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輪番の始まり
ご容赦を
しおりを挟む集中すること
没頭することで
時間の感覚がなくなり
周囲との不一致がなくなる
チクセントミハイ教授はそのことを
フローと名付け
世界に示したものの
概念は中空に浮かんだまま
地につかずに
揺蕩っているとも言える
何故
良いものは
本当に良いものは
しっかりと
根を張れずにいてしまうのか
謎の答えはこの執筆のみが知っている
書かれたものよりも
消されたもののほうが
消された理由を探す方が
真実への近道だと知ることだ
消された
…
理由
輪番の存在はコミュニティに
伝わっていない
甲月及び乙月が繰り返されることに
何ら不満を漏らすものも
いなかったし
輪番を過ごす祈り女には
それなりの理由を付されており
それなりの優遇もあった。
何か物事を成すのならば
それを志すのならば
人間の7大欲求を意識し
満たすことだ
歓楽欲、承認欲、怠惰欲等は
意識に上がりずらい、
気づかずにコントロールしやすく、
されやすい
今夜の供物たる
祈り女は
求めず
泰然自若の領域が他よりも
多い
というよりも
生き様
有り様
が獣に近く
それ故に美しさを感じるのだな
長老は3連符に向かい
かつて語ったことがある
その内容はこんなものだった
あくまで要約的なものではあるが
「このコミュニティは
バランスを保ち
秩序を保ち
安寧な状態を続けてきた
しかし
しかしだ
人間の本質はもっと
もっと
激しく
かつ
美しく
そして醜いものでもある
これは脇にのけておいてだ
本題に入ろう
私が恐れるものは2つある」
「…」
「一つは覚醒した祈り女の存在
彼女は紫色
チャクラはクラウン
他との共鳴、未知との共存
類まれな美しさと
聡明な知恵
彼女自身が気づいていないのが
救いではあるのだが
…
これはコミュニティのバランスを
損ないかねん」
「…」
3連符は聞いている
目を閉じたまま
感覚は遮断したときに
本当の力を発揮するものだ
「もう一つは端のテントの狩人
奴には欲がなく
力が強すぎ
可能性が在りすぎる
チャクラはルート
生存に長けた存在
誰よりも死を意識し
身近なものとしているが故
そこから逃れる術を心得ている
…
これはコミュニティのバランスを
損ないかねん」
との談であった。
力を持つもの
その可能性があるもの
それには
鎖をつけ、重しをつけることか
力をつける前に
覚醒しきる前に芽を摘むか
そういった作業が必要になる。
かのレノンもその類だったのだろう
~~
胸に咲いた2つの蕾は
長老の手の中で
半刻から1刻の間
ただ欲望のままに操られ
マリオネットよりも従順に
欲望の手中に落ちていた。
吐息深く
漏れる声は妖しく
多分、
あの燭台にかざされたロウソクのせいだ
あいつが
何がしかの引力を持っているか
南米に咲く花の魔力を
身につけているのかに違いない。
「嗚呼…」
2度目に発芽した花は
奇特な性格を有しており
1度目より深く、長く
君の背骨に取り憑いた
その感覚から逃れるように
又は
味わうように
覚えるように
君は背骨を前後、左右へ
ゆすり、ゆすり、ゆすり
…もう一度、されたら
私…
声にすべきか否か君は迷った
が
耳元で狩人がささやく
《迷うなら、動く、要は行動だ》
その言葉は不思議と懐かしく
違和感を感じない
過去生、そのまた過去生、
そしてそのまた過去へと
脈々と続く双児の声
その響き
「…わ、たし、
もう…」
「何だ?」
「…もう、駄目で
御座います…
御容赦を、何卒…」
「…不、
夜は始まったばかり
何をのたまうか
私はコミュニティの長であり
お前は輪番のムスメ」
「宇宇…」
長老が右手を腰骨にあてがうと
奇妙な動きで君をさらに高く
高い位置へと運んでいく
その手に導かれ
従うように
感度を増したカラダは
火照り
日照り続きの大地のように
乾き
悦楽の水分を欲するように
支配されていった。
最後の着衣は潤いを増し
その後の行方を示して欲しいと
充血した突起が苦しんでいた
…嫌
…嫌
…わたし…
…どうなって、しまうの、かしら
…誰、か
時折、突起を甘く噛まれれば
標高は直ぐに上がり
酸素が薄くなる
そんな繰り返しの中で
君は酸欠の部屋に住み
新鮮な支燃材を求める
そんな
カラダの性質と向き合うしか
時の過ごしようがない。
長老の手が
藍色の
深い紺色の
最後の着衣にかかったとき
腕がしびれ
動かないことに今更気づく
嗚呼…
もう少しこの腕に力があったなら、
嗚呼
もう少しこの足に融通がきくなら、
何か変わったのかもしれないのに
そう思いながらも
マルチタスクを続ける
長老の手によって
最後の着衣はベッドサイドに放り捨てられ
無惨な残骸となって
横たわることとなった。
ならば
君を守るものは
意識の力
それ
しか
ない
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