《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合㊿

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『……!……!…』何度か鯨になった痕がベッドシーツに残っている。愛おしい人に抱かれ其の腕枕で早朝を迎えるのが至極だという海外女を思い出す。随分と積極的であったな。ともあれそれは美とは程遠いものだ。少なくとも誰かにとっては。

『……!……!…』そう。そう。そうだ。我慢の表情。絶頂の表現。絶頂香(ぜっちょうか)。その花を綺麗に咲かせるのが日本古来の美。口から漏れる吐息。それだけでいい。言葉少なの潮吹き三昧。サマーディに居るがいい。随分と穴(アナル)も弛緩してきたじゃあないか。どうだ。どうだ。ここか。ここがいいのか。別暖炉に炎が灯っているのを感じるだろう。

 その焔の垂直架線上には天井が在る。コンクリートの壁体にぶつかるとトーラス形状に広がる淫靡なかほり。天井面には転用された煙となった不完全燃焼の煤(すす)が加熱されたがっている。可熱受託を求めている。過熱の渦内に巻かれてしまいたいとも云う。

 『熱が足りないの。』『酸素が足りないの。』『可燃物が足りないの。』求められる身体と相反する精神が混濁色の靄を造り相互補完しようとするが無駄だった。其処に必要なのはある種の痛みであり/ある種の困惑であり/ある種の意味不明な曼荼羅模様でもあった。燃焼の三要素のうち特に酸素。酸素が15%を切った雰囲気では炎は燃焼を継続出来ない。

『…!…!……』地獄の快楽迷路の渦中で悶える美姫(みき)。一つの穴に這入りこんだ筆先は沢山の絨毛を具備しており、緊縛縄と猛々しく誇る銀棒とのミスマッチが非常に美しい。ぜんまい仕掛けの兎がやってくる。彼女の穴の中へ入り込むために。季節の蟲がやってくる。泥土(でいど)を煮沸して拷問と拷問の隙間を埋める風呂を準備するために。七色の服を着た色男がやってくる。彼女の苦痛を快楽へと完全昇華する唱歌(しょうか)を歌うために。

『…ああ…ああ…ああ…』外では雨が降っているらしい。鉄筋コンクリートの躯体(くたい)を伝わり音が伝搬されている。逆向きの十字架を背負った縞馬(しまうま)は見事な一物を備えており、怠惰な午後を笑い後ろ足で一蹴するのだ。其処に情けはなく一人の漢に目潰しを喰らわす機を伺うのみ。

 美姫の花弁は月の裏側から引っ張り出されてしまった。兎と仲良く飛び跳ねる収穫月(ハーベストムーン)の残骸の中で暴れまわる彼女。剃毛された被所の周囲は痛々しく、消えぬ悪夢の残り香を残す。綺麗だぜ。綺麗だ。とても綺麗だ。ぜ。

 捻りを加えて渦となる性欲。歪な性の探求者。曲がりくねった先は深い海に浮かぶ右巻き螺旋。其処には伝説の海獣がおり大きな指先を器用に使い手招きをしている。抗える者は居らず重力加速度は増していくばかり。潮吹鯨(しおふきくじら)は海中深く引きずり込まれ原材料不明な液体を其処彼処に噴射している。『もう…もう…もう…』何度懇願しても無駄。筆先に彼女の直腸から抜ける志はない。只・其処で君をもっと奴隷化させたいと願っている。

 『さて』『さて』『さて』『さて』彼等四人は同時にそう云った。硬直する棒きれに更なる栄養を与えるのは女の嗜みであるぞ。狸縛りの縄が緩まることはない。それは彼女の汗を養分にし、更に彼女を締め上げる。嗚呼。嗚呼。嗚呼。解説が少し遅れてしまったが麻は水分で収縮する性質を持つ。同性質を利用して様々な用途に使われる訳だが何時かそれを別添として別サイトに置いておこう。精神の在り様にも繋がる話だ。

 後穴責めに悶え苦しむ一人の女。美姫。彼女には『無償の愛といふ最も獲得するのが難しい助け舟』での救出作業が必要だ。故・石◎氏ならば短剣を持ち立ち上がるのだろう。拷問官と勇敢に闘うのであろう。が。現在の上層部にその覚悟を持ったものはおるまい。それ程に資本が毒を撒いている。発芽し。芸術を剥奪し、地を這う情けない存在するための毒。それが拷問部屋にそぐわぬ電子レンジの中で過熱され『召し上がれ』と云っていた。

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