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交差
奴隷市場 灼熱地獄
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痩せた身体
幼い・身体
人間に非ざるもの
其れは妖精
其の美しい娘
童の如くに小さい
可憐な身体…
美しい体躯
細い腰骨
退化した陰核
そしてその内部
振動球体に襲われる
腹腔内に溢れ出す・蜜
彼女を妖精として
定義するもの…
其れは羽根
肩甲骨から生え
天空を舞うものとして
神より授かった賜物
人間を人間たらしめて
いるもの…
其れは知恵
知識の蓄積
…ああいえばこう言う
…こういえばああ言う
…此の時はこうする
…Aの原因はBである
…CはDに起因し、起こる
一事が万事とも言う
万事は一事とも言う
知恵の蓄積は人間として
最も秀逸にして崇高な作業
なればどうだ
其の生物を其の生物
たらしめているもの
其れを奪い去る事は
罪ではないのか
「あ」「あ」「ああ」
振動球体は彼女を襲う
全員が其の証人となり
弓なりの身体が妖精という
生物の生態に不要な絶頂佐印を
何度も奏でるのを聞く
其れは甘音(かんね)だ
天から舞い落りる音
どんな美しい和音も
彼女のあへぎ声よりも
心をくすぐる事は出来ぬ
「あ」「ああ」「あ・あ…」
羽根に電気がやってくる
妖精の象徴が電気に焼かれる
焦げる匂いが部屋を包み
プラズマが走る異様な光景が広がる
全員が其の承認をする
もっとだ…もっと…
焼き尽くせ…
羽根の先だけでなく…
肩甲骨の…根本・まで…
「嫌…嫌…あ・あ…」
口腔内には再度、錠剤が挿れられる
謎の錠剤、成分は不明
サイエンスに長けた謎の老人が
奴隷市場のためにと
複数年前に作成したもの
余りの効能のために近々では
使われた形跡がないのだろう
袋のジッパー部分に錆が見える
彼女を妖精として
定義する重要機関である
羽根が焼かれる
奇妙な永久機関には
電撃の調整つまみが有る
右にひねればオン
左にひねればオフ
黒いコードの長さは10メートル程度
巻止めは綺麗に解かれ
途中の抵抗が無い様に
子分によって丁寧に整理されている
「ん…ん…ああっ」
余程辛いのか…
錠剤の成分に酔っているのか
腹の中に収めた球体の
激しいぶつかり合いの
責めが快楽へ誘っているのか
彼女はもう一度背中を弓にする
何度目だろうか
数えている者はもう居ない
「ん…んん…ああああっ」
「はぁぁぁ…んっ」
再度の絶頂…
其の佐印は解かり易い
此の部屋の中に居る人々全員に
…絶頂だと思った瞬間に
此の赤色のボタンを
押してくださいな
などという馬鹿げた遊戯を
させたなら皆が一斉に
そのボタンを押すだろう・同時に
「……!……!」
ぴくぴく・ぴくり
ぴく・ぴくり
余韻を残す身体
其の甘い快楽
酔うのは良かろう、が
電撃・雷撃・進撃の一閃が
彼女を夢心地にはさせぬ
「い・嫌…」
プラズマの色は紫に
永久機関のつまみは
右へ右へと回転し
羽根の根本、肩甲骨の辺りに
付設された黒色電極に
再び電撃を発射する
焦げる・焼ける
人の半分程のサイズ
少女は、娘は
苦悶に悶える
「ああっっっっ」
宙空に見える雷は…紫
:::::::::::::::::
其の動物を
其の動物として
定義するもの
《虎》ならば牙
大きな体躯
しなやかな筋肉
其れを失った虎は
「もういい」「やれ」
そう言うだろう
大きな《鷲》
完全なデザイン
大空を滑空し
地に這う獲物を狙う
そして大きな循環の中
食物連鎖といえば解りがいいか
其の中の頂点の一つに
君臨する翼と牙
其れを失い
其れがもぎ取られ
無惨に散った時…
鷲は何と言う
「もういい」「やれ」
そう言うに違い無い
舞い踊る《姫》
全世界に名を轟かせ
其の指先の仕草ひとつ
其の足先の形ひとつで
見る者全てを魅了する姫
幾つもの称号を手に入れ
年輪を重ねたならば
其の都度、舞いの形式を変容させ
齢54となった折には
東洋島国の伝統舞踊に没頭している
道行く民々は皆
彼女を見て2度、3度、振り返る
しなやかで艶のある佇まい
遠目で見るだけで幸せな気持ちになれる
彼女は特別、百花繚乱
現世に舞い降りた朧げな蝶々…
そんな彼女は55の誕生日を迎える折
最悪のウイルスの侵入を許し
舞う為の足、扇子を持つ為の手を失う
決断は早かった、即断即決
彼女を彼女として定義し
美の象徴まで昇華したものを
失ったほんの数日後
「もういいの、ありがとう、心配しないで」
半生を纏める句を詠むことはせず
少ない荷物のみをきちんと整理し…
56の誕生日を迎えることは無かった
羽根を焼かれた妖精は
一体どんな存在に成るのか
「嗚呼」「嗚呼」「嗚呼・嗚」
コンクリートの壁は其の声を反射する
何とも悲しい余韻を残しながら
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