《瞑想小説 狩人》

瞑想

文字の大きさ
上 下
296 / 571
交差

奴隷市場 御,散,歩②

しおりを挟む

:::::::::::::::::::::

曳き廻された彼女は眼前に表示された
奇妙な台紙に書かれた第四の台詞(だいし)を詠む
詠むのでは無く「詠まされる」が
同場面を正確にとらへた成果苦な表現である
此の台詞廻しは完全なる失敗作である事を付す
其事(そのこと)を臓腑に落とす必要を感じながらも
全く無責任な閲覧者は大いに大いにわらふのみ

前列・第一人者の眼前で被座馬づいた彼女の
おおひなる哀しみを見分するとともに
危篤物語として記す事を宿題として課す
退屈なお休み人生を過ごす生物に烏が課す
其の烏の足ノ数をかぞへよ…正体は何ぞ

華奢な頸部に取り憑いた首輪がわらふ
こんくりーとの冷たい床面には
左肘と右肘がちょこんと接しているのみ
左膝と右膝がちょこんと接しているのみ
裸身(らしん)の娘…半身は妖精であるものの
過信は禁物…既に半身は奴隷の身分
四つん這いの姿勢…首輪以外の場所の肌色を
存分に晒しながら・晒されながら
娘は腹腔内で暴れる模型(もがた)の重量感を
おずおずと・ひしひしと・感じていた

ともあれ娘は市中(しちゅう)曳き廻しの最中
誰かが用意した危篤短歌を詠む事と相成る

…わたくしは
  うまれながらに
   けがれの・み

…ようせいの
  むらでうまれた
   だい・さんし

「…嗚呼…っ」

「…嗚呼……っ…嗚呼……っ」

「早く詠め」

「は……い…嗚呼………っ」

…わたくしは
  うまれながなに
   けがれの・み…ああっ

…ようせいの
  ああ・ああ・ああ
   むらでうまれ…た
    だい…ああ・ああ・ああっ

「もう一度」

「そ……やめ……」

「早く」

…わたくしは
  うまれながに
   けがれの・み

…ようせいの
  むらでうまれた
   だい……さん……し

…わたくしの
  つみをみなさま
   かたがた………で
    どうぞ・おねがい
     おねがい・どうぞ……ああ

…つぐなって
  せめて・おねがい
   このからだ
    ささげてみせます
     おすき…に…どう…ぞ

娘は用意された危篤短歌を何とか詠み
其の身が奴隷市場の供物で在る事を
自ら発した言葉の振動で背骨に伝える
「無駄な抵抗はやめろ」と第三者が騒ぐ
「確かに・確かに」と其の隣の男が頷く
同抵抗はオームとなりワットとボルトに
不条理な…道理無き刃を無碍に突き立て
完全に其の機能を停止させてしまふ

頭蓋頭頂が床面に押し付けられる
当時の飼い主は右手で鉄鎖を引きつつ
左手で彼女の側頭部を中程度の強さで
凍土と同じ様な冷たい床面に押し付ける
「嗚呼」「嗚呼」「嗚呼」三度の声

一度目の発声は許しを乞う哀れ声
被虐の宴に華をそへつつ栄養を与える声 
二度目の発声は諦めと明ら目(あきらめ)の声
加虐心をくすぐる市場の王への年貢の全部
三度目の発声は自らへの鎮魂歌
決して許しの方面に放免される事はない
運命を呪ひつつ慰める101番目の百人一首

姿勢は許しを乞う者のそれである
アーサナで言うならば「古事記の乞食」とでも
著者が名付けるに違い無い・無い・無い

「良かろう」

そう言うと一人目の客は彼女に
全員が想像するよりも3歩上でかつ
45度後方に支点・力点・作用点を移動し
劣悪非道な所業を実行した・途端

「……!……!……」

快楽宴が強制的に彼女を偕楽園に繋げ
麻縄梯子(あさなわはしご)の登梯を命じる
弓になれば其れは…峠に至った印

:::::::::::::::::::
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...