《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

シャワー・ルーム

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 右脚を洗う。滴下する適温の湯すら憎たらしく思ふ。私は酸桃(すもも)。一旦綺麗に磨かれても直ぐに汚される酸桃(すもも)。皮剥ぎ儀式の終了とともに実をさらけ出した簀子(すのこ)。緊縛痕(きんばくこん)に涙ひとつ。ふくらはぎが痛むの。腓腹筋が痙攣しているの。即興の抜刀に怯えている。勃興の発光に怯えている。

 左脚を洗う。第一指と第二指の間に呪いが宿っているのに氣づく。第三指と第四指の間には本能が。第五指には理性が。見分出来ぬ第六指には大道寺(だいどうじ)の大工事(だいこうじ)が宿っている。指の先までも埋没するならば先送りとなるのは掃き掃除。

 坊主共は守銭奴と成り下がり卑猥な妄想で日々を過ごしている。『助けて…くだ…さい。』美姫の囁きが聞こえるやうな高僧は居ない。少なくとも俺の知る限りでは。残念なことだ。

 臍下部を洗う。特に念入りに洗う。暮れのクレバス内壁から染み出す少量の蜜。調教の名残りがこんなところにも。拷問部屋の燭台から分割された色艶(エロス)の残渣がこんなところにも。

 剃毛後の陰核付近に捕鯨船。震える包皮を御覧。震える胞子を御覧。枕草子の後日談。陰核の引火区には絞首刑を待つ桃色突起が在るだろう。『次の獲物は此の突起だ。只管に虐めてやらうぞ。』脳内で紫襦袢の男が笑う。『あら。楽しそう。私も参加させて欲しいわ。いいでしょ。』同じ場所で蝶々を主題とした着物の女性が「にやり」。

 大殿筋及び小殿筋を洗う。その内部には先まで責め苦を受けていた部室が在る。『大声禁止』『淫行禁止』『睡眠禁止』『無断借用禁止』『無断侵入禁止』破る為の規律は犯目性(はんもくせい)の金木犀(きんもくせい)を連れてくる。

 リビドーは扉を使用することなく/隣の部室から巨大ドリルで穴を開けてしまった。其処から何者かが侵入してしまった。狂った球体達は腸壁まで擦り楽しんだ。壁には三角形の穴。もう元に戻ることはない。『ん……っ』同部分の敏感さに驚く美姫。危うく背骨に巣食う蛇に隙を見せるところだった。『ん……っ』こんなシャワー・ルー・ム・の・中・で・・・。嗚呼。

 背中を洗いたい。背中に取り憑いた閑古鳥に御願いしてみる。『文脈に困ったらAI様に頼めば楽ではないか。』ぐうの音も出ぬ意見に賛成旗が5割。反対旗が5割。筆者に言わせれば『別にどうでもいいんじゃないか。俺がプロットも立てず直接執筆するのは自分の為。没頭する為。瞑想という行為の延長線上。行為の意味合いが違うということだよ。』と知らん顔。

 晩秋鳥との睦み合い。脊柱起立筋を撫で輪姦(まわす)す愛撫の園。同筋肉の内側に潜む多裂筋(たれつきん)まで洗浄液が届く。第三番の胸椎には緑の花園が在り/北半球では右回りの渦を/南半球では左回りの渦を形成する。

 赤頭巾(あかずきん)は多裂筋(たれつきん)との手切金(てぎれきん)に相応しい金塊を近海から持ち馳せ参ずる。『之で充分かと存じますが。貴女の魂の値段は如何程でしょうか。貴方の時間への対価は如何程でしょうか。必要ならば烏賊に餅を喰わせましょう。其れを吐かせて最高級の靴と致しましょう。』黒服の主人はグレイト・ギャツビーを読みながら,右手人差し指で提案を否定するフィンガー・フリッピング。

 胸を洗う。火砲を浴びた膨らみ及び突起は萌葱色。突起には閻魔様が描いたと思(おぼ)しき火焔モチーフの呪詛ゑ図が残っている。水では到底流れることはない。泡では到底消えることはない。犯人の素性を識ることが鍵となる呪いのゑ図。大胸筋と小胸筋が描く緩い曲線のを辿り上流へ向かう。

 首を洗う。顔を洗う。髪を洗う。

 『…だ。』

 『…だ。出てこい。』

 バスタオルは何処に在るのです。

 そして次は何をなさるのです。

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