《瞑想小説 狩人》

美姫の場合

美姫の場合74⃝

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　『は…っ』真紅(しんく)のシンクに辛苦(しんく)の美女が居る。名前は美姫と云う。表現力の限界に挑戦しても顔貌は願望とおりではないと思われる。薔薇色の鎖に捕縛された  触媒を孵さぬ不合理な事実と無痕の果実。彼女は老婆に調教を施されているように見える。一滴。一滴。垂れる水のようなもの。細い腰に纏わりつき感度の昂りを強制する幇助線。

　『やめ…て』止めて欲しければ場代を頂戴しに参る。君の黄身が白身になったとて返済出来ぬ無法の場代を。一宿一飯の恩義に宿るのは可塑性（かそせい）の見えぬ猛獣だ。授受を拒むならばキャミソールの内側に「鼠（ねずみ）」を挿れることとなるが覚悟は宜しいか。欲望しか持たぬ低能で剃毛済みの鼠を。其れは美姫。御身の胸の膨らみの中で暴れるぞ。もぞ/もぞ/もぞ。そのやうに這い回る。もぞ/もぞ/もぞ。禄な挨拶などせず自分自身の遊び場であるかのように暴れるぞ。右の突起に喰らいつかれるのを楽しみにしているがいい。左の突起に下顎と上顎が当て擦られるのを楽しみにしているがいい。

　御身眼前の老婆は子飼いの魔物であるぞ。加護（かご）の籠（かご）に閉じ込めた偽りの性別だ。滴り落ちる液体は媚薬であるぞ。中枢神経を惑わし羅針盤の真北を狂わせる不利益債務だ。間もなく君を襲う「鼠（ねずみ）」は齧歯類（げっしるい）の中でも知能指数の具合が丁度良い。同宴の前頭前皮質を適度に狂わせる程に。

　最初の鼠が♂ならば似合いの♀鼠を挿れてやらう。反対に♀の鼠ならば♂の鼠を挿れてやらう。美姫。鼠の牙で割かれるのは痛みを伴うぞ。君は２の倍数に分割されるだろう。同手法に名字の苗床（なえどこ）を失うだろう。

　鼠達に餌を与えやう。鼠達に餌を与えやう。果実を存分に喰わせ太らせたのち,腟内で交尾をさせてやる。「前」を未だ頂いていないのはそういった理由。単純だろう。理解できたか。

『葉/葉/葉』
　蕎麦打ち上手の老婆はにやり
『葉/葉/葉』
　御主人様の御命令の元
『葉/葉/葉』
　お口の奥地に媚薬の告白
『葉/葉/葉』
　牧草地を荒らす為だけに
『葉/葉/葉』
　森羅万象に通告のない前泊
『葉/葉/葉』
　冷却水路は水のない忘却曲線
『葉/葉/葉』
　流行りに乗れぬN文字は意味深
『葉/葉/葉』
　美容と健康,準備と練磨
『葉/葉/葉』
　言葉(ことのは)と知恵の儀式
『葉/葉/葉』
　割れたせんべいを整えて倉敷

『葉/葉/葉』
　身体は喰うたものでできており
『葉/葉/葉』
　心は浴びた言葉で創られる
『葉/葉/葉』
　未来は発した言葉で創られる
『葉/葉/葉』
　我等の名前を人間としよう
『葉/葉/葉』
　不要な枝を剪定し綺麗にしよう
『葉/葉/葉』
　それぞれの樹々に名前を
『葉/葉/葉』
　アイデンティティを加えやう

『葉/葉/葉』
　北の方角には私の本名を
『葉/葉/葉』
　南の方角には貴方の名前を
『葉/葉/葉』
　東の方角には過去という名を
『葉/葉/葉』
　西の方角に未来という名を
『葉/葉/葉』
　それぞれが惹きつけ合い
『葉/葉/葉』
　それぞれが振動を高めあい
『葉/葉/葉』
　無理なく一致する瞬間の為に

『葉/葉/葉』
　美姫の身体は確かに火照り
『葉/葉/葉』
　右蕾がおおひに開いている
『葉/葉/葉』
　左蕾は心臓に幾分か近い為
『葉/葉/葉』
　鼓動が追従し御犬様が乱舞す
『葉/葉/葉』
　刹那と永久の仲直り
『葉/葉/葉』
　一歩戻って仲違(なかたが)い

『葉/葉/葉』
　老婆の杖は魔法のステッキ
『葉/葉/葉』
　振る度に疒（やまいだれ）に潜む
『葉/葉/葉』
　好ましくないものを連れてくる

『甘い。甘い。甘いねえ。美姫。テレビジョンで得た知識なんてそんなもんだと知りな。内緒の内職みたいなもんさね。最初の菜食みたいなもんさね。万事休すの卍飲料（まんじジュース）みたいなもんさね。大食漢にでも喰われてしまいなよ。』

『ひ。ひ。ひ。きっちりと飲み干したようだね。お待たせ。「鼠（ねずみ）」さんの登場だよ。ほれ。御覧。』

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