《瞑想小説 狩人》

瞑想

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涅槃図…緊縛娘は悲哀色

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『嗚呼…嫌…』彼女は錆びついた鎖に結ばれた。右手に緊縛拘束具が装着され延伸する鎖の放つ色は鈍く淫靡。左手も同様に拘束され博徒の餌食となる。

 鎖は可愛らしいお顔の造形の一部を掠上方に展開される。その角度を恨めしく思ふ表情が射抜くが中空へと矯正される腕に力はない。骸骨達は立ちんぼ娘の各突起に触れ/屹立させ/充血させ/重欠損を目論見 『苦・苦・苦』と笑う。

『駄目…嗚呼…』意思の疎通が出来ぬ石が運び込まれる。カートを押す雄の胸椎は見事なハート型に刳り貫かれており生前の業(カルマ)の酷さを体現している。

 巨石は名うての石工職人により加工されており、高さ・幅・奥行きが同一で666ミリメートル程度。重さは666キログラム程もある花崗岩と表現すればいいだろう。いずれにしろ彼女の可動範囲を制限するには十分な重さだ。

 同巨石にはカラビナフックの接合部が幾つか設けられており、生半可な力で轢断できぬよう工夫されている。小さなベッドに見立てられた石に緊縛され隷奴に近獏(きんばく)される娘の姿が痛々しい。

 『がちり』『がちり』『がちり』殆ど同時に3つの音が洞窟を揺らす。緊結具は涙色を更に悲しくさせた色合い。鈍重なる巨石の鎮座に彼女の動きは九割九分九厘九毛九糸まで制限される。残りの一糸で何に報いる事ができるだろう。

 『嫌…嫌…』娘の言葉に『だろうな』と石火(せっか)の執筆者と雪華(せっか)の鍛錬者がひと笑い。脳裏と網膜最下段に奴隷市場の強制緊縛浣腸絵図が再来訪する。涅槃図は地獄に似たり。エントランスに至極の滴り。カーテンレールのない洞窟に捕縛の湯煙。

『不/不/不』御止しになってくださひ
『不/不/不』追い詰めないでくださひ
『不/不/不』縛りつけないでくださひ
『不/不/不』御求めものは身体ですか
『不/不/不』御求めものは肉たる私
『不/不/不』奴隷市場と変わらぬ所業
『不/不/不』涅槃図の踏破は夢向こう
『不/不/不』濡れに濡れた枕の向こう

『不/不/不』舐められる事
『不/不/不』舐められた事
『不/不/不』甘噛みされる事
『不/不/不』甘噛みされた事
『不/不/不』きつく縛られる事
『不/不/不』きつく縛られた事
『不/不/不』突起に触れられる事
『不/不/不』突起を触れられた事
『不/不/不』陰核を見られる事
『不/不/不』陰核を見られた事
『不/不/不』監視対象に肌を晒す事
『不/不/不』鉗子対傷の歪な歪

『不/不/不』半肉体でも恥ずかしいのです
『不/不/不』反霊体でも恥ずかしいのです

『苦/苦/苦』嫌・むしろ逆でしょうか
『苦/苦/苦』魂が辱められる事
『苦/苦/苦』魂の造形を知られる事
『苦/苦/苦』突かれ改造される事

『苦/苦/苦』此れこそ真の恥なりや
『苦/苦/苦』此れこそ麻琴の恥なりや
『苦/苦/苦』此れこそ魔古都の技なりや
『苦/苦/苦』そんなに見つめられてしまへば
『苦/苦/苦』密の蜜が溢れてしまひます

 各神経が圧迫感に襲われる。特に首筋周囲が酷い。そのざわめきたるや団子蟲が神経回路の内部に到来して無数の足で這っているかのような感覚。

 光の届かぬ洞窟の内部にしか存在し得ない蟲が這う。彼等は螺旋構造を理解する涅槃図の守護者であり異物と万歩計を嫌う花。彼等は健康を害す事を好み自虐的で嗜虐的な趣味趣向。

 先ずはシナプスの一本ゝに取り憑き娘の反応を見聞して作画に勤しんでいる。『此れは上等な肉であるぞ。楽しみだ。陽性に属する妖精。反物質を喰らわせ陰の最深部へ引きずりこんでやる。』

 『喘げ。悶えろ。峠を越えろ。魂の絶頂を電波に乗せ伝播させろ。そして其れを喰わせろ。喰えば我々は増々強大な力を持つ事ができる。そしたらまた虐(いじ)めてやるから/よ/よ/よ。』

『そんな……』彼女は捕縛され四肢を完全に固定され/噛まれ/揉みしだかれ/晒される。凡例のない半霊体の搾取に身を投じる娘の涙は悲哀色。

此処は涅槃図/此処は涅槃図の中。

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