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交差
奴隷市場 御,散,歩③
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四つん這いの彼女は華奢な首の周りに
危篤なネック・チョーカーを巻かれている
其の色は赤であり赫であり当時の御主人の垢が
たっぷりと付いているゆへに同首輪に付された
「SLAVE」の文字(もんじ)をはきと視認するには
隣村まで届く大光量の懐中電灯が必要になる
御,散,歩,御,挨,拶は牛歩…なかなか終わらぬ
彼(か)の妖精奴隷娘は一人目の許しを得るに
とてもとても梃子摺っておる様子と見える
「…嗚呼…嗚呼…」
「腰を上げろ」
「……は……い……」
「早くしろ」
「……は……い……」
一人目の閲覧者であり参加者であり支配者は
右手で彼女の股座一本線の裂け目から
腹腔内の最深部までを貫通した模型(もがた)を
リズミカルにかつサディスティックにかつ
トラウマティックにかつ器用に操作する
模型(もがた)は其の喜びに震えるとともに
彼女の持つ真剣をへし折り、神権を剥奪し
神ノ拳を最深部・奥ノ院まで放り込む
「………!………っ!……」
声にならぬ恋があるだろう
声にならない快感もあるだろう
此れ以上、切なくなるなら死詩(しし)を詠う
詩人になった方が楽な場合が往々に存在している
其の様な気分になるかね・どうだね・どうだね
::::::::::::::::::::
首に取り憑いた赤ノ呪いを解呪するには
三段階の認証が必要となる事を付しておく
一つ…物理的な固定の解除
首輪の南東端にみへる点滅部分があるだろう
解らなければ想像するといふ手段があるだろう
其処にはナンバー・ロックがかけれらており
左・中央・右に1番から9番のダイヤルが在る
叡智に富んだ者ならば「嗚呼・成程」と
瞬間で解る数字の羅列を彼女は理解出来ていないし
そもそも其処に手を掛けて彼女を気泡の深海から
救い出そうという勇猛果敢な者は此処には居ない
此処は奴隷市場…人間が人外を犯す魔窟なのだから
二つ…精神的な固定の解除
彼女の瞳の輝きを見て・観て・診てみるといい
瞳孔が縮瞳と散大を定期にくりかへすのは
諦めの境地に至る道程を順調に歩んでいる証
なお此の精神に係る固定を解除出来るのは
奴隷市場の王のみである事も付しておく
此の市場に連れて来られた時の事をおもひだせ
良く文面を読みもせず「嫌・嫌・嫌」とだけ泣き
血判状に折半症の頭脳しか持たぬ君が
右手人指指で印を押したのを覚えているかな
王は其の契約書などとうに破棄しているぞ
館が英・仏・伊・独の連合に襲われ
鎌鼬(かまいたち)の如くの火が放たれれば
書状など現に存在出来ぬ…物体に価値などない
只、妖精よ、君に、
精神的な固定を施す儀式としては有効であったな
「……もう……もう……嗚呼っ………」
「駄目だ」
「……葉っ……葉っ……そん・な……」
「腰を上げろ」
「……葉……葉……葉ひ……」
「もっと」
三つ…契約を解除出来る精神と物理の裏側
言葉の裏側に潜む暇(いとま)と空白の美術
距離感の担保、言葉の理解、裏側を覗く事
三密加持、言霊の力、俺の小指を奪った
悲しい凍土の寒さを体験する事でのみ解呪可能
其れは身を持って知る事で得られる北方見聞録
同市場でも理解出来ている者は数名しかいない
ゆへに解錠は不可能だという結論を終ぞ付す
ネック・チョーカーを引く男がわらふ
模型(もがた)を操作する一人目の男もわらふ
市場の王は「か・か・か」と意味深にわらふ
彼女は再び・三度・四度・五度・峠を越す
涅槃の領域を垣間見る彼女を羨むマダム
最前列に複数人居る女性陣も濡れている・全員
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