2 / 2
後編 雄太さん
しおりを挟む
話を戻すが、テレビっ子だった私は、毎日好きなアイドルたちを見るたびに、自分の悲惨な
現実を少しだけ忘れる事が出来た、唯一の気持ちの拠り所と言っても過言では無い。
アイドルのグループ名、曲名などは忘れてしまったが、好きなアイドルが"雄太"と言う人だけは覚えている。
短い黒髪に、童顔、誰も引き寄せないような目つきが悪い瞳に、細身の体形。明るい性格では、無い。
想像していたアイドルとは、ほど遠い人間だ。
特別顔立ちが良いと言う訳でも無く、誰よりも目立つ特技を持っている訳でも無い。
でも彼は、グループのリーダーでありメンバーからも尊敬されている。
ファンからも愛されている。
どこか私と似ている彼が、好きだった。憧れでもあった。
「おばあちゃん!このドラマ見たいからチャンネル変えないで!」
「好きな俳優さんでもいるのかい?」
「うん!雄太さん!」
彼は、アイドルという枠に留まらず俳優としても輝き始めた。
恋愛ドラマで演技が抜擢され、新人男優賞を取るなど、事は順調に進み映画撮影も予定されていたとニュースで聞いた。
彼は、人が見えて無い所で努力し夢を掴んだ。
だが、突如として雄太さんは両親と妹と同じ不慮の事故で亡くなった。
新聞一面に取り上げられ、報道にもなった。
雄太さんが好きだった。
好きで好きで溜まらなく愛おしいと感じた。
でも、努力で必死に磨きあげた雄太と言う輝きは、犯人によって一瞬で奪われた。
犯人は、警察に捕まらず逃走を好き勝手し自殺した。
私は、いつもそうだ、愛した物は一瞬で命が尽きる。
初めて買ってもらったおもちゃも、家族も友人も思い出も、そして私が愛した"雄太さん"もすべて一瞬で消えて行った。
そして私の人生もすべて消えて行った。
これは、すべて過去の話であって現在の話では無い。
もうこの世界に、雄太を愛した木之元優香という人間は、存在していない。
努力で必死に磨きあげた”雄太”と言う輝きは、
私の手によって一瞬で奪ってしまった。
私は、警察に捕まらず逃走を好き勝手した
挙句、部屋で太い紐を首に通し自殺した。
私は、無理に自分を隠さず、全うに人生を終え
この世から消えた。
雄太も両親も妹も友人もみんな"死"という形で
私の愛を受け止めてくれた。
自分で選んだ結末、きっとこれで良かった。
私は、微笑みながら、ピクリとも動かない雄太にこう言った。
“雄太さん、私が愛してあげる。これからも
ずっと”
私の側で寝ていてね。
※この物語はフィクションです。
現実を少しだけ忘れる事が出来た、唯一の気持ちの拠り所と言っても過言では無い。
アイドルのグループ名、曲名などは忘れてしまったが、好きなアイドルが"雄太"と言う人だけは覚えている。
短い黒髪に、童顔、誰も引き寄せないような目つきが悪い瞳に、細身の体形。明るい性格では、無い。
想像していたアイドルとは、ほど遠い人間だ。
特別顔立ちが良いと言う訳でも無く、誰よりも目立つ特技を持っている訳でも無い。
でも彼は、グループのリーダーでありメンバーからも尊敬されている。
ファンからも愛されている。
どこか私と似ている彼が、好きだった。憧れでもあった。
「おばあちゃん!このドラマ見たいからチャンネル変えないで!」
「好きな俳優さんでもいるのかい?」
「うん!雄太さん!」
彼は、アイドルという枠に留まらず俳優としても輝き始めた。
恋愛ドラマで演技が抜擢され、新人男優賞を取るなど、事は順調に進み映画撮影も予定されていたとニュースで聞いた。
彼は、人が見えて無い所で努力し夢を掴んだ。
だが、突如として雄太さんは両親と妹と同じ不慮の事故で亡くなった。
新聞一面に取り上げられ、報道にもなった。
雄太さんが好きだった。
好きで好きで溜まらなく愛おしいと感じた。
でも、努力で必死に磨きあげた雄太と言う輝きは、犯人によって一瞬で奪われた。
犯人は、警察に捕まらず逃走を好き勝手し自殺した。
私は、いつもそうだ、愛した物は一瞬で命が尽きる。
初めて買ってもらったおもちゃも、家族も友人も思い出も、そして私が愛した"雄太さん"もすべて一瞬で消えて行った。
そして私の人生もすべて消えて行った。
これは、すべて過去の話であって現在の話では無い。
もうこの世界に、雄太を愛した木之元優香という人間は、存在していない。
努力で必死に磨きあげた”雄太”と言う輝きは、
私の手によって一瞬で奪ってしまった。
私は、警察に捕まらず逃走を好き勝手した
挙句、部屋で太い紐を首に通し自殺した。
私は、無理に自分を隠さず、全うに人生を終え
この世から消えた。
雄太も両親も妹も友人もみんな"死"という形で
私の愛を受け止めてくれた。
自分で選んだ結末、きっとこれで良かった。
私は、微笑みながら、ピクリとも動かない雄太にこう言った。
“雄太さん、私が愛してあげる。これからも
ずっと”
私の側で寝ていてね。
※この物語はフィクションです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる