《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

蟲の操舵室

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 『独り芝居だな。』骸骨達の宴は温度を増す。湿度を増す。酸素が薄くなる。標高は然程高くない筈なのに。周囲の様相を無視した種々の蟲達が騒いでいる。『鞭打ち刑の次幕は字幕つきで頼むぜ。期待してる。』見分者達の態度は緩く緩慢で怠慢であり,未完の蜜柑は嘲笑し長床に寝そべり自慰に耽る。同絵図に精神的な脂肪が乗っているのを確認した執筆者は万年筆を千年で廃棄する事に全面同意。

 『二等兵は黙って見ていろ。』そんな夢を見た昨夜を思い出す。成程。思い当たる節がない訳でもない。低音で厳しい口調を発していたのは峡間時代の自分自身か。動かない者はそのまま動かないで居ろ。折角の花弁が其処に咲いているのに触れないままでいるのは果たして善行なのか。白熱した議論,大きな大きな疑問符の残渣。

 「死闘性を求める心」此れは生存戦略の中で我々に残された反逆の狼煙。漢を昂らせ/更なる漢にする政の生成言語。成程。思い当たる節がないわけでもない。脳内中枢軸の目貫通りには春華が残っている。紫陽花も咲いている。近隣の公園にはバッハの音階に揺られつつ/突然の豪雨に困り顔の徒歩者が帰路を失い泣いている。泣いている。おおいに泣いている。何故/泣いている。何故/泣いている。人は家に帰るのではない。人は人に還るというのに。

 『二等兵は黙って見ていろ。』真の統制と統率を求めるなら自然に委ねるのが最も強力な手段であることに間違いはない。闇の歴史書にはっきりと記載されている事を識者は識っている/そうだろ。星の角度から暦を計算する事にも長けている。超長期で周遊する銀河の向こうで螺旋軌道を描く幾つもの輝きが在る。嗚呼/嗚呼/嗚呼。想像補完ではなく現実主義の証建てとして涅槃図に記したいと願う獣が一匹/居る。目を強く瞑ったまま。瞑ったまま。言葉の粒は中空を駆け虚空に至り雨粒と一つになりたいと言っている。細胞が其れを求めている。叫んでいる。

『嗚呼/嗚呼』数匹の蛔蟲がざわつく耳元
『嗚呼/嗚呼』現を抜かさない蟲の演舞
『嗚呼/嗚呼』耳朶の周囲に響く音の冠は
『嗚呼/嗚呼』何処にも属さぬ本能のみの協奏曲

『嗚呼/嗚呼』先へ急ぐもの/後方で待機するもの
『嗚呼/嗚呼』中庸の立場で賢者を気取るもの
『嗚呼/嗚呼』全てが気味の悪い黄身を射出し
『嗚呼/嗚呼』耳介の内部へ旅に出る

『宇/宇/宇』現に件の蟲は居ない
『宇/宇/宇』此処は涅槃図の中
『宇/宇/宇』此処は涅槃図の中
『宇/宇/宇』誰の脳内領域なのか探ってみろ
『宇/宇/宇』量子力学への探求心が騒ぐだろ
『宇/宇/宇』此の脳内物質の結合状態は
『宇/宇/宇』執筆者と何ら変わらぬ相似図形
『宇/宇/宇』もっと大きな誰かとも双児の如くで
『宇/宇/宇』古今東西の詩人とも大差はない

『宇/宇/宇』篩(ふるい)に掛けて欲しい
『宇/宇/宇』時間の篩で真偽を問おう
『宇/宇/宇』誰かが天動説を運んでくる
『宇/宇/宇』誰かが地動説を運んでくる
『宇/宇/宇』両面テープで磔にされた理論
『宇/宇/宇』両手に物を持つには弱過ぎて
『宇/宇/宇』両脚を同時に大地に指せぬ我等
『宇/宇/宇』無造作な夢の轍に咲く双樹は
『宇/宇/宇』早熟故,総受苦し散る運命

『葉/葉/葉』灼熱知らずの彼岸花
『葉/葉/葉』深夜の茶会に避難しな
『葉/葉/葉』不必要と一蹴される石炭殻
『葉/葉/葉』本件理由は皆,重々承知だから
『葉/葉/葉』食繋ぎに職渡りする隣家
『葉/葉/葉』塩気のない生肉は生には不十分
『葉/葉/葉』娘の肉には罪の味付けを九人分

『庵/庵/庵』泣き咽び,もっと怯えろ
『庵/庵/庵』いい声で鳴くじゃないか
『庵/庵/庵』いい声で泣くじゃないか
『庵/庵/庵』此の庵に相応しい声だ
『庵/庵/庵』鳴けぬ様に成る迄,続けやうぞ
『庵/庵/庵』脳内の細部迄,蟲達を詰め込んでやる

『庵/庵/庵』未だ舞台は外耳に過ぎん
『庵/庵/庵』蟲部隊の到来が心地良いのか
『庵/庵/庵』恐怖/畏怖/台風/家事/火事又は舵
『庵/庵/庵』其の操舵室の所有者を恨みな

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