《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合93⃝

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 そんな私は随分と嬲られ尽くしました。鼠さん達が乳首を舐めてくださるのです。丁寧に舐めたり。激しく舐めたり。噛じったり。きつく捩ったり。『……っ』相手は自制心のない獣。彼等の遊技場となってしまった身体が憎い。墓場まで持ってゆきたい凌辱感。恥辱感。全身を襲う背徳感に「ぞくぞく」としてしまう背骨が怖い。

 ベッドシーツは水溜りのやうになっています。その殆どは私の身体から排出されたものです。唇から。各穴から。勿論。一番恥ずかしい阿南の穴から垂れた分量も多い。滴るのは雫。雫。雫。そして雫。

 梅雨前線が倍雨全尖(ばいうぜんせん)となって大雨を降らせる。私は雨やどり先のない貝殻。剥き身の貝殻の柔らかい中身。酷い雨に濡れて途方にくれております。ねえ。あなた。北区へ帰宅できない私の身を案じて頂けますか。ねえ。あなた。私の黄土色のワンピースは濡れてしまいましたわ。『雨が降っていたの。私の周りにだけ。まったく困ったものよね。』そんな嘘を信じて頂けますか。見え透いた嘘に頷いて頂けますか。

 ねえ。あなた。助けてくださひ。此のままでは本当の奴隷になってしまいます。最下層で常に土下座を強要される最下層の性奴隷に。異種輪姦は歪な行為でしょ。そうでしょ。国際電話から情報戦線の残り香がする。上は下に。下は上に。とても変な気持ちになるの。電流変圧器になってしまったみたい。変圧器(トランス)で意識変容(トランス)してしまう意識が怖い。

『ひ・ひ・ひ。美姫。鯨にしてやるよ。捕鯨船の鉾で捕えてやるから覚悟しな。』婆様。婆様。意味深な言葉に身体が反応してしまいます。房中術のレシピで私を焼くつもりなのね。交渉術を持たない私の右目に大粒の。涙。快楽手術で私を焦がすつもりなのね。下降気流に巻き込まれる左目に大粒の。涙。

 『甘い。甘いねえ。美姫。桜人(さくらびと)は突然の強風に驚くだろう。突然の雨に泣くだろう。折角の花びらが散ってしまったと。物事は一切合切が変容していくものなのさ。ほれ。飲みなさい。早く。』

 脳内には紫の靄(もや)。上丹田には紺色の雨。喉元には切り立った地蔵尾根で切り出したナイフ。胸元に緑の感嘆符が在り『…!…!…!…!』定期便のやうな心拍を刻んでいます。太陽神経脳は貯蓄を空にしてしまったの。もう栄養は残っていないわ。微塵子ほどの能力も残っていない。

 『甘い。甘いねえ。美姫。2024年はこんな年になるのさ。御主人様の呼出(コール)に怯えながら育児でもしてるんだね。ホット・ケーキを焼いている時も。洗濯物を干している時も。夫の袖枕で眠りにつくその瞬間も。お前の身体は。お前の心は。お前の全所有権はこちらサイドにあるのさ。こちとら砕土の全株を所有する御主人様の下僕。こちとら才奴の全株を所有する御主人様の家臣。こわや。こわや。怖い世の中だねえ。』

 耳の車輪に繋がる経絡(けいらく)が在る。インナーイヤーチャクラ。だったかしら。何処からか聞こえる綺麗な綺麗な。とても綺麗なナイロン弦の音。耳元で誰かが弾いてくださっているのでしょうか。NOWHERE MANを誰も感づかない解釈で弾き。歌う。裏声が綺麗。男性なのか女性なのかも判別できぬ綺麗な音。そして独特のリズム感。

『甘い。甘いねえ。美姫。
 奴隷の一号機にしてやるからね。
 覚悟しな。首筋に注意しな。』

 『葉……っ』
 胸がべとべとになってしまう。
 
 『葉……っ』
 もう。いいです。もう。

 『葉……っ』
 噛んでくださひ。
 舐めてくださひ。
 千切ってくださひ。

甘辛い味付けの罰遊戯に酔う私。暗転するカーテンレール。咀嚼を繰り返すヴァンパイヤと周り続けるハードワーキング・バイブレーター。暗黒遊戯は突端から首都変遷し私の窪地へ。穴の中へと遷都する。穴の中を主戦場とせんとす。

それも自然なことなのね。
彼等は暗がりを好むもの。

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