《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合56⃝

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 変幻自在の脳波。脳内領域β。『…っ…っ』嗚咽とともに振動し進行する紐帯(きゅうたい)の球体。尻穴穿りは気持ちよかろ。ベッドに横たわるがよかろ。グッドに告げるララバイ。バッドなbutthole bang。ガット弦で奏でるsurrender song。直腸を貫通する悪意の集合体は時間概念を蹴散らして進む。中へ。中へ。

 歪曲した部分に突き当たる。突き当りには幾つかの嘘が詰まっている。『これはけしからん。破壊してしまおう。』それが彼等の主張であった。獣たる本能と調教師たる理性は同部分で交錯する。『そうだ。そうだ。そうしてしまおう。』ナイーブさの欠片もない同義の主張が賛成の旗を振る。『ひれ伏すことを強要する。腰を折りたまへ。』

 『宇…っ』『宇…っ』夢を見る女が一人。現実を喰う獣が四人。急所庵部に潜む同名の他人。和音崩しの違和感を楽しむ御仁。林間学校の文字変えを楽しめば快楽の囚人。令和五年度に未だ訪れぬ秋の陣。先人たる何者もない美姫の穴に酔うペッパーランチ。脳内領域β。

 変幻自在の脳波。脳内領域α。服従(ふくじゅう)のはじまりは福寿(ふくじゅ)のはじまりでもある。休日は列車に乗って熱海にでも行こう。きっと素敵な景色が見える筈。そこで君に首輪を掛けるのさ。町内会の会合にも行こう。きっと身近な人の身近な話が聞ける筈。そこで君のスカート内の色当てクイズタイム。きっと盛り上がるだろうぜ。『白』『黒』『いいや。紫』『何よりも無垢な色』『桃色で花柄』『はじまりの色』『終わりの色』『奴隷色』『狂気の色』『やはり。白』

 俺は全てが正解であり不正解だと告げるだろう。観測下にない物体は全てを含有する空(くう)であり何者にも成れない虚無の関数でもある。実態のない観念的な肝臓を彼等に差し出す氣はない。そこまでだ。残念/無念/放念/縮減の祝言。先ずは彼女の両突起の色を当ててくれ。其処から先に向かう為の儀式として。

 『桃色とオレンジの丁度,中間色』そのとおり。正解だ。先へ進もう。嗚呼。君の意見か。それは聞いていない。聞こえてもいない。受肉する準備として濡れていろ。痛みを伴わぬように。脳内領域α。

 変幻自在の脳波。脳内領域mid α。『葉…っ』『葉…っ』『葉…っ』垂れ流す股床の液体に酔う女の手指を数えやう。左右はアシンメトリー。内側から数えやう。美姫(みき)の腰絞りはコンテンポラリー。婬舞(いんぶ)に添える高麗仕立てのカトラリー。裂け穴の内部。嬲られ失われつつある小腸のパーソナリティ。

『親指は?』そうだな。同指が指し示すのは居城を攻められる加賀の城。兵糧攻めに喘ぐ吐息。覚悟の視線と割腹の刃。脳内領域mid α。

『人指し指は?』そうだな。同指が指し示すのは本能。眠りたい。喰いたい。貪りたい。異性と交差したい。理性という頼りない調教師が餌を与えているが獣の空腹は紛れず。脳内領域mid α。

『中指は?』そうだな。同指が指し示すのは歴史。改竄(かいざん)される前の正史。格子戸の中で行われた出来事も。平凡な詩人の暗中模索すらも。醜悪で醜い魂すら。酷い匂いのする拷問具すらも。一酸化炭素が二酸化炭素の存在に焦がれていることも。正確に綴った預言書。脳内領域mid α。

『薬指は?』そうだな。同指が指し示すのは現実。無意識が好都合な部分のみで組み立てた世界。信じたいものが信じたいだけ在るという未開地。未来はボールペンの先端部分のやうに削られている。時の経過とともに減ずるのが期待値。脳内領域mid α。

『小指は?』そうだな。同指が指し示すのは可能性。タワーマンションの賢者は知っている。時間は過去から未来に流れてはいない。未来から現在へ。現在から過去へ。上向き三角は男性の象徴。下向き三角は女性の象徴。『…☓』『…☓』『…☓』何度でも逝くことが出来る小腸。肉壁料理に前周印で合掌するならば,脳内領域mid α。

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