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蟲責め
蟲責め 其の11
しおりを挟む…嗚呼
《鉄ブラシ
はごろも固く
飛べぬ空
やめてやめてと
小娘、騒ぐ…》
…良い
良い
良い、ぞ
何とも被虐的な
詩ではないか
《羽衣》と
《歯、ころも》か
ミスマッチが
何とも美しい
もう一句、
お願いしよう
…嗚呼
詠みます、から
もっと、やさ、しく…
嗚呼…
《ねむりこけ
沈む身体を
貫いて
毛並み逆立つ
宵は激しや》
お、ね、が、い
これで…
御勘弁
下さい
まし…
…これも良い
被虐的な詩だ
尻尾はもういい
場所を変えてやる
《猫耳》を撫でてやる
ブラッシングしてやる
ほれ
ほれ
動くな、よ
暴れるな、よ
手元が狂うから、な
さて、始めるぞ
慣れないうちは
丸ブラシから…
…宇、
宇、
嗚呼っ
…良いか?
耳が?
…嗚呼
おね、が、い
外から
ゆっくり、と…
してくだ
さい…
…そうか
そうか
中は嫌か
外から
ゆっくりと
先ずは右の耳を
ごし
ごし
ごしと
…嗚呼っ
嗚呼
みみ、が
みみ、が…
…気持ち、良いか?
…、、、…
…答えろ
…は…い
…猫耳
カチューシャから生えた
仮りそめの耳
なのに、な
…は…い
…気持ちを
表現しなさい
今の気持ちを
素直に
詩的に
どんな、気持ちだね?
…は…い
《森の中、蛮族に捕まり
好き放題に嬲られる、乙女…》
そんな、気分、です
…続けろ
詳しく、な
…は、い
その乙女は
森の中におりました
果実を集め
きのこ類を集め
宵の宴に華を添えようと
目的を持って
森の中におりました
:
村では一目置かれる
美人さん
《きっと、あの娘はいい嫁になる》
《気立てのいい娘だねえ》
《嗚呼、あの娘なら、大丈夫》
:
随分としっかりしていたらしく
学び舎での成績も良く
非の打ち所がない
そんな娘でした
又
その容姿は可憐そのもの
《絵画のような美しさ》
皆がそんな評判を立てました
染み一つなく艷やかな、肌
黒髪のショートカットは
とても
とても涼やかで
笑顔が眩しく、仕草は華やか
見ているだけで、幸せになれる
今日は良い日だった、と
あの娘にまた、会えたから、と
そんな評判のムスメ、でした
:
その評判は隣村まで
知れ渡ることとなります
実際に
何人もの《絵描きさん》が
彼女の元に訪れ
彼女の絵画を描きました
それを承諾する条件は一つです
ポーズを自分で決めること
それ以外には何も求めず
見返りの金品等も
彼女は求めようと
しませんでした
:
絵画の表題は様々で
《月光の巫女》ですとか
《夕焼けと姫君》ですとか
《妖精》ですとか
そんなタイトルが付けられ
まし、た…
嗚呼っ
おね、が、い
やさし、く
して…
…続けろ
…は…い
やさし、く
して
くだ、さい…
ごし
ごし
しないで…
:
その、娘は
絵画の《タイトル》が凄く、好きでした
一枚一枚、絵画の複製を頂き
自分の部屋に飾ります
彼女は
それを眺め
うっとり、夢心地
絵の部分、よりも
《タイトル》に
惹かれ、心ときめきます
その娘は思うのです
:
言葉
言葉には随分と
力があるのだなあ、と
何とも聡明な娘で
御座いまして
その気づきを活かし
言葉を学ぶことに
随分と時間を費やします
果ては、そう
そうです
カタカムナの一部まで
理解するようになった、とか
:
嫌
な、か、は…
な、か、は…
いや…
やさし、く
やさし、く
して
く、
だ、
さ
い
:
:
嗚呼…
その、娘が
一番、気に入った
絵画のタイトル
それは《白狼の初恋》
と呼ばれるものでした
:
彼女はそのタイトル
その表題を眺め
とても、とても、満足な様子
毎日
毎日
その絵を、
その表題を、眺め
波動が上がる自分を
楽しむ日々が続きます
《文字、私は、文字が、好き…》
そんな気づきは
確信に変わります
:
今夜は
宴の日
《春の宴》
《夏の宴》
《秋の宴》
《冬の宴》
それらのうち
夏の宴の日
彼女は
森に採集に出かけました
今宵の宴に少しでも
役立つことが
出来れば、と
…面白い
続けろ
…は、い
やさし、く
やさし、く
なか…は
みみ、の
なか…は
:
と
て
もっ…
:
嗚呼…御勘弁を
続けます、から
:
その、娘は
森の中で
がさ
がさ
がさと
奇妙な音を聞きます
そこにはローブをまとった
何人も
何人もの
オトコ達が居りました
界隈では有名で
《蛮族》と呼ばれる
男たちの集団です
:
彼女は身の危険を
察知すると素早く
籠を投げ捨てるとともに
後方へ一目散
その華奢な足で
逃げようとしました
半ば無理だ、と
知りながら
:
捕まったら?
捉えられたら?
何、されるの…?
:
そんな思いが
脳内を包みます
《未来の概念は、人間が農耕を
始めた頃から生まれた》
そんなことを彼女は思いました
自分の近い未来が
透けて見えるようです
:
程なく、その未来は
暗く、淀んだ、歪な
姿をしていると理解します
嗚呼、可哀想…
:
一瞬で羽交い締めに
された彼女の身体は
その場で
木に結ばれました
固く強い
麻のロープです
蛮族の手口は巧妙で
《捕縛する》
《緊縛する》
《諦めさせる》
その3つを
ほんの数分でやってのけます
麻のロープで
きつく胸の上下と
高く掲げた手を
樹木と緊縛された時
:
《この娘だな?
白狼、そうだな?》
《嗚呼、そうだ、
間違いない》
:
彼女はそのやりとりの中
蛮族の中に
あの絵画の作者たる
白狼が居ることを
知ってしまいます
嗚呼…可哀想…
:
《白狼の初恋》
その作者が
こんな、
こんな、
酷い
こと
する、なんて…
…続けろ
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