《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

北半球の渦は云々

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『宇/宇』蝙蝠が嬲る浅い夢の様な
『宇/宇』柔肌は紅潮し絶頂を告げた
『宇/宇』弓になった娘の頸椎は3番を中心に
『宇/宇』前後左右に揺さぶられ平衡感覚を無くす
『宇/宇』右手から蝙蝠の肉芽が体内に挿入り
『宇/宇』宵の明星に仄暗い陰影を付す也

『葉/葉』唇から漏れる吐息は雪よりも冷たく
『葉/葉』桃色の突起は綺麗に咲いて久し
『葉/葉』肥大した両突起に蝙蝠がキスをする
『……!』駿河湾に突如出現した渦は右巻きであり
『……!』真珠湾に潜む秘密は俺の知る限り左巻きだ

蝙蝠は彼女の右胸に舌先を這わせてみる。先ずはどの様な味がするのかを先端で転がし確認する行為を選択する。魔女狩り時代にも同行為は多々実施された。中世などという大雑把な括(くく)りでは具体性に欠ける奴隷狩りの歴史博物館を見事テーブルに並べ「前菜/メイン/スープ/その後」と分割して乗り越えてきた経験はこの様な時に役に立つ

蝙蝠はインターネット回路にも似た脳内シナプスで歴史の全部分にアクセスし情報を引き出す能力を与えられている。その松果体は松ぼっくりに似ており我々の所有するものよりも随分と大きい。彼に言わせれば『皆が無知なだけ』という事らしいな。故に歴史史実の螺曲(ねじま)がりも、同舌先は全部知っている

『嗚呼』…お見通しだぜ
『嗚呼』…此処が感じるんだろう
『嗚呼』…首を縦に振りな。小娘
『嗚呼』…少し強く噛んでやる
『嗚呼』…動くな/動くなよ
『嗚呼』…お前は小動物
『嗚呼』…捕われた栗鼠(りす)
『嗚呼』…何も知らぬ無知な小栗鼠(こりす)
『嗚呼』…大人しくしていな。此の俺が
『嗚呼』…世の真実のうちの一つを
『嗚呼』…お前の身体に付してやるから
『嗚呼』…『私は蝙蝠/紫の車輪』
『嗚呼』…『私は蝙蝠/藍色の化身』
『嗚呼』…『私は蝙蝠/迷路の出口にして』
『嗚呼』…『私は蝙蝠/入口でありαでありΩ』

舌先は彼女の桃色ベースを基点にして右回りに弄ぶ。螺旋状に絡まる蝙蝠の舌先は烏丸(からすまる)にさようならを告げたのち平家の御曹司の首を一撃で刎(は)ねた名剣のような切れ味を持ち、ゆうぐれ16時の彼女への「さよなら」のように優しくもあり、最近の洗剤よりも汚れを綺麗にする事に長けている

名医とヤブ医者の区別がつかないと誰かが咳払いを三度。『ごほ/ごほ/ごほ』妖精奴隷は一度目の咳で「今夜、自分を救いに来る者が居ないこと」を知り、2度目の咳で「明日以降もそうである事」を知り、3度目はそれが来世も続く絶望の轍への入口を目指す事を知った

突起を甘く噛んだり/右回り螺旋を描いて舐めてみたり/左回りに転じてみたり/三角形を上向きで描いてみたり/その対をなす図形を描いてみたり/蝙蝠の舌先は彼女を突(つつ)きながら時折、此の世界の成立要件のうち最も重要な情報を喋(しゃべ)り漏らすのだが聴衆は彼女の喘ぐさまに夢中であり霧中は深い霧の中、ゆへに誰もその意味を理解できないようだ。

『葉/葉』…その周囲を6人の責め手が囲んでいる
『葉/葉』…奴隷市場の御散歩は随分と長いようで
『葉/葉』…マゾヒスティックなイントロを奏でつつ
『葉/葉』…骸骨旅団が見たこともない楽器を弾く

『葉/葉』…マイナーコードとメジャーコードの半々
『葉/葉』…不協和音の中に美を見出すには
『葉/葉』…娘の美的感覚は損なわれ過ぎたようだ

『宇/宇』…『嘘をつくんじゃあないぜ』
『宇/宇』…『それは大罪であるのでな』
『宇/宇』…『何度でも達するがいいぜ』
『宇/宇』…『我らの奴隷としてしかと』
『宇/宇』…『尽くすがいい/働け/働け』

『何時…ま…で』…『命/尽きるまでだ』
『そん…な…嗚呼…』…『命/尽きるまでだ』

絶望感を携えた舌先に嘘は通用しない
お相手は6本爪の蝙蝠殿である故(ゆえ)

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