《瞑想小説 狩人》

美姫の場合

美姫の場合96⃝

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　『……☓……』意識が飛んじゃう。何処か別の次元へと飛んでいっちゃう。変なこと言っちゃう。云っちゃう。煎っちゃう。熬っちゃう。逝っちゃう。

『…☓…』這入られちゃう
『…☓…』其処は駄目なの
『…☓…』耳に這入らないで
『…☓…』鼓膜が擦られちゃう
『…☓…』前穴に這入らないで
『…☓…』薄膜が破られちゃう
『…☓…』回転するのはやめて
『…☓…』奥之院に先駆けないで
『…☓…』後ろは駄目なの
『…☓…』後ろも駄目なの
『…☓…』後ろはもっと駄目なの
『…☓…』排泄器官が崩壊しちゃう
『…☓…』舐め取ろうなんてしないで
『…☓…』傷をつけようともしないで
『…☓…』優しくするのも少し怖いわ
『…☓…』友達になろうとしないで
『…☓…』仲良くなんてできないもの
『…☓…』鼠と人間は違う生物だもの
『…☓…』どっちが上か下かなんて
『…☓…』議論をするのは止めて頂戴
『…☓…』点と線との違いについてとか
『…☓…』指数と関数の違いについてとか
『…☓…』稚内で採れた稚貝についてとか
『…☓…』不毛な議論は止めにして頂戴

『…☓…』RとGの
　　　　理(ことわり)はきっと
『…☓…』今世で覆ることはないのね
『…☓…』士農工商の世界に戻りたい
『…☓…』今よりきっと真実に近いと思ふ
『…☓…』混ぜるな危険を混ぜてしまうと
『…☓…』混濁した世界になるといふことを
『…☓…』身をもって知る低温夜の緊縛夢
『…☓…』涙の意味を理解して頂戴
『…☓…』バックギアを知って頂戴
『…☓…』まだ骸骨にはなりたくない

『…☓…』行先見えぬ列車の車掌さん
『…☓…』お願いが一つ御座ひます
『…☓…』一生に一度のお願ひです
『…☓…』次の駅で降ろして欲しい
『…☓…』重い荷物を下ろして欲しい
『…☓…』鼠様の動きを止めてくださひ
『…☓…』終着駅の名前を教えなひで
『…☓…』石炭の香りがしておりますが
『…☓…』同列車の動力源は一体
『…☓…』能力値の限界は一体
『…☓…』石油に変わるエネルギーを
『…☓…』そろそろ御披露目してくださひ
『…☓…』同列車の動力玄として
『…☓…』私へ向けられた歪な
『…☓…』性欲を。世浴を。静翼を。
『…☓…』無駄に用いるといふのですか
『…☓…』無明工場の従業者になっちゃう
『…☓…』複利恩恵の懐柔者になっちゃう
『…☓…』長期目線で見つめないで頂戴
『…☓…』いっそ殺して今。直ぐに。

『…☓…』お願い。お願い。這入ってこないで
『…☓…』お願い。お願い。発芽しちゃう
『…☓…』胎内に変な芽を植えないで
『…☓…』中で食事をしないで。お願い。
『…☓…』電子書籍を聞かないで
『…☓…』そんなにゆっくりしないで
『…☓…』斜め読みしてくださひまし
『…☓…』私の心を
　　　　深読(しんどく)しないで
『…☓…』私の躰を
　　　　真読(しんどく)しないで
『…☓…』胎内で知識を発芽させないで
『…☓…』それは私にとってとても
『…☓…』それは私にとってとても
『…☓…』とてもとても辛いことなのです
『…☓…』電気的拷問にかけないで
『…☓…』温度の呪縛をかけないで
『…☓…』尺度を変えて楽しまないで
『…☓…』弥勒菩薩様にお願いしないで
『…☓…』身体はそんなに強くないのです
『…☓…』呼吸ができなくなっちゃう
『…☓…』二酸化炭素分圧優位になっちゃう
『…☓…』不完全燃焼の残渣がでちゃう
『…☓…』毛様体筋が引き延ばされちゃう
『…☓…』眼輪筋が不確定になっちゃう
『…☓…』側頭筋が千切れちゃうかも
『…☓…』前頭筋が追従しちゃうかも
『…☓…』帽状腱膜が破裂しちゃうかも
『…☓…』水晶体が推奨外に引かれちゃう

　『……☓……』意識が飛んじゃう。何処か別の次元へと飛んでいっちゃう。変なこと言っちゃう。云っちゃう。煎っちゃう。熬っちゃう。逝っちゃう。

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