《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

深爪

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『がり/がり/がり』骨の削れるような音が響く頭蓋骨の中。蟲達は脳内の至る処で口を開け広げ目を見開いた。因みに俺は昨日,海老名駅から程近くの川辺で彼女の陰核の輪郭を割いた。其の事前写真なのか事後写真なのか忘れたが,折角最近手に入れた技法の一つとして前書きに残しておく。(※多分何時か消す事になるが戯れだ。いいだろ。)…花弁よ咲き誇れ。何処ゝまでも広く広大無辺な地を求めて。花弁と対成す獣の牙よ尖れ。もっと太く。もっと太く。血流を一手に引き受けて巡り巡る氣となり,血となり,水となれ。意識よ深く深く,誰よりも何よりも深く,探知できぬ筈のものを探知しろ。其れが俺が本当に必要としている世界線だ。

『がり/がり/がり』俺の爪は一体何の為に付いているんだろう。俺の爪は。俺の爪は。楽器演奏の為に付いているのならばこんなに深爪はしない。君を抱く行為にとっての不純物であるし,友人の肩に寄り添うには硬すぎる。固すぎる。過多(かた)過ぎる。

 我内に潜む最も険しい目をした獣に出会いたいんだ。極限の集中力と研鑽と何処までも広く響く声を持った獣に出会いたい。此処は涅槃図/此処は涅槃図の中。そして見て欲しいのは,自己氣と事故キーの混合色。言葉尻に殆ど意味なんてないのさ。長い長い物語は只,一人,貴女に宛てた恋文の続き。11年前からずっとそう。『貴方は変わったわ』と君は言う。其の反面で『でも根幹は全く変わっていないけれど』とも。

『がり/がり/がり』爪を研ぐ音が聞こえるならば挙手を。無音の者も同じく挙手を。右手はしっかりと垂直に挙げてくださるやうに御願い致します。此れは禁断のアーサナにして/奴隷開放のポーズにして/閉局した奉仕局の魔法の一部/滾る男の性を消火(しょうか)せず昇華(しょうか)させる唱歌(しょうか)也。

 『がり/がり/がり』深爪。深爪。そうか。◎◎山の崖下で起きた出来事を思い出した。ひょんな事から崖の下方へ懸垂降下した俺は瞬間,「しまった」と思った。得意な筈の回収を前提とした懸垂降下の設定(セッティング)で降りてこなかったうえ,ザックの中には予備のザイルが無い。時刻は午後四時。日が暮れる。山時間(やまじかん)は平地のそれよりも三時間は早いと見込んでいた方が良い。何時だろうか。北国末端で発生した大規模な山岳遭難の遠隔指揮を執った自分に酔いしれていたんだろう。確かにそう。飲めないドーパミンに酔っていたんだ。未熟。未熟。未熟。まだまだ。俺はまだまだ未熟者だ。だからこんな目に遭うんだ。明日は我が身という言葉/しかと胸に刻んでおくこととする。

 『がり/がり/がり』底の底まで到達したならば俺の現在地は緯度経度不明な場所に違いない。山岳救助隊は来れない。此の場所に到達するには特殊な犬を使うしかないが奴等は下りに随分と弱いので無理。何故,知っているか。アカシック・レコードじゃあない。只の体験談だ。自力で登るか…無理だな。自力で下るか…それも厳しいな。試した事もない草編みザイルで降りるか…それも明日まで何とか命が保てばという前提の話となるが。※翌日早朝に何とか無事に下山致しました。
 
  爪がずたずたになっており血液がブーツまで飛散していた,が,その痛みを知るには随分と時間が必要だった。脳内物質。闘争/逃走ホルモンの発露は面白い。此れが生きてるって事かな。違うかな。嗚呼。もっともっと死に近いえげつないも体験も沢山ある。友達になろうぜ。贈り物も在る。とびきりの女を紹介してやるぜ。此のプラットフォームの前書きに置いておいた彼女の足を一緒に舐めよう。全ては経験だよ。綺麗な足にきっとびっくりするに違いない。何故って。みんなそうだからさ。

  俺は相当,稀有な性格らしい。高待遇のセッションに誘われたが向上に繋がらないので断ったのが結構最近の事だ。◎◎◎◎◎…はっきり言ってつまらない。Instagram…見る気がしない。体験じゃない。虚構だ,あんなもん。美辞麗句は止めてくれ。そんなもので誘われる安い男になる位なら,今直ぐに死んでやる。さて此処で一句。『人生は如何に生きるかではいぞ。如何に死ぬるか探す旅也』稼いだ小銭は俺が涅槃で取り上げてやる。意味の有(あ)る或(あ)る三文銭でしか三途川は渡れない。何で知っているのか?しつこいな。全ては経験だと言っているだろ。ちょっと待て。噛みつくな。困った奴だな。でもそういう奴は好きだぜ。

『がり/がり/がり』
『がり/がり/がり』
『がり/がり/がり』

何で俺はこんなに深爪をするんだろうか

『がり/がり/がり』
『がり/がり/がり』
『がり/がり/がり』

7月1日。
眠れない夜になるな。
そんな氣がする。

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