《瞑想小説 狩人》

瞑想

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涅槃図…麒麟の光

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 淫靡車は緊縛娘の傍らに運び込まれる。数名の骸骨が其れを押している。同車は三段形状であり色は鈍銀と偽金の丁度中間といった表現が妥当。下方から随時見分する脳内の旅は楽し。ヘルマン/ヘッセが準備した文章と何時かの文鳥が歓迎できなかった歪な車輪が4つ在る。

 最下段には非常に直接的な責め具が所狭しと並ぶ。彼女が奴隷市場といふ地獄の最下層で味わったものに近い存在達だ。様々な直径で振動するヘッドと永久機関を具備する狂った球体達。彼等は人体車輪の象徴色と反ベクトルの線路を孤独に歩む狐。

 数々の突起鋏が下段に華を添え彩り豊か,花壇の様相。鋏は大小様々なものを咥えられるやうになっており操作盤には「強」「中」「弱」のほか「叫(きょう)」「蟲(ちゅう)」「寂(じゃく)」。更に「供(きょう)」「酎(ちゅう)」「迹(じゃく)」と誰もが理解る大きな文字で記載されている。用途不明なペンチが在り/何かを轢断する事を目論む鋭利で俊敏なニッパーに近い形状の工具が在る。

『宇/宇/宇』鞭打ち刑罰は続編を求め
『宇/宇/宇』霧の物語は最終回を遮断する
『宇/宇/宇』其れは誰にも見せられぬ恋文
『宇/宇/宇』記載文句/文様/図形
『宇/宇/宇』車輪の存在を識らぬ常識患者には
『宇/宇/宇』悟れぬ無限図形と反物質の設計図
『宇/宇/宇』其れは必ず反発を産む外殻になる
『宇/宇/宇』結末文字は外廓住まいの俺のもの
『宇/宇/宇』偕楽園の坊主には渡さん/絶対に

『宇/宇/宇』彼女は口上を許されず口紡
『宇/宇/宇』悲哀と非愛/打痕と駄痕
『宇/宇/宇』腰椎付近の鞭痕に滴る血痕
『宇/宇/宇』吸気と呼気の交換を忘れた舌根
『宇/宇/宇』涅槃図で魂を嬲られる昨今
『宇/宇/宇』深く深く刻まれる悦楽の抜本
『宇/宇/宇』嬲られ晒される妖精村の末孫

『宇/宇/宇』六本木の倶楽部に入社した女は
『宇/宇/宇』其処で男を嬉々とさせる操法を学ぶ
『宇/宇/宇』悲しみしかないな/酷いもんだぜ
『宇/宇/宇』魂の通い合わない一方通行の舌から
『宇/宇/宇』流れ落ちる涎ほど惨めなものはない

 其の床面は自分でしっかりと拭いてくれないか。性欲と贅肉とで汚れきった床の汚れの事を言っている。地べたに這いつくばれ。土下座のアーサナをとれ。其処に乳白色のボウルを置いてやる。舌を出せ。舌を出せ。
 
 『何だ。此の程度の恐怖で竦み上がってやがる。それでも男か。それでも男か。情けない。』呼吸を止めてみろ。自らの意思で石に苔が生える迄,呼吸を止めてみろ。医師が停止命令を出すまで意思と意識を保ってみせろ。
 
 其の程度か。情けない。男か。それでも男か。令和に生きる男はそんなにも情けないのか。ふざけるな。平和と安穏常識の奴隷にお似合いの生気の無い眼で一体何を見てきた。勝負をしよう。俺と勝負をしよう。開脚の角度なんて判り易い勝負じゃなくていい。覚悟/覚悟/覚悟の勝負をしよう。お前の最も得意なジャンルで構わない。

 3ヶ月後の満月の夜。立会人を66人つけて勝負をしよう。内容はお前が決めていい。『何方が長く女性の陰核を舐め続けられるか』『何方が早く小指の骨を砕く事が出来るか』『何方が死神の口吻を先に享受できるか』此等を通じて俺と凍土のオーロラを見に行こう。其れは光。死へと誘う麒麟の光。
 
 『嗚呼/嗚呼/嗚呼』気温差と気圧差に由来する網膜の反射光。其れは凍土の光に似たり。何度か繰り返した決まり文句を此処に付す。『死神は鎌を持った髑髏の姿をしてはいない。女だ。女。とびきりの美女。AIで生成した集合的無意識と中二病の顕現たる描画より美しい黒服の女。彼女の唇は魂の隙を何時も狙っている。死神は何時でも全員の背後で行動を記録している』『俺が幼少期に亡くした指先の痛み。其れは幻。綺麗な夜空と天空に舞うオーロラ。此れも幻。我々を死へと誘う麒麟の光。

 『嗚呼/嗚呼/嗚呼』現実と非現実の狭間に揺れる風見鶏。『嗚呼/嗚呼/嗚呼』其の中間に地軸に似た桃色の裂け目。『嗚呼/嗚呼/嗚呼』娘の股座から垂れる雫の量に満足する骸骨達。痛みは快感へ/快感は恍惚へ/恍惚は名前を忘れられた峠を越え次の山域を目指す。其の床面に這いつくばり舌で舐め取るのは贅肉と怠惰肉の患者に任せてしまえばいい。

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