ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww

刺狼(しろ)

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マッドサイエンティスト

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カルラ達が城へ呼び出された朝、俺はお気に入りの棺桶ベッドで眠りに就いていた。
とは言っても眠気はなかなかやってこず、どのくらいそうしていたかはもう分からない。微睡みの中で、ぼんやりと物思いに耽っている。

『もしその月日を待たずに俺が死にそうな感じなら、俺の魂が朽ちる前に、俺の心臓を貰ってくれ。リリィを独りにしないために、俺の魂を継いでほしい』

敵の拠点で、一方的に押し付けたカルラとの約束。我ながら思い切った発言だとは思う。
あの日から、俺は自身の終わりを無意識に考えてしまうようになっていた。

真祖の心臓について知ったら、リリィは何て言うだろうか。

「きっと、私の魂をあげるって言っちまうんだろうな……」

だから、カルラと俺の間だけで約束しなきゃいけない。
それに、リミットまで生きていられたらそれでいいんだ。誰かに俺の魂を背負わせることもしなくていい。

ネガティブになってしまうのはどうしようもないが、このまま考え込んでも仕方ない事だ。
そう思って、気分を変えるためにベッドの蓋を開けた。日が高く登っている。もう昼を回ったらしい。

「そろそろリンドウが帰ってくるな……起きるか」

体の表面に闇属性の魔力を纏って陽光から身を守ると、家の扉が開いた音が聞こえる。外の庭から聞こえるのは、カルラの使い魔達とルキが楽しそうに笑う声だ。

「ん……おにい、さま」

「まだ昼だ。寝てな」

「ふぁい……」

物音で寝ぼけて起きたリリィを棺桶ベッドの蓋越しに撫でると、一階へ降りていく。

「やぁヴァンくん、調子はどうかな」

「見て分かるだろ。ていうか何だ?その荷物」

「そうだね。やはり日中は苦手のようで。
これは魔王軍へ与する組織の幹部……同時に、帝を務めていた人間のサンプルだ。本体ごと持ってくるのは骨が折れるからねこうして、必要な素材だけを選んできたというわけだ」

術式の施された鞄ではないようで、膨らんだ本体から紙や何かがはみ出している。
必要な素材だけを、という不穏な表現には不気味さを感じるがコイツはそういう人間なのだと納得はしている。

「今日はソレを使って何をするんだ?」

「君にも手伝って貰う予定だ。話は研究室でしよう」

足早に自室へ向かうリンドウの足取りは軽やかだった。今、テンション高いんだろうな。

「さぁまずは、持ち帰った材料を見てほしい」

「うげェ……」

リンドウ自らのデスクに整列する、特殊な液体に浸され瓶詰めされた心臓、眼球、魔核、神経や血管、何処かの指先。透明な袋には毛髪。そして、血を入れた小瓶が五つ。

「遺伝子情報の編集が著しく施され、その影響で変質した部位だちなみに、指先は肉と骨の代表として持ってきたに過ぎない。

そして。この人物から発見された人外のゲノム因子……ヴァンくん、何だと思うかな?」

並べられたモノ達を順に見ると瞳が黄色く、爬虫類のように瞳孔が縦に走っているのを見た。

「知らねェよ。トカゲとかか?」

「不正解。彼は【サラマンダー】と呼ばれる火竜種の幼体の因子を埋め込まれているんだ」

「なんで幼体なんて分かるんだ?」

「現物は見れていないが図鑑によれば、成体になると瞳孔は丸くそして、青く変化する。

血液と魔核から抽出した情報と照らし合わせると、埋め込んだ因子はサラマンダーでありながら成体に見られない瞳の形成が表出しているつまり、幼体だということが分かった。ということだね」

「ほォ……なんか分からんがすげェ」

魔王軍もやってることはかなり変態じみているが、やはりあの変な笑い方のダレインとかいう男が関与しているのは間違いなさそうだと、リンドウを見て思った。

俺の薄いリアクションを気にも止めず、リンドウは語り続けた。

「幼体の因子を埋め込むメリットは二つ。まず、成長しきっていないから他生物との親和性が成体よりも少しだけ高いことそれから、本体に馴染むとその成長に合わせて進化していくという点だ」

リンドウは、魔核を詰められた瓶を指先で軽く弾く。

「目視で確認出来る人間との相違点それは、魔核の色と形状にある。この世界の人間の魔核は【魔力経絡】も含めて薄い桃色、本体は球形であることに対し、魔族や魔物の魔核は黒ずんだ赤い正方形であり、そこから全身に延びる魔力経絡は末端に行くまでの間に白へと変色している」

とても楽しそうに語るリンドウは、コツコツと瓶の蓋を爪先で順に叩きながら俺の側までやってきた。

「この素材を、以前私が捕まえたサンプルに移植して起動させたい。君にはソレを手伝って欲しいんだ」

「具体的には?」

「君は血を操る能力があると言っていたね。他者に対しても可能なのかな?」

「俺の能力で操れるのは自分の血だけだ。残念だったな」

リンドウは数瞬考える素振りを見せたが、すぐに次の案を提示した。

「ならば君の血をこの血液サンプルに混ぜれば可能ではないかな?試しにやってみなければ」

まるでパーティーの準備をするかのように楽しげに、リンドウは手術台に一体の魔族を運ぶ。これは初めて見せられた、コイツが弄り回した魔族。他生物の魔核を埋め込んだ実験体だった。

「よく腐らねェな……」

「勿論だよ何故なら、彼女は意識こそ無いが生きている。カルラくんがイヴに接触する以前の状態と酷似しているんだ」

「そうだったな……とりあえず、俺の血をコレに入れりゃいいんだな?」

「ああ、頼んだよ。施術が終わるまで……そうだな、そのソファで良ければ寛いでいてくれたまえ」

リンドウが指差した箇所には、年季の入った革の長ソファが置かれていた。くたびれたクッションもあいまって、あまり寝心地は良くなさそうだが。

その後、体調不良を訴えるシャルとオルガをカノンが連れてきたり、昏睡状態のカルラが搬送されてきたりと騒がしかった。

「驚いたね……毒の類は効かない体だというのに」

「いや、毒っつーか……ルキの話から考えると『相当なショックを受けて気絶した』って所だな」

「ははっ!メンタルばかりはレムレス細胞といえど簡単には鍛えられないからねぇ。カルラくんにも耐え難い事はあるのか……不思議だ」

「あぁwww舌がwww溶けちゃうのぉwwwwらめぇwwww死んじゃうwwwwww」

「ハッキリ寝言喋るんだなコイツ。悪夢を見てる表情には見えねェが……不気味だから起きろッ」

軽く頭をはたいてやると、ビクッ!と体を跳ねさせてカルラが意識を取り戻した。

「ファッ?!何だよお兄たまかwww美人のお姉さんからのビンタじゃないとかwwwwオォウシットwwww」

「おう。寝言が気持ち悪ィから起こした」

「サーセンwwwwwwとりあえずコーヒ、いやカフィを頂こうか?www目覚めのwww一杯はwww欠かさないようにしているんだwwwwww」

「テメェで淹れろ」

本当にこんな奴に俺の魂を託して良いものか、不安になってきた。
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