《瞑想小説 狩人》

交差

奴隷市場 御,散,歩⑥

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「飲め」

「…………」

「早く」

「…………」

「飲め」

「…………」

…ごく

　…ごく

　　…ごく・り

…たら

　…たら

　　…たら・り

…ぽた
　　
　…ぽた
　　　
　　…ぽた・り

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複数回の問答の後、彼女は口腔内ノ精残渣を
苦虫を噛む表情と仕種で嫌々に飲み込んだ
一度では其れを完全に飲み込むに至らず
三度に分割して飲み込む必要を感じながら

頬は紅潮しておりはっきりとした紅色である
哀しみを評価するには充分な被虐色といへる
無惨たらたらな供花(きょうか)を添えられ
閲覧者全員の棒切れを蜂起させる
鮮やかな添え物となる音階が響けば

「……嗚呼……もう……やめ・て…」

愛玩器具が哀願したところで本願は叶わず
尊厳を根源的に半減させる落書きを添えて
再度の折衝(せっしょう)が行われると彼女は

「……殺生(せっしょう)な……」

そう言って再度、其の可憐な唇を
きつく真一文字に締めようとするが
責め手の一人が名刀・菊一文字で其の華を
再度・開かせるために世論を論じた

「お前は此の奴隷市場に連れてこられた
妖精であり奴隷であり供物であり玩具…
我らの言いなり手なり賄いとおりに散歩せよ
更に本腰を入れるのはまだまだこれから
本ゴシップで全・雌蕊(めしべ)は濡れておるぞ
勿論の事だが全・雄蕊(おしべ)は屹立しておるぞ
周囲を見渡してみるがいい…其の両ノ眼で
百花繚乱にして才色兼備なる才媛であり才女
其の様な女性の余生に禍根を残す惨劇の宴
其れ等の雌蕊(めしべ)が全て濡れておるぞ
更に…勇猛果敢にして泰然自若たる男性陣の
咆哮が奏功し魑魅魍魎へ変化(へんげ)した暁
屋形船に坂田が立てた鉾(ほこ)は見事に見事に
おまへの一本座を突き抜けるであろうぞ」

此の様な美しい娘が犬の様に扱われ
此の様な惨めな格好に纏め上げられ
味見をされるしーんを覗きたくはないか
此の様な美しい娘が蔑ろにされる宴
どぶを攫った後の残渣(ざんさ)より汚い
ぐるめ野郎に唇を再度訪問され
口唇内から興奮の坩堝とともに
発射される唾液を飲み込むと彼女は
涙し・涙し・涙し・もう一度涙した

次への順番は未だ廻ってこない
未だ２／６６しか御散歩は進んでいない

「もう一度」

「……いや……いや……」

「五月蝿い」

「……いや……いや……」

彼女は３度首を振ったが無駄デアル
四つん這いの姿勢から鎌首モタゲ
其れはまるで蛇の様でもありながら
其れはまるで蟷螂(かまきり)の様でもあった
同世界線では非常に貴重な壁時計は
２時２２分２２秒から動こうとしない
其れ以下の単位があったとしても
同じ数字の羅列になっていたに違いない

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