《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合⑨

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 マイナス5号室の訪問者は美姫の両突起をひとしきり撫で回し/摘みあげ/妻味(つまみ)挙げ/給餌と旧字で反応を確かめる。『ああ…あつ…い。』『あつ…い。駄…目。』入力される熱波の襲来。出力する男の顔貌を未だ確認できぬ彼女は首振り仕草。帰りを待つ猫のようだ。何を待つ。何を待つ。出社時間を堅持すべく早朝電車に揺られている夫のことか。今日の朝,妻が快適空間(リビング)に存在(リビング)していない事に訝しげな顔をしている夫の事か。未だ彼女は生肉呼吸(リビング)。セイウチのように生きている。寒さを和らげてやろうか。少しだけな。のちに御主人様も部屋にやってくるだろう。お迎えは四つん這いが相応しい。練習したとおりにやるのだぞ。御主人様は極黒珈琲に適度なバターを添えながらやってくるだろう。2夜連続の貢ぎ物となるのか。それとも別の目的があるのか。それは知らん。気分次第だな。

 訪問者は無骨な掌で無乳/美乳/微乳の言葉三角形の中央にある彼女の膨らみとの懇談会。挨拶のない突然の座談会と座禅解。無碍に突起と引き回す行為に,撫で回す行為に目的などない。彼は一言も発しない。暖炉の火を灯すこともない。笑う事も。感情を下水路に捨ててしまった下衆色の手指。

『嗚呼/嗚呼/嗚呼』愛妻の右胸が見えぬか
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』君の妻の左胸が見えぬか
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』灼熱男の指先が掛かり
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』引かれ弾かれ捕われ
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』過去世まで遡る快楽に酔い
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』右往左往そして縦横無尽
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』見事屹立した突起を見ておけ
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』逆側の八重歯で噛んでやる

 開放された鉄扉と畳部屋の温度は均衡を保ち,ヘクトパスカルが正常な単位へと変貌を遂げる。ジュールであり振動数であり彼女が飲まされるのは彼女自身から搾取された蜜の味。密の味。診(み)つの味。貢(みつ)の味。

 深夜帯と早朝の継目(つぎめ)のような時間帯。何もかもが不安定な時間帯。死艦隊は波間を漂いつつ目標の緯度経度を探していたが直前に鵺(ぬえ)に拿捕される。美姫の夫も同様で,幾つかの不審な点と文字羅列の中に或る男からの英文字を発見するが理解ができない。取り敢えず冷蔵庫の中のロールキャベツを電子レンジで加熱する。マイクロ波が何故それを温めるのかを知らぬまま。便利だろう。便利だろう。便利だろう。便利だろうよ。悲しいバックコーラスが流れる早朝のニュース番組を見てそれを喰うがいいさ。

『宇/宇/宇』瞑った目を見開かせてやろう
『宇/宇/宇』寒い部屋の隅に飾っておいてやろう
『宇/宇/宇』君も知らない彼女の情報の全てを
『宇/宇/宇』敬礼の反ベクトルの半眼で見るがいい
『宇/宇/宇』鯨の如く潮吹き暴れる彼女の姿を
『宇/宇/宇』此の男が今から録画してくれる筈だ
『宇/宇/宇』君に送った文字羅列を悪戯だと思うか

 夫にとって美姫は宝物だった。息子も同じく。『基本を大切にする』それが一家のマインドセットの根幹であったしスローガンでもあった。人並みで平穏な家庭の絵を皆で描こうと決めていた。令和に帰属する便利な魔法は常に右手に携帯していよう。早朝の公園で瞑想している変な輩(やから)には近づかないでおこう。其れでいい。其れでいい。残念だが其れが正常だ。

 現在進行形の遠い戦争を眺めていよう。眺めるだけなら炎は此方まで来ないのだから。お金は使う事よりも貯める事を意識しよう。多分物価高騰は止まらないだろう。暫くの間。何故かは理解できないけれど。きっと水面下で何かが動いているんだろう。でもそれを動かしているのは自分じゃない。真理なんてものは所謂,偉い人が考えて討論してくれているんだ。今の生活に間違いはないだろう。都度ゝの問題には都度ゝ解決していくしかないんだ。医者の言う事に間違いはないさ。血圧の薬を飲みながら彼はそんな朝を過ごす。妻とは対照的な早朝珈琲の味。

『葉/葉/葉』瞑った目を開かせてやる
『葉/葉/葉』はきと見えるやうにしてやる
『葉/葉/葉』早朝には刺激が強すぎるかな
『葉/葉/葉』折を見て君に暗号化して送ろう
『葉/葉/葉』無知の鞭では解凍できぬ
『葉/葉/葉』三重色の鍵とともに妻の痴態を

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