《瞑想小説 狩人》

美姫の場合

サランラップ

：：：：：：：：：
　
　サランラップでぐるぐる巻きにされてみたいの。夢枕に獏が来るまで。もう少し強くしてくださひ。もう少し辛くしてくださひ。呼吸困難は終着点じゃあないの。

　夜空に浮かぶ双子座に願いを込める。少女は大人になりたいと云っている。絶頂を経験させてくださひ。言語齟齬を咀嚼してくださひ。貴方様の賢明な脳内で。


　サランラップが良いの。ベルトで打ち付けて欲しいの。ネクタイを緩めて欲しいの。Yシャツの語源ごと脱いでくださひ。肌と肌の触れ合う感覚。それはそれで良いのだけれど。時には滅茶苦茶に蕩けてみたい。時には全てを投げ出してみたい。

　変な液体に私を漬けてくださひ。美味しい漬物になりますから。御医者様いらずの身体になりますから。『夫の負債を身体で支払う』なんて。都合の良い定義漬けにしてくださひ。そして煮込んで欲しい。ぐつぐつ。ぐつぐつ。ぐつぐつ。溶けてなくなってしまう迄。柔らかい御肉になる迄。


　サランラップで巻いてくださひ。唇と御鼻には少し穴を開けておいてね。ぎりぎりの穴で構わないから。少しだけでも呼吸が必要なの。二酸化炭素分圧が重要なの。特に快楽の際(きわ)に居る際(さい)は。『苦しいだろう。』そんな至極当然の言葉で責めてくださひ。詰(なじ)ってくださひ。思い付く限りの罵詈雑言でパリスに連れていって。

　裸(はだか)ん行(ぎょう)の皮算用を強要してくださひ。二次関数の頂点から右へ左へ。見事にジェットコースターを滑りますので。有り得ない液体に漬け込んでくださひ。『これは酷いものでな。』そんなイントロを加えてくださひ。見事な白菜になってみせます。仕事はきっちりとする主義なのです。皮膚に染み込む液体の圧力に悶絶する顔を見て笑って頂戴。


　サランラップを巻いてくださひ。直径一寸程度の穴から色々を挿入してくださひ。咥えます。何本でも。咥えます。何本でも。私・頑張ります。顎が疲れてしまうのは覚悟の上。上顎骨と下顎骨の位置は微差だと思っておりますので。嗚呼。嗚呼。嗚呼。御安心くださひ。噛んだり千切ったりはしませんので。だって。口淫ってそういうものでしょう。口犯ってそういうものでしょう。

　ポニーテールなら後頭部を掴んでくださひ。三つ編み部分をウィンチで牽引して欲しい。不動石にしてくださひ。葡萄酒にしてくださひ。反復になりますが滅茶苦茶にされたい時だってある。所有されたい時だってある。人間だもの。人間だもの。女だもの。


　サランラップは食事に使わないで。自然な流れで巻き付けてください。くるくる。くるくる。くるくる。器用な手捌きで楊貴妃を幼忌姫にしてくださひ。くるくる。くるくる。くるくると。三半規管を心配しないでくださひ。『見事な奴隷模様になったぞ。く・く・く。』そう云って喜んでくださひませ。

　くるくる。くるくる。くるくる。低体温症には氣を配らなくて平気。どんな兵器よりも温まるものですから。「経験者は語る」ってことです。最初ちょろちょろ。中じゃーじゃー。蒸らしの時間を多めにとってくださひまし。縦に並んだ御米になります。精米具合はお任せします。精米された純白もいいでしょう。糖質多めになりますが何卒御容赦を。


　サランラップを巻いてくださひ。　
　漬物石を置いてもください。
　大腿骨のきしむ音が聞きたい。

：：：：：：：：：：：：：：