《瞑想小説 狩人》

交差

ストア学派と嘘まみれの現実

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　結局のところ其の娘は深夜帯の排泄作業を入力と同等量完遂してしまった。望むと望まないとに拘わらずそうせざるを得なかった。排水／排除／身体的な自然の流れに身を委ねるしかなかった。開放された門戸は全員のお目々に披露目られ／滴る液に依り濡れた床面が其処に在る。

　『嫌…いや…もう…』

　彼女の同発言を聞いて色服男は笑いを堪えられない様子。シリンダーの２本目の準備を急がせる。『恥ずかしいか』『皆様がお喜びであるぞ』『娘／貴様の排泄作業を御覧になって』『皆様の中央物が屹立しているのをとくと見よ』『此の夜会の皿に乗るディッシュと成り給へ』

　従者が２本目のシリンダーを満たす。内部の茶葉は先刻よりも毒々しい色合い。戦時勧告のやうにレイディオから流れる敗北宣言を耳にする彼女…同夜会に何度の注入歌が歌われるのかを楽しみにしているのが閲覧者であり市場の王であった。

『嗚呼／嗚呼／ああ／だめ』

　２本目のヘッドが彼女の肛部を掻き分けて内部侵入する。大きな硝子細工は二人ががりで持たれており／断罪の為の準備は再度整ったやうだな。

『……！！！……！！！』

　挿入される液体。直腸を埋める圧力と羞恥の園には見事な花が咲いている。彼女の両親が此の姿を見たならば、片方は卒倒しもうか片方は評議会に『死のセネカ哲学』を提唱するに違いあるまひ。

　直腸は／大腸は／小腸の襞（ひだ）は圧力液に被弾し屈し、建国の儀式に相応しいイザナミとイザナギの喧嘩の様相を呈している。何方かの支配が強ければバランスは崩れ再度崩壊する事になるのだらう。しかし搾取は一方的であり／話し合いなどといふ四階級平等宣言は誰も此の場に相応しくないと一笑に付すのであった。

『襞(ひだ)栓を持ってこい』
色服男は言った

『口腔安定剤を持ってこい』
同じ男が言った

　二本目の注入作業は一本目よりも早く済んだ。「飲み込みが良い」といふ表現でその身体を賛美してやらう。男は先と同様に苦悶と羞恥と紅色の頬に染まる彼女に満足がいかない様子。もっと君の苦悶が見たいのだ／もっと君の苦悶が見たいのだ。よっって短歌を教示してやらう。悪意と嫉（そね）みが九割九分を支配する鎮魂の歌を。

かごめかごめ
かごの中の鳥は
５つで生まれて無知を識る
何も知らない事を識る
其処に鞭打ち／音三度

かごめかごめ
かごの中の鳥は
綺麗に生きたいそう願い
女王に歴史を聞いてみる
暗黒の中に葬られたもの

かごめかごめ
キュリーはズブズブ
先ずは此処から
皆様どうぞ
知って下さひ

かごめかごめ
ひととひととが争へば
民族衣装が剥ぎ取られ
悲しい涙の物語
初戦の敗北／世の闇ごとへ
所詮詭弁さ／嘘ばっかりだ

かごめかごめ
キュリーの生涯
核に捧げて弥勒三昧
皆に読ませろ
電気の伝記を

かごめかごめ
かごの中の鳥を綺麗にして
七色の美しさで魅了させやう
其れが魑魅魍魎より汚い事は
選ばれたもののみが知っていればいい

かごめかごめ
しかし／そろそろ気づかんかえ
飾られた望楼よりも高くから
見下ろす平野は汚染が酷く
中和と半減に随分時間がかかる
そんな嘘八百に付き合いきれん

かごめかごめ
議事堂に集合する友人の中に
随分と博識なものも居るんだ
彼の主張は危険なものとされ
彼の主張は危険なものとされ
大多数を占める馬鹿の集合に
『とあるいけなひもの』を飲まされ
虚ろな会見を強要され
彼は大人物の目論見とおりに失脚する

かごめかごめ
細胞から培養された未来への希望
其れを大きく疎んじた勢力がある
金銭のルールを破壊しかねないもの
不健康な肉体と病院の関係性を崩し
全員に鮮やかな未来を見せる希望の光

かごめかごめ
小さな箱庭で遊んでいれば良いのだ
なかった事にすれば済むんだ
人身御供に差し出された才媛は
書物の印税で終身左遷を命じられる
悲しい出来事だ／悲しい出来事さ

かごめかごめ
SNSなるものが支配の雄叫びを挙げる
スワイプとクリックとスクロールで
偽りのドーパミンを得させやう

かごめかごめ
脳内物質の稼働による罠を掛けやうぞ
一日中／電気の悪魔に寄り添うやうにな

かごめかごめ
『使えるものよりも
　使われるものを多くし
　精神疾患者を多数排出しやう
　どうせ脳内の獣には逆らえぬ
　ひとの中の調教師の存在など
　とるに足らない薄っぺらなものさ
　偽りの檻に閉じ込めてやる』

と／誰かが言っていた
東洋島国で誰かが聞いていた

彼は不可逆の存在を取り敢えず
自分で試してみたものの／やはり虚偽であり
勇気ある後退を選んで別経路へ移るといふ

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