《瞑想小説　狩人》

瞑想

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祈り女と狩人

クンダリニー・ヨーガ

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まるで、
黒い蝶のようだ

俺は思う

闇に紛れこみ
目立たぬよう、
ひっそりと蠢き
春を待つ黒い蝶

そのカラダ
その動き
そのしなやかさが
時空を変える

雰囲気そのものを
周囲の意識を

一体、彼女はどうやって
このような舞を獲得するに至ったか

嫌
何故
このような舞いを
獲得する必要があったのか

まだ、その謎は解けていない
まだだ、
まだ、消えるなよ

（…また、
　会えるのか)

俺は無意識の中
彼女に問うた
今まで、誰にも問いかけたことのない
言葉で

（…駄目よ、私…
　この祭りが終わったら…）

（…終わったら？）

（…輪番に入るの）

（…輪番？）

（…そう、
　甲月は輪番の月々なの
　私は…
　長老様のものになるのよ)

（…何を、言っている？）

（…長老様の御屋敷の
　春の間で暮らすの
　……
　……
　私、選ばれたのよ）

（…何を、するんだ、一体？）

（…わからない
　けど…多分…）

（…そういう、ことか…)

（…今は、もう少しだけ
　踊っていたい、
　もう、少しだけ…)

（…君は？
　…それでいいのか？）

（…わからないわ
　その時にならないと
　…気持ちは、その一瞬のもの
　そうじゃないの、かな)

（…違うね）

（…）

（…違うね、聞こえているか
　世には、変わらないものも有る
　一瞬が永遠になることも有る
　要は、意識の問題だ）

（…い、しき）

（…そうだ
　盛者必衰などと
　ぬかすが
　俺にはそれが
　怠け者の言い訳に聞こえるのさ)

（…貴方は、強いのね
　他の人とは、違う）

（…いや
　まだ、
　まだ、
　もっとだ、
　俺は、強くなる）

（…何の、ために？）

（自分のため
　今のいままで
　そう思っていた
　…
　今は、
　少し、
　少し、違う気がする）

（…もう少し、
　聞かせて、
　あなたの、
　声を…）

（…色即是空などと
　よく言ったものだ
　…
　その色の実際は
　罪深いものだな
　…
　長老の存在、
　祈り女の存在、
　ルール、
　コミュニティの秩序
　そして、欲望か…)

（…貴方には
　正当な欲があるわ
　…そして、
　…それ以外に
　…持ち合わせがないのね
　だから……）

（…だから？）

（…もう少し、お話
　したかった
　…
　駄目なのよ、もう
　踊りが終わってしまう。
　…
　また、会える日が来るかしら）

（…会えると、思う）

成程、
そうか、
コミュニティーの裏側の部分

祈り女とは
そのようなものだったのか

（…会いに来てくれる？
　…私に）

（…どうすれば、
　いい？)

（…旅に出るのよ
　…
　あなたは、このコミュニティを出る
　最初の狩人になるの、
　…
　私、何となくわかるのよ
　…
　…
　いろいろな経験をして
　もっと強い人になって
　そして、
　私に会いに来て欲しい）

（…君にもう一度
　会うために
　声を聞くために、か
　…何なんだろうな、この出会いは）

（…双子の魂）

（…双子の魂？）

（…ツインレイ
　そう、呼ばれるもの)

（…わかる、気がする）

ティンシャが鳴り響く
奇妙な夜の
北西端から
南西端まで
強く、伸びやかに

周囲はその響きを吸収し
ようやく
周波数を落ち着かせる

何とも奇妙な夜だ
まだ、消えるな
もう、少しだけ

（…あなたなのね）

（…そう、なんだろうな
　…もう少し、踊ってくれないか？）

（…駄目、駄目よ…
　嗚呼…もう一度…）

…
…

彼女は…
背筋を整え

聴衆に一礼し
万来の拍手とともに
ステージを後にした

俺は
…
…

今夜、一体
何を、聴いていたのか

奇妙なジュースに
酔っていたわけではない。
そこらへんのキノコを適当に
食べてしまったわけでもない。

薬草学の破られた頁
その一旦が目の前に現れたような気がした。

会陰と百会がじんじんする。
心と身体は繋がっており
陰と陽が確かに結びついた
そんな感覚が続いている。

…彼女の舞いを媒介にして

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