《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

奴隷市場 鵜目鷹目

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融通無碍、諸行無常…
一切皆苦、涅槃寂静…
皆無結構、阿吽之息…
俺は薄目を開くとともに
眼前に少女の実態を見る
薄目開きはもう良かろう
眼輪筋と毛様体筋を完全に開き
其処に可憐な少女の佇まいを見る

美しさに目を奪われる…
肌は乳白色と白色の丁度中間
頬は乳白色と紅色の丁度中間
髪ノ色は…黒と黄金の混合比を
5:5とした後の美麗短髪
うなじに後れ毛が纏わりついている事も
俺の「美」の既定概念に一致する

娘は俺が目覚めた事に気付き
少し身体をぴくり、と跳ねさせた
何をしているのかと思えば…
俺の大腿部の貫通創に薬の類いを塗っている

……気がついた?……
……良かった…………

其の声…其の声…其の声だ…
俺は妖精の村、眼前まで辿り着き
自ら大腿部を短剣で切り裂き、瀕死となり
紫の煙、漂う最果ての場所に着き
妖精の介護を受ける事に成功する

計略が此れ程に上手く嵌るとはな
第一段階「妖精の目撃及び接触」
此の段階で死する事は無かった
奥歯に含んだ毒は出番が無かった事を
悲しく思っているに違いあるまい

「君は……?」
知っているぞ、俺はお前を知っている
森で瀕死になっている奴隷の王を
そうとは知らずに救った
美の顕現者で在りながら
世界のバランスを崩す事を目論む
人外の者、妖精の女王の第3子にして
無知で無垢な少女であり男知らぬ処女
其れがお前だ…………
俺は何処ぞの小説の主人公の様に
君は?なぞと相応しく無い台詞を述べてみる

……倒れていたのよ、森の中で…

其れはそうだろう、自らの意思で
在るべくして其処に居たのだから
お前には突然の事だったか知らんが
俺には計略周回路の丁度中間地点といった処さ
綺麗な顔をしておるな
綺麗な声をしておるな
綺麗な足をしておるな
綺麗な羽根を纏っておるな
無垢なる者…色を表現するなら白
白い帆布に薄く薄くベージュを重ね
更に薄く薄く紫を重ねた色は許しの象徴

……痛みは……?……

「…幾分か」俺は首を横に振りながら答える
外にはさんさんとした光の御光
内にはかんかんと鳴る阿吽のリズム
此の流れに乗っていれば良い
先ずは…信頼の橋を娘にかけ
互いの意識交流を楽しむこととしやう
美しさに酔うな…酔いは大敵
泰然自若の呼吸を崩しかねん大敵の尖兵也

……良かった……

俺は実際に大腿部からの失血が
概ね止まっている事を知る
通常の人間ならば「痛い」「痛い」と
大騒ぎする位の激痛が走る頃合い…
傷を負う瞬間にさほど痛みなど無いが
回復の途上には熱と脈動と痛みを
多いに伴うのが常というものだが

其れは氣抜けに成り下がっているに
他ならない…痛みする感じぬ集中領域は
常に此手(このて)の中に在る故
回復途上に於いてもなお、俺を支配する
「痛み」という低俗な疒(やまいだれ)は
此の背骨を踏破する事は出来ない

「君は…?」もう一度口にしてみやう
何処ぞのファンタジー小説の様だろう
其の小説は官能小説家の筆先に依って
奴隷市場の物語に成り代わる
信頼の架け橋を作成し、石橋とし
叩いても叩いても壊れないものとし
その後に急転直下……
谷底に引き摺り込んでやらう
其処は死神の谷底…色は黒
蜉蝣も寄り付かぬ場所…景色は躯露(くろ)
魑魅魍魎の這い回る秘処…にほひは玄(くろ)

………此れで…解るかしら……

背中を俺に向け自慢の羽根を御披露なさる
半透明と透明の中間の色合い
知っているぞ、俺はお前を知っている

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