《瞑想小説 狩人》

瞑想

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視姦

雨、第2夜

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…雨が降っている
…ひどく冷たい雨だ

触れていなくとも
それがわかる

季節の概念を強調するならば
春雨とでもいうのだろうか
時折、分厚い雲の中に閃光が走る

音が
遅れてやってくる
主のために、遅刻はできぬと

ごろ、ごろ、ごろ

春雷は季節の移ろいを告げる

この世が
無常そのものであることを
教えてくれる

雨、雷
…イカヅチ
…シュンライ
カタカナに変換してみる

面白い作業だ
何とも君らしい作業だ

…無
…無
…「厶」…
私もそうなれたらいいのに

黄土色のワンピースは
…柔らかく
…程よいストレッチが効いており
 それでいて造形が
 体つきにピタリと合っている

見るも完璧に細い
君の身体のシェイプに
ピタリと合わせてついてくる

誰かが君をモデルに
縫い合わせたのか
一体誰が
君の知らぬ間に
そのサイズを知ったのか

衣そのものが
君に合わせているのかも

「…長が
 お呼びだ
 来い」

そうか、
忘れていた
そう
そうだった

仮面の従者が外におり
促されるのは隣の部屋

君が昨夜
侵され、
犯され、
嬲られた、
あの部屋

記憶と嫌悪が蘇る、
胸の突起が疼く、
後ろ蕾が震えている

…無

無になりたいと君は思う。
何とも難しい概念だ
カラ、厶
何もないが故
膨大なエネルギーを含んでいる
ともいえる

ゼロと無限大は一緒
全部であることと
無いことは一緒
マクロとミクロは一緒
君もしっておくといい

銀河群まで意識を伸ばしたならば
それが誰かの
脳の回路と一緒だと
貴方は思うだろう
貴女でもいいのか

フラクタル構造というらしい
覚えておきなさい

君は部屋の中へと
促されるままに歩を進める

顔を少し赤らめ
ソファ上の長老に向かい
声よりも先に
お辞儀を
ペコリ

このような佇まいを
誰かが上品と
名付けたのだな

「…昨夜は
 眠れたかな?」

「…は、い」

君は危うく《お陰様で…》と
付け加えそうになった

君は立ち尽くしたまま
次の誰かの
発言を待っていた

「…趣向はな」

「…」

「…凝らさねばならんのだよ
 安寧のために
 コミュニティのために
 平たく言えば平和というやつだ
 わかるか?」

「…い、え」

「…時に異物が現れる
 知っているかな
 親は親であり、子は子であり
 魂の造形は人それぞれ」

「…」

「故に本来、強制されるもの
 矯正されるものなど
 あろうはずがない
 親は親である前に
 独りの人間であり
 動物であるべき
 なのだ、わかるか?」

「…は、い…
 何となく…ですが」

「寄れ」

君はソファに座る老人の
眼前に来るように促される

「…もっと近く」

「…」

「もっと、もっとだ」

その距離は約50センチメートルほどか
手を伸ばせば触れられる距離
長老が手を伸ばせば
その手はワンピースの裾をつまめるだろうし
その腰骨を愛撫することも
できる距離

「手を、裾に添えなさい」

「…」

君は拒否権のないオンナ
それは、空気で感じている

「そうだ」

ショート丈とロング丈の中間
ミドル丈などという
表現があるのか
膝下の裾に君の手が添えられる

「…話を続けよう
 魂の形は人それぞれ
 喜びは人それぞれ
 …
 ところがどうだ
 不幸の形は一緒
 不思議に
 思わんか」

…哲学、問答
…ソクラテス
…プラトン
…アドラー

そのどれでもない
巧匠な話術

「裾をめくりなさい
 膝の上、までだ」

「…恥ず、かしい」

「…敬語を使え、はしたないムスメだ」

「…恥ず、かしゅう、
 御座います、嗚呼…」

「そうだ、
 …そうだ
 もう少し」

「宇宇…」

燭台の炎は昨夜と
同じであるにも関わらず
ロウソクが少し歪な形をしているのに
君は気づく
きっと
造形師の心が少し
焦りを伴っていたのだろうな

その明かりのせいではあるまい
その顔が赤らんでいるのは
ショートカットが少し乱れているのは

「もう少し、
 寄りなさい」

「…嗚呼」

君は半歩を半分にした長さの
距離を縮める
50センチは
40センチに

最早ソファから
手を伸ばしたなら
君の胸を
突起を
昨日のように弄ぶことも
できる距離

第2夜の始まりはかように




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