《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

磁石

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物事及び意識の性質について触れておく
昨日(令和4年12月22日午前)の事…
折角天才と呼ぶに相応しい2名の画家と
接点を持つ事が出来たのだから,敢えて

::::::::::::::::::

刹那画廊の主人は桜の客を迎え
一通りの案内を終えた頃…
同客を松,桧,杉が三つ混ざった
混合木製テーブルの対面に着座させ
滑らか,かつゆっくりとした口調で語る

「引き合う力,惹かれ合う力
 …そんな話をしよう」

同画廊の主人は小さな
2つの破片を袋から探しあて
テーブルに綺麗に並べる

「……………………」

「…磁石について少し話しをしたいんだ
 …此れについて何か、知っている事は?」

「はい…磁石には…S極とN極があり
 互いに引きつけ合う…其の程度ですが」

「見事な回答であり解答である…怪盗まぐまも
 其の解凍された真解に2階で拍手をしている」

「…………(笑)……………」

「SとNの間には力が働いている
 其れは君の見解のとおり[磁力]と呼ばれるもの」

「…………………………」

彼の言葉は理知に富んでいる
彼の言葉に何故か惹き込まれる
返信に間髪が無い事も理由の一つ
そして何より彼の確固たる主義が一つ
コピー&ペーストを何より嫌う習性がある

高速の返信の間に誰かが入れ知恵をしている
そんな事にすら疑念が湧く程の回転の早さ
まるで自動書記の様だと桜は表した

此処では此れ以上の言葉は無粋
彼の低温かつ低音な言葉の羅列に
葡萄酒とともに酔ってみたくなる
身体は…弛緩させるのが一番
脳内の塵と地理…今は要らない
此処は名画座・刹那画廊

:::::::::::::::::

《S←……・……→N》

…SとNを引き離すと…

《S→・←N》

…くっつこうとする力が働く
 もともと、仲良しなのかな?

…それとも、もともと、
 1つのものだったのかな?
 引き離されて嫌がってる様にも
 見えるが,君はどう思う?

《S←……・……→N》

…SとNを引き離すと…

《S→・←N》

…くっつく
 何度やっても、同じ
 
…此処で精製される疑問は2つ
 同疑問符は万物を支配する
 [何故、引き合うのだろうか]
 [何故、何度やっても
 同じ現象が発生するのかだろうか]

…答えは単純かつ明快かつ老獪
 [そういうものだから]
 世界は其の様に成立している
 故に其の流れに乗りつつ
 其の流れに無理に反発せず
 其の流れの一部である自覚が
 おおひに必要になるという事だ

《S←…………・…………→N》

…先程よりもっと,強く遠く離してみる

《S⇒・⇐N》

…もっと強く引かれ合う
 何故?答えは先と同一かつ単純
 [そういう、ものだから]
 此の様な事を[物事の性質]という
   五行説も一緒さ,太極図も一緒さ
 其れは誰かが此の世を設計した時に
 完全なフラクタル構造として
 成立させたミクロとマクロの学問

《S←………………・………………→N》

…もっと強く,互いが意識できないほどに
 引き伸ばす…半ば,強引な力を加えて
 其の強引さは著者が一目惚れの女性を
 鍛錬場で口説いた時と甲乙つけ難い

《S       ☓       N》

…互いの磁力が届かなくなる
 互いを意識することが出来なくなり
 独立した存在になる…此れは悲劇だ
 此れはどの悲劇よりも悲しい物語
 シェイクスピアが生み出す悲劇より
 悲しい・悲しい・悲しい物語だ
 夏が一日で冬になる事よりも
 初雪に喜ぶ子供が次の日の庭を見て
 愕然とするストーリーよりホラーだ

…本当はSもNもなく
 両方の特質を備えた
 完全な存在だったのに

…互いの中心軸を失う両者
 其の本質を失い彷徨う量子
 
…Sであり,Nではあるけれど
 SとNはもともとのもの
 つまり[SN]という完全体では
 無くなってしまい悲哀に暮れる

…では,どうすれば
 元に戻れるのだろう?
 
…どうすれば
 もう一度貴女と,もう一度貴方と
 めぐり逢うことが出来るだろう?

 ::::::::::::::::::

「………………………………」
 
「…画廊の客よ,桜の客よ
 君の答は………如何に」

「…せい,ちょう」

「…そう,それが答えだ
 シンプルで力強い答え
 Sは,より強靭なSになり
 Nは,より美しいNになる」
 
「その旅が終わったとき
 魂はまた引かれ合うだろう
 何故なら[そういう,ものだから]」

「……………………」

「Sは小さなSを引き付け
 強大な力を得…小さな,小さな,
 国を支配するようになる
 其の時に誰かが言った
 [あいつには,敵わない]と」

[……………………]

「Nは小さなNを引き付け
 更に美しくなるのだな
 無駄なものを省き
 美しかった身体は
 更に艷やかに可憐なものとなる
 すれ違う男は皆,2度,3度と
 彼女を見ずにはいられない
 誰かが言う[…貴女は,特別なのよ]と」
 
「そんな日々が続き,何もない空間で
 ふと…もう一度めぐり逢う瞬間
 其の瞬間は必ず人生に準備されている」

「以前のSではない,以前のNではない
 もっと強い絆で結ばれる瞬間を捉える」

「肉体の領域を越えた魂の領域の出来事」

「肉体,エーテル体,アストラル体、
 メンタル体,コーザル体」

「我々の認知できる世界は狭い
 本当の世界は広く広大無辺
 通常意識では探知出来ない程」

「其のきっかけを此処に付しておく
 [何が生み出されたか]ではなく
 [何が消されたのか]を探す事だ
 消される理由は種々あれど
 消す側の理由を探す程,面白い事は無い」
 
「離せば離す程,SとNの絆は深く強く
 確かなものになっていく…此れは真実」

「現実の距離が離れれば離れる程
 魂の絆は深まる…そんな話を付しておく」

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