《瞑想小説 狩人》

瞑想

文字の大きさ
上 下
429 / 600
交差

涅槃図…淫靡車

しおりを挟む

::::::::::::::::::::

 淫靡車(カート)の中から幾つかの淫具が選定される。『俺は此れがいい』『俺は此れがいい』『ならば俺は此れにする』緊縛娘は次幕の為に麻縄から放免されるも,すぐさま鋼鉄椅子に整えられた。

 同椅子に着座せよと促す精密機械のやうな動きをする彼等に抗(あらが)う術は無い。鞭打ちの痕が痛みを伴う。半霊半身の彼女は痛みを興奮剤として享受するまでの成長を遂げていない。胃内には反逆しそうな憎悪と嫌悪が在中していたし/3丁目3番地の夕陽は登らず沈まず。暗黒は暗黒のまま。暗闇は暗闇のままで其処に在る。

 『おねがい…やめ…て…』彼女は椅子に着座する。正確には座らされる。涅槃図に完全な自由といふものは存在せぬ事を証明したい誰か。彼等には彼等の性(せい)があり,生(せい)があり,精(せい)があり,悽(せい)がある。元々,慈善事業の愛好家であり愛妻家であった骸骨はぼそぼそと『あんなもの嘘っぱちだぜ。陰陽(いんよう)から引用して言うが物事に完全な善はなく完全な悪もない。』
 
 『さて,香り高い飲用(いんよう)水が身体に良いと妻が確固たる表情で言っていたのを思い出す。しかし其れは嘘だった。とても残酷な嘘だった。悪意のない嘘だった。正確には無能と無知から発せられた言葉だった。水毒の闇は深く果てしなく長い拷問だった。何よりも悪意のない拷問程,質の悪いものはない。俺の身体の隅々を蝕み腐敗させていった。其の成れの果てが此の姿という訳さ。』そのやうに。そのやうに。ぼそぼそと言う。しかしはっきりとした声だった。

 『御勘弁…ください…もう…』娘は懇願するが聞き入る耳を持つ輩は皆無。怪夢(かいむ)に酔う陰の者共は右手にそれぞれが淫具を,左手にもそれぞれが淫具を持つ。海霧(かいむ)の中に漂う娘の中央突起及び左右突起を狙う海獣(クラーケン)。骨達は娘の周囲に集合し,性を極めんと羅針盤を操作し甲板に『鬼喜』という旗を掲げ半眼で其れを見る。

 鈍く飛散する『がち/がち/がち』といふ鈍い音。音階は骸骨達が持つ数々の淫具から放たれる。或る者は男根を模した直進性(ちょくしんせい)と触診性(しょくしんせい)の高い淫具を。或る者は洗濯鋏に近しい形状の淫具を。或る者は暗闇を何処ゝまでも照らす蝋燭を。或る者は継続性を持たせる為に九尾の鞭を。或る者は『嘘嫌いな蟲』を両手に集め妖精の尖った耳元に近づける。

 男根を模した淫具は永久機関を宿している。『3/6/9/18』という数字(ナンバー)が前面にも後面にも側面にも見分できる。種々の色合いを持つ同物体を彼等は「狂った球体」と呼んでその回転方向の自由度や振動の強度を競い合い楽しんで居る様子。居合い切りの名人は彼女の非愛色(ひあいいろ)を翡翠に染める。そんな淫具。相思相愛の仲睦まじき夫妻を引き裂く淫靡な記憶。此等は小鳥を泣かせる為だけに作られた淫具。

 『い…い…い…』『嗚呼…嗚呼っ』耳を引き裂く様な音がする。彼女の耳朶(みみたぶ)に元少将の上昇志向が貫通するのを見る。其れは奴隷色の輪。正確な円形ではない歪な形状をした輪(リング)。天狗の面を着装した骸骨の少将は『大事の前の小事である。生死に繋がる程ではあるまい。』と一言。※同人物は後に中将となる。

 『駄目/駄目/駄目/嗚呼…』鞭打ち程ではないにしろ神経回路を直撃する尖った痛覚が発生し拡大する。圧痛(あっつう)と疼痛(とうつう)と竜痛(たっつう)が貫通する耳朶(みみたぶ)。同箇所から「ぬめり」のある液体が垂れるのが見える。其れを全般的に舐め取ろうとする彼等が見える。其れは甘露であり快楽中枢の管路。此処は涅槃図/此処は涅槃図の中。

 『はじめやうか』誰かが意味深な言葉を発する。彼女は冷徹極まる緊縛椅子の虜となり,幾つかの錠前(カギ)と鈎で固定され更に自由を失った。洞窟は仄暗く湿度と熱気により二酸化炭素分圧が異常発達している。

:::::::::::::::::::
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...