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交差
非常点滅灯
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呼吸の前の息継ぎが美しい
其れが酷く我慢をした後ならなおさら
非常点滅灯の灯りが…美しい
俺には堪らなく美しく映る
何故そんな場所に・何故そんな場所に
停車しなくてはならなかったか
其の理由に心を惹かれ引かれる
何故其処に留まる理由があったのか
其の理由を知りたいと願う
坂の中腹…後方に車列が在る
男はロマンスグレーの白髪ではあるが
横目でちらりと見た其の顔は理知
智慧のものであり知恵のものであり
常識をわきまえている事を顔貌が語っている
其の様な男が周囲の迷惑をも顧みず
此処に停車していなくてはならない理由は?
後続車両がクラクションを鳴らしている・が
男は視線を下方に落とし何かに集中している様子
此の様な男に文句をつけるな
此の様な男に文句をつけるな
集中した獣の瞳…訳ありなのが理解るだろう
ならばそっとしておけ
そんなに急(せ)いて家に帰って何をする
てれびじょんで本当か偽物か解らぬ
操作方法不明・解読の余白を付さぬ
奇妙奇天烈箱からの知識を明日語る準備
そして御砂糖がたっぷり這入った
味噌汁をぐちゃぐちゃに煮込みながら
其処にじゃがいもを入れて煮込み
菜箸で其の柔軟性を楽しむのか
最果ての寺から頂いた有難い読み物は
ぶっくかばーを捲(めく)られる事も無く
木製本棚の最上部で且つ最東端に
収まって価値を発揮する瞬間を待つのみ
眠りの時間には気をつけろ
夢の時間帯には気をつけろ
無意識の整理の中…何を見た
其処で其の男…非常点滅灯の男が
にやり笑いを付してくるかもしれん
此の様な男に文句をつけるな
此の様な男を邪魔だてするな
夢の中で彼は言うだろう
「訳ありだったんだ・すまんな
ところでどうなんだ・どうなんだ
クラクションをびーびー鳴らす程
君の人生は急いでいるといふのか」
「訳ありだったのだ・すまんな
ところでどうなんだ・どうなんだ
クラクションをびーびー鳴らした後
家に到達する時間が少しでも早くなったのか」
「訳ありだったのだ・すまんな
ところでどうなんだ・どうなんだ
クラクションをびーびー鳴らした後
君は奥方と何を食べたんだい」
「其の夕食のめにゅーを俺に教えてくれ
嗚呼…心配は要らないよ此処は夢の中
嗚呼…心配は要らないよ誰にも言わない」
「そうかそうかそうか・成程な
人の身体は…嫌・心すら食の影響は凄まじい
其の食生活では満足な体型を保てまい
其の食生活では満足な精神衛生を保てまい
心身一如…覚えておくといいかも
心身一如…とても大事だと思わんか?」
「核心部分を知りたいか?
俺が非常点滅灯を点灯させ
皆の迷惑を顧みずにあの場所に
停車していた理由を」
「此処は夢の中だ…此処は夢の中
お前の解釈にあわせてやってもいい
俺は非常点滅灯を点灯させながら
周囲に迷惑を掛けながら
人生で一番大事な誰かに詩を書いていた
其の瞬間が同時刻、同時分」
此の様な男に文句をつけるな
此の様な男に文句をつけるな
「そうだ…ところでもうすぐ4時
充分な睡眠がとれたかね」
「そうだ…ところでもうすぐ4時
御身体御身体くださいな
いいこは起きる時間だよ
いいこは起きる時間だよ」
非常点滅灯の灯りが美しい
俺は其れを眺める
其の理由を探す
非常時を告げるサイン
其の灯りは…美しい
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