日々新作づくりに専念している。
 
 その間、薬草茶作りはレヴィンがやっていた。クオンの薬草茶を待っている人は多い。これを疎かにはできないため、レヴィンに作ってほしいと言われた。
 
 ところがクオンが作っている薬草茶の半分ほどしかレヴィンは作らせてもらえなかった。簡単に混ぜるものだけだった。もっと教えてほしいと言ったら、毒草を使うからダメだと言われた。これには驚いた。

「毒も合わせ方によって、薬になるんだ。しかも結構効きが良い。でも量や混ぜる薬草を間違えたら、死ぬことだってある。神経遣うんだよ」

 クオンが調合中に声を掛けられるのを嫌がるのはそういう理由からしい。

 新作紅茶づくりが始まって、レヴィンは朝からクオンの家に来ていた。
朝は冷え込むようになったので、近頃はフード付きの旅装束のコートを着るようになった。防寒にちょうどよい。

 この服を見ると、クオンと出会った頃のことを思い出す。あの頃はフードをかぶっていたが、今はかぶらなくなった。隠していた朱色の髪は、物珍しそうに見られはするが、それだけだ。今思えば、何をそんなに恐れていたのかと思う。

 午前中、クオンは薬草の採取に出かけている。彼が留守の間は前日に作られた紅茶の試飲をしたり、薬草茶の調合をしていた。クオンが帰ってくるといつも通り、薬草を洗って干す。最近は花や果実も増えた。これは紅茶に混ぜるためのもののようだ。

 レヴィンには日中、面会を求めてくる人がいたが、モーリスに用件を聞いてもらっている。

 夜会もすべて断った。モーリスも三か月だけなら、と理解を示してくれた。昼食も毎日二人分、持たせてくれるできた家令だった。

 二人三脚の作業がはじまって、一か月。秋も深まり始めた頃、ついに納得のいくものができた。試飲したレヴィンは軽く目を見張った。

「これはすごくいいんじゃないか」
「ほんとか⁉」
「ああ。花のように甘い香りがするのに、飲むと渋い紅茶の味だ。これなら買いたい」

 試飲をはじめたレヴィンが初めて「良い」と思えるものだった。売りに出すものだ。レヴィンは妥協しなかった。その自分が太鼓判を押したのだ。

 クオンは大層うれしそうに笑った。だが、ミルクを入れたものを試してみないと完成とはいえない。貴族の大半は紅茶にミルクを入れるからだ。

 ミルクは明日、レヴィンが持って来ることになった。
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