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美姫の場合
『引』
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『…は…』とっくに突起は咀嚼されてしまい
『…は…』電気の走行する列車となる身体
『…は…』天はひとの上にひとを造らず
『…は…』天はひとの下にひとを造らず
『…は…』そのやうに宿命づけられた筈なのに
『…は…』ひとのうえににねずみを這わせる
『…は…』そんな地獄絵図を巻物にして
『…ああっ』閻魔殿に売りつけるとしやう
『……』解釈とともに回る火の車
『……』外傷処置とともに写経の目玉
『……』引き伸ばされる毛様体筋
『……』追従する眼輪筋と後頭下筋群
『……』北は南と入れ替わりたいと云い
『……』東は西にほのかな憧れを抱く
『……』日の沈む國の天子から
『……』日の昇る國の天子への返歌
『……』はじまりはおわりと交わり
『……』おわりははじまりの尻尾を噛む
『……』甘雨(かんう)が遠ひ日の夢を見る
『……』傘雨(さんう)は何処ゝまでも長く
『……』迷路向こうには大人の雰囲気
『……』ロングコートの中に大胆な着衣
『……』軋む荒縄工房にチェインチョーカー
『……』早朝の彼女に悪戯を仕掛けやう
『……』片耳にインカムを着け相互通話
『……』動かないで其処に立ちんぼしていろ
『……』背中を大胆に出したコスチューム
『……』露出度の高いタイトミニスカート
『……』薄化粧を施せばミニマムでスウィート
『……』肩甲骨には奴隷印のハートマーク
『……』昨夜の接吻が残した
残渣であり姦鎖(かんさ)
『……』往来の多い駅・南口への案内板
『……』中央線と交差する武蔵野平野の一角
『……』其処に彼女を立たせて魅せる
『……』其処に彼女を立たせて見せる
『……』其処に彼女を立たせて観せる
『……』概ね9割が彼女の艶姿に見とれ
『……』出社の時間に数分遅れ着
『……』概ね1割が彼女に違和感を覚え
『……』牽引縄に興味を持っている
『……』「引」の文字をつけたロープが
『……』上空のカラビナフックに跨っている
『……』最初に其れを引いたのは男だった
『……』屈強な腕自慢のタンクトップ野郎
『……』春には寒かろうその風体から
『……』暴力性と加虐性を感じるのである
『…あ』引かれた縄は銀鎖に繋がっており
『…あ』銀鎖は洗濯鋏に繋がっている
『…あ』なかなか良い買い物をしたと
『…あ』ほくそ笑むインカムの向こうに
『…あ』現実交差する黒いロングコート
『……』同男は後方からの視線を感じる
『……』状況を察したものが他にも居る
『……』彼は複数回楽しんだのち
『……』後続のサラリーマンとハイタッチ
『…あ』サラリーマンは中肉中背で
『…あ』頭髪の薄さを成長の度合いとし
『…あ』収入の半分を投資に廻す男だ
『…あ』証券会社で外車を配車するよりも
『…あ』その女の艶めかしい足つきや
『…あ』細腰を見つめるのが好きになる
『…あ』ニップルクリップは残忍な黒色で
『…あ』評価額は右肩上がりの谷なし曲線
亜の乳首鋲(ニップルクリップ)は良い買物だった。久々のホームラン。鎖の残忍具合も丁度いい加減。黒い塗色を何度も重ねたマットな質感。挟み具合をボルト及びナットで調整できるやうになっており利便性は高い。何よりも携帯性に優れているのが氣に入った。即買いだったよ。久々に店舗買いをしてしまった。久々に衝動買いしてしまった。
おい。おい。見ているか。君のことだよ。昨月のことだよ。俺と一緒に行った「秘密基地」のことだよ。『大人の世界を覗いてみたいの。』そんな事を曰わっていたじゃあないか。その後の事を小説に付しているんだ。恥ずかしいだろ。もし此れを読んでいるなら君の耳は真っ赤になっている筈。
『……』御先祖様は悲しんでいるぞ
『…あ』三人目までは実は出来レース
『…あ』黒コートの男が事前準備した
『…あ』所謂・桜に過ぎない男達さ
『…あ』右に習えといふ日本人の特性に
『…あ』御前の身体を捧げてみるのさ
『…あ』三人目はミンクボールの女性
『…あ』何か訝しげに呟きながら
『…あ』先刻の二人よりも強い縄引き
『…!』中空に浮くほどに踵が跳ね
『…!』破れた障子は更に破られる
『…!』其処は伽藍堂(がらんどう)の
万年筆
『…!』其処は奥之院の陰鬱な箱の中
『…!』ミンクボールは春の到来を喜び
『……』後方に並ぶ列が形成されたのを見
『……』諭吉が誰かに変わるのを待ちわびる
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