《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合53⃝

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『未だ三つだぞ。しっかりせい。』

『…』

『他穴も全部。同様の目にあわせてやらうか。』

『…』

『時間は充分に在る。充分に。な。』

『…』

『さて。よっつ。』

 掻き乱される後蕾の内壁が終始泣いている。『私…もう…駄目』奴隷調教(スレイブトレーニング)界隈では終始一貫して責め手優位。呼吸が苦しくなる。吐息の色が畳を濡らす。毛様体筋が奇妙なストレッチを覚えてしまった故/視界が歪んでしまった。眼輪筋も同じく途方に暮れている。逃げたい。逃げられるものならば。帰りたい。帰れるものならば。補修されたコンクリートの中に埋まってしまっても構わない。

 四つ数えられた球体達は狂玉(きゅうたい)と成り応急処置のない肉体の中。其処は私の排泄器官内部で御座います。掻き回すのはお止め下さい。傍若無人に振る舞う殿様のようではありませんか。生類憐れみの令をくださいまし。私はマングースではありませぬ。御存知ですか。私はマウスではありませぬ。御存知ですか。私はジャングル・ジムではありませぬ。御存知でしょうか。私は版権をもたぬ半賢者ではありませぬ。御存知ですか。私は存在を否定された奴隷ではありません。そうではないのですか。私は半霊体であっても凡例体ではありません。御存知ですか。私は喰われる為に生まれたパンケーキではありません。

『いつつ。どうだ。』

『…い…い…い…っ』

『どうだ。と。聞いておる。』

『い…い…い…っつ』

 私はシャンデリアではありません。御存知ですか。私はシャングリ・ラではありません。御存知ですか。私は玩具ではないと思うのです。多分。私は遊技盤ではないと思うのです。おそらく。私はカードゲームでもありません。おそらく。私は転載禁止のインターネット・サイトではありません。おそらく。私は蒸し器で焦(じ)らされる運命なのでしょうか。どうせなら電子レンジで綺麗に全体を熱して貰いたい。そう願うのです。過ぎた願いではあろうと存じますが。

 寒冷地帯に所属する奴隷に成るのでしょうか。冷奴(ひややっこ)が氷奴(こおりやっこ)になる迄。絶対零度の寒波に包まれつつ絶対隷奴として生かさず殺さずの放置処置がなされるのでしょうか。そんなのは嫌。そんなのは嫌で御座います。絶対敬語を使用せねば貶められ。接待メイドになりきれなければ嬲られるのでしょうか。熱帯雨林の樹々を切り落とされ。それを眺めるだけの哀れな穴蔵の守株(しゅしゅ)。酒趣(しゅしゅ)。朱酒(しゅしゅ)。又は。

 私は灼熱の回廊に放置されるのでしょうか。此の身体、情死に瀕する迄。摂氏66℃のウェッジに座(ざ)することを強要されるのでしょうか。下腿部の全てが紅色に染まる迄。上がり湯しか飲めぬ運命に。赤犬の生肉しか背負えぬ運命に。腹八分の村八分に迄/輪姦されつつ石抱き刑に処されるのでしょうか。自重よりも過多な重みに沈み込む迄。バターが生姜焼きに溶け込む迄。

『い…い…い…う…』

『通い妻。夜ごと乱れる。其の身体』

『い…い…い…い…』

『返歌せい。酒肴にするのだ。』

『い…い…い…い…』

 拡張され挿入を許した穴。処女(おとめ)ぞ此処に散るらむ。排泄器官は挿入器官となり下がる。紅葉には未だ早いと思うのです。球体は微細な振動で私の弱点を突いてきます。『…!…!』身体が跳ねる。飛ぶ。舞う。困惑儀式。宗教的な四肢。絶頂香。桃色短歌。狂気の乱舞。それは止められない。止められるものではない。

 泡立つ肌。染まる肌。充血する肌。損失する肌。私の肌。中肌。徒花(あだはな)。散りゆく花弁入口が充血している。充血し絹に戻れぬ掟を恨む。集結し勢いを増す狂(くるい)球(だま)達の格好の餌食となるのです。ああ。ああ。まだ沢山の球体が出番を待っているのに。私の氣が狂ってしまうのが先か。球体達が全て埋まるのが先か。鼠と兎の徒歩競争は続くようです。

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