《瞑想小説 狩人》

瞑想

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永久機関の村

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ほとほと
あきれるぜ、
ほとほと
見下げるぜ、

永久機関の村で
幾日か過ごした
俺の率直な感想だ

この村には
「豊作の木」が植えられており
機械仕掛けのぜんまいが
その原動力として
朝も
昼も
夜も
眠る間もなく
働いていた

「豊作の木」を中心とし
東西南北に幾つもの家がある

その中心に近いほどに
木に近く居るほどに
身分の高い一家であると
彼は笑いながら語っていた

…水は、その木から賄われ
 食料も配分される
 
…樹木の中には

…幾つかの結節
 ヨガでいえばグランティがあり
 そこで土から蓄えた
 滋養を変換し
 村人の欲望にあわせ
 変換し、抽出する

…樹木は12の排出口をもっており
 《陽の時間》
 北側では砂糖が
 1時では水が
 2時ではワインが
 3時では木の実が
 4時ではペルーのアナログ版が
 5時では果肉が
 南側では小麦粉が手に入った

…日沈むころ
 《陰の時間》
 南側では小麦粉が
 7時では冷たいジュースが
 8時では植物油が
 9時では白米が
 10時では加工肉が
 11時では夜のお供が
 北側では砂糖が手に入った

あいつはいう
「天の恵み
 地の恵み
 その感謝をこめて
 この樹木を守る
 …
 この地面にはな
 太古の昔
 俺たちの祖先の祖先の
 そのまた祖先が残した
 永久機関が眠っているんだ」

「…」

「…不満そうだな」

「嫌、おまえらしくない
 喋り方だと
 思っただけだよ」

「…
 そうか、しまった
 俺としたことが
 《世界樹よ、われらが恵みの源は
 永久機関の、輝きのもとに》
 といったところか」

「…いつものスープも、ここから?」

「そうだ、カラダの調子は
 どうだい?」

「…いつもと違う
  普段と違う
  森を彷徨っていた頃とは…
  それだけ
  いっておくよ」

感覚が曇っている
何か違う感じがする

コミュニティを離れ
遠く離れ
いつも身近に感じていた
君の存在が遠くなる

…わかった
 気がする
 ぜ

「頼みがあるんだが…」

「何なりと」

「身体を動かしたい
 鍛錬場
 そういった類のものは?」

「鍛錬?何のことだ」

「…
 要は、身体を鍛え
 心を鍛え
 皆が集い
 高め合う、そんな場所のことさ
 鉄棒が一本あるだけで
 俺は構わないんだが…」

「わからないな…」

「その言葉が?
 それともその意味が?」

「両方さ
 《旅人の問いは難解にして
 哲学問答よりも深く》
 といったところ」

「じゃあ、お前は…
 …
 お前と初めて、森で会ったとき
 狩りは酔狂なものだと
 村には不要なものだと
 言った、そうだな?」

「ああ、確かに」

「では問うが…
 何をして生きる根幹とする
 何をして生業とする
 何をして喜びとする」

「難しい、が
 一番大事な部分は
 メカニックと呼ばれる分野だよ
 つまり、永久機関をメンテナンスし
 常に油をさし
 常に元通りにしておくこと」

「それ以外は?」

「何も」

…俺には理解が追いつかない
 この村の人々は一様に
 ふっくらとしていて
 万に一つも
 狼や、
 猪や、
 背丈の倍の熊と戦える
 そんな武力を持ってはいない

…そして、鍛錬
 その概念がないから
 なのか
 その言葉が存在していなかった

…存在しなければ
 つけられる名前もない、
 そんなところだろう
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