《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合⑱

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 ごくり。二度目の溜飲を実施しました。お口の奥地まで埋め尽くされた唾液を飲むのです。飲まされたのです。一度では飲みきれずに何度かに分けて飲み込みました。色欲の味。複数人の涎(よだれ)により脳内に撚(よ)れが形成されていくのを感じます。『飲んだか』『全部』『見せてみろ』『閉じるな』『舌を出してみろ』。そんな言葉をかけられます。

 飲みました。飲みました。全部,飲みました。見てください。観てください。視てください。診てくださいな。大きく開けられた私の口から鎖骨へ向かう小さな川の筋を御覧ください。それは皆様のものであるとともに私のものでもあるのでしょう。寄辺(よるべ)のない身体と撚(よ)れの酷い心が混在しています。喧嘩は、、、やめ、、、て。御願い。ねえ。仲良くしてくださいね。同じ身体じゃあない。同じ心じゃあない。狭間に居るのは苦しいの。とても。

 唾液川(だえきがわ)の流れは鎖骨を通過し胸元まで至ります。同河川の右岸には口の聞けない童(わらべ)が居りまして私の瞳孔に妄想を同行させたいという仕草。左岸では多眼の女性が4本足で私を睨んでいます。私という川を遡上したいと言ってきます。

 唾液の交換は何度も行われました。『こんなに飲まされるなら…いっそ…』『乾いていたほうが…』何度もそう思いましたが発言することはできません。口を塞がれていますから。民分/身分不相応の発言でしょうから。淑女の皆様方。紳士の皆様方。物事は何事も経験が必要かと存じます。異性の唾液で胃の9分目まで満たされる気分を御存知でしょうか。複数人の唾液が混在してゆくたびに味つけが変わっていくのを御存知でしょうか。とても被虐的な気持ちになるの。とても切ない気持ちになるの。

 嗚呼。最早,愛する夫の事も浮かんではきません。指交差法で大きく開かされた私の唇に隠すものはありません。喉の奥ゝ地まで開示請求がなされ私はなすがまま。玩具(おもちゃ)。愛玩動物。玩具(おもちゃ)。肉体折衝の対象物。悲しみの初夜の始まりは斯様に。

『3種Bだな。監査対象としては相応しい。』ダイヤモンドのキング。『2種Aかもしれん。切り裂いてみようか。』スペードのジャック。『紛れもない5種が此処にあるぜ。見ろよ。』ハートのクイーン。『1種A。続けようじゃあないか。宴を。御主人様もそれを望んでいらっしゃる。』倶楽部のエース。私には彼等の言葉の意味が理解できません。御主人様は…大きな部屋の中央西寄りに鎮座しつつ半眼で私の痴態を見ていらっしゃいます。御年(おんとし)の割には見事な上腕の筋肉。腕組みの仕草。広角に挙がる口角。少しでも反逆心を見せれば直ぐに降格させる意図が滲み出る御姿。嗚呼。結局のところ私は『1種A』に分類されることとなりました。意味はわかりません。不吉な数字であることだけは確かです。

『動くなよ。動けば血が流れることになる。』スペードのジャックと呼ばれる男性は大鋏(おおばさみ)で着衣に刻み目を入れてゆきます。その間/何度も/何度も/唾液飲みの刑罰に処される唇/嗚呼/嗚呼/嗚呼/やめ…て/やめ…て…くだ…さい/もう飲めません/出ちゃう/出ちゃう/吐き出してしまう/此れ以上/捌(さば)くのは止めてください/魚になったような気持ち/両生類になったような気持ち/全てを剥き出しにするのならばいっそ素早く/手早く/おねがい…しま…す/徐々に剥ぎ取られる和装が/泣いています/鳴いています/啼(な)いています。『しくしくしく』と。

 『剃毛日とするか否か』という議論が交わされていました。私は頭の中に靄(もや)がかかった状態ですのでよく覚えてはいません。嗚呼。因みに本小説の執筆者はそういった行為を他の女性にしたことがあるとかないとか。

 遠山さん。どちらにBETしますか。別途御連絡頂いても構いません。『さて』『そろそろ』『晒してもらおうか』濃紺の肩紐が切り裂かれる音。耳に響く金属の擦過音(さっかおん)。恥ずかしい。駄目。見ないで。御願い。結局『剃毛日』は後日談となりました。奇譚ともなりました。そのお話はまた別に記したいと存じます。

 少しだけ。少しだけ。陰部に疼くものを感じます。初夜といいますか初めての呼び出し日といいますか…その時の事を反芻するだけで…今も…。

 彼等は「調教」という言葉を特に好んで使います。酷い言葉だと思いませんか。日出ずる國の天子は何処に消えてしまったのでしょう。和服の残骸が増えてゆくばかり。私の足元に横たわっています。残渣は少なくなっていくばかり。もう少しで両胸が開(はだ)けてしまいます。嗚呼。駄目。恥ずかしい。恥ずかしい。

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