《瞑想小説 狩人》

交差

如月に花火を

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『何故わたくしを』…私は蝙蝠
『このような目に』…６本爪の蝙蝠
『これでは余りにも』…聞いてやる／何だ
『救いがありませぬ』…毛頭その気は無いが
『お願いが御座います』…聞いてやる／何だ
『もう御勘弁ください』…私は蝙蝠
『もう指先が痺れて』…６本爪の蝙蝠
『言う事を聞きませぬ』…此れは契約だ
『貴方の体液が私を』…私は蝙蝠
『満たしていくのが』…６本爪の蝙蝠
『嗚呼…わかり、ま、す』…もっと寄越せよ

大動脈を駆ける蝙蝠の体液が攫う
肺静脈に彼が住処を探している
同静脈の返し弁は見事に働き蝿を叩き
返却静脈を楽園にして先客を退かす

私の体液は何処にいくのだろう
私の体液は何処にいくのだろう

新規挿入されたものがあるのなら
当量、排出されるものがある筈でしょう
私は大それた咎人ではありませぬ
牧歌的に暮らす群羊と同じで御座います
妖精村／女王の第３子として生まれ
行楽日和の日々を枉駕しておりました
そう…危険な旅人が来訪したあの日までは

彼にスープを作ったのを覚えてはいるのです
しかし其処から先の記憶と慣用句は
既に消去されてしまっています／嗚呼／嗚呼

妖精村の門扉、南三里に倒れていた旅人が
此の市場の王様である事を知りました
人は騙して騙されて／戦って生きるのね
その欲望は暴虐の限りを尽くします
妖精たる私と蝙蝠様の睦み合いすら
此の世界の珍味とばかりに食すのですから

英雄色を好むという言葉を選別し煎じます
何処の誰にも理解できる様に／無知な私にも
此の狂った宴は終わりそうもありませんね
時間という概念を持ち出す余裕もないのですが
壁掛け時計は４時４４分で溶けて呼吸をとめた様で
動きそうもありません／動きそうもありません

蝙蝠様…私との体液交換に御満悦の表情ですね
皆様にもお尋ねしたい根本論が御座います
此の奴隷市場での私の存在価値は一体何なのです

…幻惑見事にシャングリラ
　紫色のシャンデリア
　１３星座／冬の星々
　嬲り獣とその関係者

…無意味に付する三点リーダー
　熱にうなされ見る夢心地
　羅針盤たるプレートコンパス
　酷いもんだぜ／きっと忖度(そんたく)

…穴があったら入りたい
　そんな恥などあるものか
　威風堂々／自由行動
　階級呼称と技術の盗用

『肩甲骨を動かしな』…意味がわかりませぬ
『立甲の状態にするんだ』…意味がわかりませぬ
『肩甲骨は唯一のすべり骨』…どういう事です
『そして鎖骨と繋がっている』…解剖学／肉体学
『鎖骨を惰骨とするか』…意味がわかりませぬ
『急峻を滑る自由骨とするか』…いい響きです／が
『由来と同等の下賤な骨とするか』…わかりませぬ
『狸の置物になるかを選ぶがいい』…わかりませぬ

私は物語の添え物に過ぎませぬ
祈り女様という清純乙女は何処に居るのです
狩人様という英雄殿は何処に居るのです
蝙蝠様は私にのしかかっておりまして
外には誰かの号泣の様な雨が降っています
花火の導火線は濡れていないのでしょうか
如月が春の訪れを待てず豪華な花火をあげました

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