《瞑想小説 狩人》

瞑想

文字の大きさ
上 下
569 / 585
美姫の場合

監獄烈車へようこそ⑧

しおりを挟む

:::::::::

 夜の闇に酔いしれる窓辺。彼女は汗をかいている。窓(ウィンドウ)に緊張(きんちょう)が走り・高身長(こうしんちょう)の緊縛師が描く影(シャドウ)。それは車幅灯(しゃはばとう)の微細な亀裂と心配性(しんぱいしょう)の夫を嘲笑う。嘲笑の音域は「ド」と「ミ」と「ソの出来損ない」を重ねたもの。誰の耳にも不快に響く音。

 現実の私はそんなことでは動じない。愛しい女性に馬乗りになる場合も。被座馬づかせ『宜しくお願い致します。』と丁寧な土下座をされる場面でも。マイクロチップ関連業種の◎◎が◎◎している場面でも。皆様・不協和音の園で生きる仏徒の出来損ないなのだから。嘆いていても仕方がない。そもそも。そもそも。そもそも。期待すること自体が間違っているのだと悟る。

 極集中状態に自分を保つ。早朝から深夜まで。音階の中にいるときも。眠りについている時間すら。意図的な明晰夢を見るとしよう。意図的な半離脱をするとしよう。重要なのは再現性。世間で云うところの「運」なんて俺は信じないぜ。もう少し深掘りするなら同世界線は「運」に支配されているとも云えるのだろうが。まあいいや。どうでも。

『葉・葉・葉』
 右手を高々と掲げられる
『葉・葉・葉』
 左手も同様とし以下同文
『葉・葉・葉』
 漏れる吐息の色は禁色(きんじき)
『葉・葉・葉』
 脇下を大胆に晒す無印良品
『葉・葉・葉』
 同品を後方から見分する男性陣
『葉・葉・葉』
 逆の脇下は雪國の娼婦のやうだ
『葉・葉・葉』
 前から人数を倍する目が
『葉・葉・葉』
 完全に性的対象として
『葉・葉・葉』
 完全な性的対象として
『葉・葉・葉』
 万全な包囲網を敷きつつ
『葉・葉・葉』
 美姫を恥辱の底へ追う
『葉・葉・葉』
 監獄烈車へようこそ
『葉・葉・葉』
 冠国劣者の集う場所へ
『葉・葉・葉』
 水中溺車の車輪が回る
『葉・葉・葉』
 監獄烈車へようこそ

 万全かつ全天候型で進むことは魅惑的なのだろうか。俺には納得ができない。強化指定選手に選抜された近親者が云っていた。つい最近のことだ。『ふむ。ふむ。ここがこうだったのか。ふむ。ふむ。ここをこうすれば・もっとこうなれるな。』『成程。軸を背骨に置いた時のみに成長の機会があるのだな。』『他人と比較しないことだ。なんて皆が云っているのだが…どうかな。本当にできている人なんているのだろうか…どうかな。非常に。非常に。非常に由々しき問題だ。』このやうに。何とも印象的な瞬間だった。成長とは何ぞや。向上とは何ぞや。

 短期的視座を持てぬ者は意欲を失うだろう。中期的視座を持てぬ者は何度も道を変えるだろう。長期的視座を持てぬ者は死を忌み嫌うだろう。魂に対する形容詞が不確かな者は蓮花(はすのはな)に出会えず消去されるのが運命。慎重に。大胆に。歴史を学ぶ者は慎重になりすぎ・怒りの感情に支配される。歴史を識るものは時に大胆にもなり・平穏無事に人生のカーテンを開閉できる筈。「汝一箇の分を七また八にわかて・そは汝如何なる災害の地にあらんかを知ざればなり」※旧約聖書より一部引用。

『葉・葉・葉』
 高速道路の走行は
『葉・葉・葉』
 右左折を繰り返すものの
『葉・葉・葉』
 上下動(じょうげどう)のない
 嬢外道(じょうげどう)
『葉・葉・葉』
 緊縛師の手捌きにより
『葉・葉・葉』
 両手の動きを封鎖されるも
『葉・葉・葉』
 ヨガウェアの肩口は未だ
『葉・葉・葉』
 彼女の肩に獅噛(しが)みついている
『葉・葉・葉』
 頬は紅色より赤に近く
『葉・葉・葉』
 赤よりも少しマイルドな
『葉・葉・葉』
 恥辱色に染まってしまう
『葉・葉・葉』
 石綿症候群の積年の恨みが
『葉・葉・葉』
 彼女の裾野を取り囲んでくる
『葉・葉・葉』
 同車内の温度は上昇傾向で
『葉・葉・葉』
 同舎内の湿度もまたしかり
『葉・葉・葉』
 霧が出てきたのはきっと
『葉・葉・葉』
 丹沢降ろしの影響に違いない

『葉・葉・葉』
 緊縛師はニヒルな表情で
『葉・葉・葉』
 奴隷化すべきアヒルを見た
『葉・葉・葉』
 真剣な表情で次の縄をとり
『葉・葉・葉』
 何をどこに結ぶかを考慮しつつ
『葉・葉・葉』
 宰府(さいふ)の財布すらも剞む

:::::::::::
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...