《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交渉

入室は自らの意思で

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着替えを済ませ
春色のワンピースは
浴場の出口に舞い降りた

彼の姿はそこにはない
任務は遂行できた、はずだ

…彼を浴場に案内し
 服を脱ぐのをお手伝い、
 お前は襦袢一枚になり
 一緒に中へ入るのだ、
…リクエストがあれば
 それを実直にこなす、
 わかる、な?

何か一つができていないような
そんな気がするが
気にしない
気にしない

入口で待機している
2人の祈り女が
ずっと私を見ているようだが
気にしない
気にしない

「…部屋は
 どこだったかな?」

不意に後方から声をかけられ
君は毛並みが一気に逆立つ思い

最近は毎夜
猫のようにしているものだから
猫化が進んできているのだろう

彼は
ゆったりとした
白色とベージュの中間
そんな色のローブを羽織り、
白髪をもう一度
後頭部に束ねていた

これが正装だと言わんばかりに

「…確か…
 こちら、でしたっけ?
 …わたし、も
 …忘れて…」

「面白い、お嬢さんだ」

…おじょうさん
…彼の口調は優しい

案内役が先に
進まねばならないのだが
右往左往の君を見かねて
彼がその役をすることとなる

「たしか、こちらだった
 と、思うのだが…
 …おいで」

後から考えると
君に恥をかかせぬようにと
最大限の配慮だったのだろう

しばらく
彼の後に続く君

初老にしては足が早く
しっかりとした足取りで
地面にはフラットフットで着地している

特別室は直ぐに見つかった
何のことはない
一つひとつの部屋に名前が付され

「赤の間」
「橙の間」
「黄の間」
「緑の間」
「薄い青の間」
「藍の間」
 その後に
「特別室」
 と並べられているだけだ

逆では理解に苦しむものもある
行きはハッタリ
帰りはマコト
そんな並び

彼は直ぐに察した
…成程、
 チャクラ、
 その順序、
 赤
 橙
 黃
 と続く、
 ということは、
…藍の次は
 紫
 か
 「特別室」
 なのだろう

知っているオトコだ
開いているのか
そうではないのかは別として
知ってはいるのだな

知識で知っているのと
身体で知っているのは
違う、もの

…………

「ありがとう、
 優雅な時間だった
 では…」

彼は部屋に入ろうと
その手を伸ばす
ゆったりとした上品な所作で
ドアノブに触れる

「…待って…」

君が言う

「何だい?
 美しい、お嬢さん」

「…ごめん、なさい
 もし…
 もし…
 よろしければ…」

「……」

「もう少し、
 貴方の話を、聞いても
 いいです、か?」

「…何の、話を?」

「…隣村の話や
 その……
 その……
 ……
 ……
 貴方が、何故
 陽なのか、を」

「…面白いお嬢さんだ
 …そして美しい
 私が、陽だと?」

「…は、い
 そう、
 感じたの、です」

「…話の続きは…
 こっちが聞きたくなって
 しまったよ」

「……」

「長老殿に
 言われて来るのかな?
 それとも
 自分の意思でかな?
 まあ
 どちらでも構わん、
 入りなさい」

「は…い」

…夜
 オトコ
 オンナ
 部屋
 密室
 密会
 二人
 二人きり
 ベッド
 月
 陰の時間…

本来の時間を
取り戻せ

「陽、極まって陰に転じ」
「陰、極まって陽に転ずる」
「小さな陽は大きな陽に」
「小さな陰は大きな陰に」
「惹きつけられて飲み込まれる」

無双原理の一節はこうだった
おっと、
あぶない
あぶない

……………

その部屋は

《大きなベッドが手前に1つ
 ベッドの先にはソファが2つ
 ソファの先にはテーブル1つ

 テーブル脇には燭台1つ
 揺れる炎は紅黒く
 ゆらめく色が4面を照らす
 
 窓は大きくその数3つ
 うちの1つは天面向きで
 北を知らせる星影1つ》

そんな部屋だった
表現しきれない部分については
想像で補って頂きたい

例えば
庭に何が見えるかなどを

「先ずは、かけ給え」

「…は、い」

隣村の長はそう言い
君をソファに促し
自らはベッドに横になった

「私から、話そう
 そのほうが
 君にはいいだろう
 何となく、そう感じてな」

「…ありがとう、ございます」

「…この部屋は
 とてもいい、な
 ご覧、
 美しいお嬢さん
 君の位置からでも
 見えるだろう
 …月が」

「…は、い」

入室

オトコの部屋へ
自らの意思で、
自らの判断で

なので、
わたし、は、
なにが起きようと
後悔は、しない

君は凛と背筋を伸ばす
意外な一面を垣間見れて
俺は誇らしく、思う

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