《瞑想小説 狩人》

交差

私は和多志に戻りませう

：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：

蜘蛛の手足は見事な動き
何（ど）れが手なのか解りませぬが
蜘蛛の手足が絡みゆくのよ
何（ど）れが足かは解りませぬが
下表に記した性感帯に
彼は辛子を塗るのを止めない
彼は辛子を塗るのを止めない

『嗚／呼』小指を絡めてお願いどうか
『嗚／呼』私を涅槃へ連れてって
『嗚／呼』刹那逡巡／見事な指先
『嗚／呼』貴方がお持ちの剣を振るって
『嗚／呼』切断くださひ一刀両断
『嗚／呼』節談くださひ弥生の頃に
『嗚／呼』私を涅槃に導いて
『嗚／呼』肩甲骨から鎖骨にかけて
『嗚／呼』素敵な辛子を塗りつけたなら
『嗚／呼』腰を振り振り大人の嗜み
『嗚／呼』和多志は貴方／貴方は和多志
『嗚／呼』ひとつになれば非凸（ひとつ）と成れる

もぞもぞ辿れば／ほどほど逝くの
肩甲骨が感じるの
鎖骨からもね伝わるの
『和多志』といふ字を御覧になって
私は私／貴方は貴方
私は和多志／御気分如何
ほどなく軽やか円舞曲

『嗚／呼』蜘蛛は大きな口を開け
『嗚／呼』糸のロープを天井に吊るす
『嗚／呼』聴衆は歓喜の声を挙げ
『嗚／呼』其れに登ろう／登ろうと
『嗚／呼』我先急ぐ惨めを見ろよ

『気』に付した☓を数えて欲しい
其れはおおひなる罰
元々私は和多志であります
『氣』つけに如何／幻惑巫女の
華麗な舞いをどうぞ御覧に

小鳥が何処かで鳴いている
何かが違うと泣いている
文字が違うと泣いている
時間が違うと泣いている

小鳥が何処かで鳴いている
歪んでいるのを其の目で見てる
私は和多志／貴方は如何
貴女も和多志／平行目線で

みつめてください
みつめてください

お願い／抱いて
優しく優しく
お願い／抱いて
もっと激しく
社制に射星の制限が在り
コンプライアンスで生きるのならば
此の世まほろば
日々は泡沫（うたかた）

小鳥は飛び立つ事／忘れ
粘着液に捕らわれてしまふ
其処にあるのは只の欲望
風の時代に付された制限
下げぬ振動／此れは提言
社風に飲まれる事なかれ

『嗚／呼』俺は湖畔で彼女を抱いた
『嗚／呼』俺は湖畔で彼女の心を
『嗚／呼』俺は湖畔で彼女の身体を
『嗚／呼』ひとつになろう／ひとつになろう
『嗚／呼』元々そうさ別じゃないのさ

氣はいずれ力を取り戻す
氣はいずれ本領を発揮するだらう
氣とは事物の最小単位
氣とは事物が纏った力
希望の光／渇望の土地であり未踏域

雰囲氣って言葉があるじゃないか
俺は湖畔で彼女を抱いた
若干キザな言葉を吐いて
手には勿論『究極の心と身体』
未読の書物／幻の書物
不変且つ普遍かつ平行目線の書物
知恵の全てが其処にある／見よ

『嗚／呼』軽やかにダンスを踊りなさい
『嗚／呼』恍惚の表情をもっと
『嗚／呼』老僧は蜘蛛の動きに酔いしれる
『嗚／呼』日溜りは弥生の弱点を知り
『嗚／呼』木曜日と金曜日を区別する刹那
『嗚／呼』円の四肢をひとしきり愛で
『嗚／呼』仄かな劇場に案内したのち
『嗚／呼』微動だにせぬ美貌に酔いしれる

円形のホールで蜘蛛が踊る
助手の居なひボールが放たれれば
其れは見事なアールを描く
其れが高々／アーチを記し
洞窟に向かう旅人のトーチを変色させる

『赤から橙／橙から黃』
『黃から緑／緑から青』
『青から藍／藍から紫』

白濁娘は下半身を蚕にされ
懐古の太鼓の音を聴く
同振動は最古の猟虎の目を醒まし
事故の事後に結ぶ暗黒契約について
東に向かって祈るのがヒントだといふ

：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：