《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合⑭

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 マイナス5号室の来訪者は美姫の消氣を確認する。僅かな彼女の胸の上下動。常軌外の乳首責めによる消氣。正気の沙汰ではない。随分と上手く開発されてきた両突起は傀儡肉(かいらいにく)の再到来。銀髪の来訪者は机上に置かれた薬箱の上部に手を伸ばす。同箇所には樹状(きじょう)から接収された粘体が在る。「ワセリン」と「ひまし油」を適当な割合で混ぜた物体だ。


 常用のものではあるが商用のものではない。成分表示には「〇〇プロロフェン」「〇〇エステル」「〇〇硫酸塩」と記載されている。随分と効きそうな成分がずらりと並んでおりステロイドの成分は認可のない高濃度。資本主義的なものは此処に存在しない。BDSMを極めた彼等が扱う薬品類の効能は激しく/その分の副作用が副菜として存在するのは記載するまでもない。傷は直ぐに癒えるだろうよ。本日の夜には癒えているだろうよ。君の夫も知らぬ受傷部位。マクロファージと赤血球の官能的出会いに乾杯の音頭を。


 彼は右目の端でその物体を捉えると、同じく右手で上部蓋を開放し内部の物質に触れる。第2指と第3指で擦り上げ/匂いを嗅ぎ/酸化していないことを確認し/散華女(さんかじょ)の両胸突起に塗り込んだ。失神状態にありつつも美姫の性感帯は休息しておらず上半身を軸に『ぴくり』と跳ねる。魚のやうに。魚のやうに。魚のやうに。新鮮な魚のやうに。太刀魚と鮫の輪番制円舞曲。ところで筆者が鮫を釣った事があると言ったら何人が信じるだろうか。(※どうでもいいことです。)


 男の指が美姫の傷痕を覆う。特に昨夜,集中的に責められた3つの突起部分には念入りに。一度塗り込まれ/一度乾かされ/二度目の塗り込みをされ/二度乾かされ/三度目の塗り込みをされ/三度目の乾燥を実施される。『ぴくん/ぴくん/ぴくん』美姫の身体はその度に反応する。沈黙の部屋は若干の酸欠状態にあり,畳一畳分が淫薬1錠分の酸素を奪い概ね18%。酸欠空気危険性ガス測定器が警報音を鳴らす。劣等列島の天気予報は暑さによるアラートを発しているのにも関わらず避寒的(ひかんてき)な部屋の情事は凍りついたまま。時間的な猶予も帰る場所を持たぬ末期罹患者の地団駄(じだんだ)。


 先天的に薄い彼女の恥毛。それは後天的にも処理されていた。ここ数年はずっと無毛で過ごすことを強要されていた。夫は勿論それを知らない。知る由もない。同高層マンションの支配者である御主人様が戯れのためにと「剃毛の夜」を開催したことに由来する。その宴は三昧(ざんまい)であったし。サマーディでもあった。何人もの男が取り囲み,開脚姿勢で様々なシェーバーの切れ味を試された。守備陣を失った部位はそれ以降,何時も露(あらわ)で風圧に戸惑いの声を挙げていた。もう戻らない引換券は彼女の根幹情報。御主人様の秘密箱の中に在る。


 銀髪の来訪者の2本の指。無毛地帯に延びる指。件(くだん)の薬品を練り込んだ指。美姫の秘部を探索する指。その設置部はクレバス状になっている。消氣前の情なし愛撫によるものでかつ錠(じょう)ありの体位により下方は見事なまでに濡れている。開口部の先端上部には包皮に包含された吉備色(きびいろ)の半円地。俗に陰核と呼称される箇所は昨夜の責めで随分と赤づいていた。


 薬品がその突起に触れられる。塗り込まれる。受傷者は非合法な薬局にかかり/髪飾(カチューシャ)が『哀れなものだな。』と笑う。杜仲茶(とちゅうちゃ)が晩期死体現象の増加に『哀れなものだな。』と笑う。夜行列車は空に向かうレールを探すが見つからず。『哀れなものだな。』と車掌の一言。


 御主人様はそれらを全て聞いており/銀髪男に美姫の処遇を伝えた。そんな朝だった。家では夫が電子レンジからスープを取り出すも,温まり過ぎたカップに添えた手を放してしまう。割れた陶器を見た当人も/千里眼の御主人様も言う。『哀れなものだな。』と。

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