《瞑想小説 狩人》

瞑想

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言葉責めの夜

言葉責め 其の11

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何年か前の話で、
何年も前の話だ

実話なのか、
空想なのかは、
想像に
お任せすることとして

自分勝手に
ここに記して
おくこととする

私は朝の時間を大切にしている

朝なのか深夜なのか
区別のつかない時間から
公園を歩き
鉄棒でいくつかの運動の後
瞑想に入る

朝を迎え、
陽の光を浴び、
それをを凝視し、
エネルギーの供給システムが
変わっていくこと、
視界がぼやけ、
緑が緑でなくなること
そんな世界線を楽しんでいた

「まだ、
 まだ、
 もっとだ」

私はいつもそう思う
まだまだ《未熟者》であるし
そうありたいと願う

鍛えられていない筋肉が、
経験できていない精神状態が、
知らない栄養が、
未知の教養が、
まだまだたくさんあり
もっと、
もっと、
学ばねばならないと、
学びたいと、
実践したいと、
習慣にしたいと、

本気で思っている
今も、なお

あの頃は若かった
精神的に、という意味でだが

スタイルのいいオンナが
声をかけてくる
猫のような目つき
背は高く
脚が長く
ウエストが細い
髪の毛は黒のショートカット

要件はこうだ
「…スクワットを教えて欲しいのです
 …あなたは、他の人と違うと思ったのです
 …おすすめのサプリメントは
  何かあるのでしょうか」

そんな感じの質問だった
慣れた質問だ
この手の質問に
何度も何度も答えているし
ある程度には
自信を持って喋れる内容でもあった
ある程度ではあるが

栄養、運動、瞑想
ヨガ、ピラティス、仙道
断食、断捨離、欲求
テレビ断ち、新聞断ち、
情報収集源と学び方

この中のどの引き出しから
どの内容を選ぶかは
相手によって
決めることにしていたし、
今もなお、そうしている

身体操作に長けてくれば
声かけは多々ある
あくまで、平均値と比較して、
とういう意味でだが…

しかし、こんな早朝に
というのは珍しい

数日、
彼女と会うというか、
追いかけれるというか、
そんな日が続いた

紹介した特殊なスクワットや
紹介したサプリメントの摂取を
実直にこなす彼女

アシュワガンダがお気に入り
ロディオラも
クレアチンも
私は
現実主義なのです

何日か経ったのち
彼女は印象的な一言を発した
「…いつも
 あなたのことを考えて
 …独りでしています…」



私は変態知人に
このことを話した
変態知人は
「実直なオンナだな…
 面白い、
 ○○○にしてしまえばいい」

そう言った

後日談は奇譚となる

何となくここに
記しておこうと思った
ただ、それだけ

そして
私は未熟者
教えてほしい
知らない世界を
もっと
もっと

……………………

…獣
 お前は
 獣
 私も、そう
 
…けも、の

…そう
 私は狼、
 白い毛並みで
 人語を操り
 群れを形成する
 グループの一つ
 《月》と呼ばれる一味を
 統率し、支配する狼

…おお、かみ
 
…朝は誰よりも早く起き
 昼は誰より勤勉に働き
 夜は眠ったフリをして
 そのまま朝を迎えるが
 誰にもそれは伝えない

……

…勤勉を常とし
 未熟であることを自覚する故
 人知れず読書に更ける
 黙読、指読、朗読
 肉体学も、
 薬草学も、
 天文学も、
 量子力学も学ぶ
 まだまだ学ぶ
 もっと、
 もっとだ

……
 
…支配領域はごく狭く
 他には興味が湧かない様子
 そのことを理解するが故
 内へ、内への旅を続ける
 決して他には口出ししない
 そんな毛並みの
 私は、
 狼

…わたし、は?

…お前は違う
 私と同種の
 狼でありながら、
 群れに属することがない
 月にも、
 太陽にも、
 誘いは多くあったのに

…… 

…美しい毛並みの色は
 薄いベージュのキャンバスに
 さらに薄い青色を
 何度も何度も塗り重ね
 丁寧に、丁寧に
 育ててきた、
 そんな色
 朝は感謝とともに目覚め、
 昼は群れの視線を一身に浴び、
 告白され、
 求婚され、
 求められる日々
 夜は誰かが運んでくる
 少量の野菜で済ます
 狼なのに
 エネルギー源が野菜
 いかにも
 お前らしい

……

…支配領域は何もなく
 そこにあることで満足な様子
 そのことを理解するが故
 内へ、内への旅を続ける
 決して他には口出ししない
 そんな毛並みの
 お前は、
 狼

…素敵、な
 お話…

…忘れるな
 お前は輪番の巫女
 少々、脱線が過ぎたかな?

…もっと、
 お話を
 きき、たいです…

…ならば
 部屋の外にいる
 6人について
 語っておこう

…部屋の、そ、と?

…部屋の外には
 6人いてな
 お前の声を、
 中の様子を、
 最初から
 聴いていたかもしれん

…そん、な

…量子力学、可能性の頁
 より引用だ、
 可能性がある、と
 言ったまで

……

…部屋の外は
 開けてみなければ観測できん
   《壁に耳あり、
  障子に目あり
  壁の耳には、
  騒ぎの声を
  障子の目には、
  腰つきを
  さしだし、差し出し、
  夜は更ける》

…6人…
 

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