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同種喰い
同種喰い 其の2
しおりを挟む右手側には赤目、赤髪の祈り女が
左手側には緑目、緑髪の祈り女が
君を挟んで座っている
黒を基調にした
祈り女の装束から、
赤と緑の瞳が見える
その目は君を捉えていた
獲物を捕まえる
狩人よろしく
赤の女は狐のような目、
力強さと攻撃性を宿す
一本の矢印のような
きりりとした瞳
緑の女はタヌキの目、
三白眼は大きな空白を持ち
周囲への警戒心、慎重さが伺える
赤目が君のうなじに触れる
誰にも気づかれぬよう
細心の注意を払いながら
産毛を攫うように、
そっと
緑目が足に触れてくる
手の裏側
手背部を使う
滑らかで
妖しげな動きで
赤と緑
カインとアベルの物語から
そのまま抜け出てきたかのような
2人の祈り女が囁く
誰にも気づかれぬ、低いトーンで
…し、ず、か、に、ね
声をあげちゃ、だめよ?
…かわいい、お、し、り…
嗚呼、おいしそうだこと
「…ぁ…っ!」
沈黙の礼拝堂に一瞬の振動が
響きわたる
その波の動きに気づいたのは
赤目と、緑目と
君だけだったのが幸いだ
君は最前列の
祈り女の反応を確認するも、
彼女らは祈りの姿勢を崩さず
こちらを振り向くこともない
君の声は
気づかれなかったようだ
その手を振り払おうと
カラダをよじるが
その腕の動きは、
赤と緑に即座に封じられた
赤目が言う
…だ、め、よ
うごい、ちゃ
緑目が囁く
…お、と、な、し、く
していなきゃ、ね
お祈りの時間、なのよ?
「……!」
祈り女の衣装は
薄手の黒いワンピース
多分、長老の好みなのだろう
彼はワンピースを好んだ
女性の象徴として
男性が着てはいけない着衣として
頭から垂れ下がるフードは
日々の外気温に合わせ
その時の気分に合わせ
彼女等の好きな色、
好きな長さにして良いとされる
フードの色は
大概、黒が多かった
コーディネートとして違和感がなく
礼拝堂の雰囲気ともマッチする
オトコが好む色であることも
彼女らが黒を選ぶ
理由の一つだった
赤目のフードは紅色で、
緑目のフードは緑色
何とも目立つ出で立ちの2人は
それぞれに
君のうなじを
君の足を撫で回す
やさしく
やさしく
…し、ず、か、に
…そう、しずか、に、ね
…!
…!!
前列は
上位の祈り女が使用する
指定席となっており
中列と後列は
いわゆる自由席
大きな礼拝堂に
小さな祈りの区画があり
そこに50の椅子が並べられ
パイプ・オルガンが小さな音で
幻想的に鳴り響く
君が好きだったのは
最後列、特に深い意味はない
2つ右の席では
着座した祈り女が
両手を合わせて目を瞑っている
2つ左の席では
寝落ちしてしまっているのか
ふっくらした祈り女が
首を大きくかしげて
かくん
かくん
と揺れている
赤目が右から
緑目が左から
君を挟み込むように
少しずつ
少しずつ
距離を詰める
ほとんど密着するような
距離感になったとき
右のうなじから
赤目の手が
左の足から
緑目の手が離れる
…声を
出しちゃ、駄目、よ
動くのも、駄目
…そうよ
お祈りの時間
だもの、ね
赤目の手は
うなじを離れ
ワンピースの裾から
人知れず侵入し
肋骨周りを
さすりだす
さわ
さわ
さわ
手つきはしなやかで、
滑らかで、
マシュマロの形が
変わらないほどの柔らかさ
緑目は後ろに
誰も居ないことを確認したのち
左の耳たぶに
甘く
甘く
口づけをする
ちゅ
ちゅ
ちゅう
「…!
…っ!」
危うく声が漏れそうに、なる
肋骨から侵入した
赤目の指先は
少し上へ移動し
可憐で小さな膨らみを目指す
掌でゆっくりと
右胸全体を
撫でられる
優しく
優しく
あくまでも
優しく
触れている、と
触れていない、の
丁度中間くらいの手捌きで
これはオトコの
技ではない
こんなに
優しく
オトコはオンナに
触れることは出来ない
は、
は、
はあ…
吐息が荒くなる
胸の膨らみと
耳への、愛撫
昨夜の余韻が
脳を目覚めさせ
早朝という名前を
深夜の続きという表現に
変えようとしているのが解る
緑目のオンナが
左耳を軽く舐め
同部位を甘く噛んだ時
「…嗚呼っ」
再度の振動は
この部屋を瞬間、切り裂き
最前列
一番左の祈り女だけが
くるり
後ろを振り返り
全体の様子を伺ったが
特に何かを咎めることもなく
部屋には静寂が舞い戻る
良かった…
パイプ・オルガンの
演奏が始まった瞬間に
その声が混じったものだから
気づかれずに、済んだ…
嫌、気づかれた方が
良かったのか、君にとっては
赤目も緑目もふっと一息
…声を、
出しちゃ、
駄目って
言ったでしょう…?
…いけない娘、ね
いけない娘、よ
ウブな反応…
おねえさん、興奮、しちゃう
…はあ
はあ
はあ、
…っ!
今日は2つ
椅子が多く
並べられている
誰も気づいて
いないだろうが
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