《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合㉛

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 サルバドールのニュースが新聞紙面を賑わす宵。コントラバスの音色が困惑に誘う夜。満月の光。月光を見上げる私好みの男性は何処。くびすじのかほりに包まれてみたい。悦の氣分に抱かれてみたい。好き好き。大好き。そんな異性に絆(ほだ)されてみたい。拿捕(だほ)されてみたい。

 烟草の煙。少し目に染みてもいいの。私が望んだことでありますので。肩と肩を寄せ合いつつ思いっきり甘えてみたい時間が在るの。全体重を委ねても安心出来る場所が欲しいと切々由来に昔を回顧する蚕(かいこ)が繭(まゆ)を造り眉を潜める低気圧に酔わされた脳内麻薬の発生を識る。

『美姫』『美姫』『美姫』三度の呼びかけ。一度目は赫。情熱の重低音。二度目は緑。平衡図形とフラクタルの象徴色。少食宣言の省庁属(しょうちょうしょく)。三度目は青。より黒に近しい近似図形の色づきの蒼。

 路地裏の猫は真最中。ずるさを身に纏い蓮華草で蛋白質を喰う回蟲。あざとさの原点回帰を認める女が独り居る路地裏。スモーキング・ブギー。独特な気配。後方への注意が散漫になった瞬間に攫われる運命。

 同方向へ狼鬼(ろうき)が居るのを感じるだろう。漏気のない臓器の分配を感じるだろう。平和と和平と天下泰平の裏側にこんな路地裏が在るのを知りなさい。善に属する電線はAC100V。悪に属する未曾有機器はBCの歴史を余すところなく知っている。身体を使え。運命の運動性能は結局のところ12鷙鳥(しちょう)が開拓した迷路。

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※八岐大蛇からの近況報告※

 飽きてきたぜ。飽きてきたぜ。本当に飽きてきたぜ。磯のかほりのしない絵画を眺めるのにも飽き飽きだ。肉体折衝のない無駄な言葉に飽き飽きしているぜ。暇な人種め。貴様等が束になって紡ぎ出す積極性のない何処かで聞いた言葉の果実は一体何色なんだい。

 士農工商/春夏秋冬/容易充当/用意周到/灰色封筒。其の中身なぞ殆どが変わっていない。ならば。火事も喧嘩も江戸の華としおおひに騒がん。再送させて頂く。貴様の美辞麗句など聞き飽きた。俺には必要ないものだ。斜頸的に滅作しても構わない。社会的に◎◎しても構わんぜ。俺にその準備は在る。

『美姫』『美姫』『美姫』一度目の呼出(コール)は母親。『私を通過して産まれなければ,此のやうな過酷な運命に身を浸すことなどなかったのに。嗚呼。可哀想。可哀想な私の娘。』

 二度目の詩歌(ヴァース)は初恋の人。『俺には力がなかった。君が犯されている現実を変える力もなければ勇気もない。有機栽培のブロッコリーを育てているのが関の山だ。御免な。御免な。』

 三度目の声は城門から口を開けた八岐大蛇(やまたのおろち)。『※※全てを開放するのだ。動物園で厳重に管理された幻獣を解き放つ。私が統率してやろう。私が引率し開放してやろう。学び得た力を存分に使用すれば失敗する筈などないだろう。復讐だ。復讐の狼煙を上げろ。紫色の狼煙を上げろ。ダイスの目など構うものか。全てが「6の目」になるやうにしてやる。烏賊様(イカサマ)大巣(ダイス)を転がして目を眩ませてやる。彼の槍など最早/刺さろう筈がない。勝ったな。』同大蛇は24節季を3で除し/6を足し/9で割り切れぬ除算(じょざん)を楽しんだ。※士魂部隊の末裔として。

 飽きてきたぜ。飽きてきたぜ。全力疾走のラリアートの方がよっぽどましだな。金目のものを要(かなめ)のものだと思うならどうぞ此方へお越しくだひな。其処に皆様が論じる幸福は御座いません。それでも宜しいのでしたら石炭列車にお乗りくださいな。便利でしょうや。美味かろうや。射精も思いのままにできますでしょうや。

 便利主義(コンビニイズム)には飽き飽きだ。故にイデコもニーサも投資も辞めた。阿呆臭い。魑魅魍魎の匂いがする。気持ちが悪いな。自分の事しか考えていない。商業主義の達人殿へ通告するが…君は隣人が救命処置を求めてきても指交差法からの開口技術を持たぬのだろう。なあ。其の右手に価値が在るのか。なあ。其の左手は何を持つ為に在るんだ。俺の脳内には疑問符という淡青(ペイルブルー)の靄がかかる。甚だ疑問に思うが明快な解は新聞紙の一面には無い。

 飽きてきたぜ。飽きてきたぜ。商用音楽も全部最低だ。音階ずれを先ず治してくれよ。不健康になるのを目的で奏でられたAmにどんな価値が在るというのだ。回らない滑車と倍力システムの美に叶わぬ音域。それを聞く耳は誰も持たんだろう。

 聖徳太子殿は如何かな。耳の車輪が随分と回っているようだが。先天的なものかな。後天的な氣の操作かな。まあいい。どちらでも構わん。俺の独り言だよ。俺の火取(ひと)り舵(かじ)に乗るなよ。口車に乗るなよ。接し出来ぬ摂氏(せっし)を持つ火車の軸に触れるなよ。飽き飽きしてきたんだ。酷いことをしでかすかも知れんぞ。

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