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イヴ
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カルラがお仕事に出てから、イヴはシャルとお留守番中。
この町に来たときに行った、ユーギジョーにまた行きたいって言ったけど、ダメっていわれた。
「暇だねーイヴー」
「うん。ひま。おやつも、もう無い」
「はぁ~……ご主人様、早く帰ってこないかなぁ♡」
「うー」
イヴはベッドでゴロゴロしながら、ぼーっとしてる。シャルは、カルラの事をお喋りするとき、すごく可愛い顔になる。
顔がコロコロ変わって面白い。
「シャル、また可愛い顔した」
「そうかなぁ?えへへ、ありがと♡」
「お腹すいた」
頭を撫でられると、お腹が鳴った。もうすぐおやすみの時間だけど、今日はなんだか眠くならない。きっと、おやつが足りなかったんだ。
「イヴは食いしんぼだねぇ。ん~、ご飯行くくらいならいいのかなぁ?」
「いい。カルラもたぶん許可する」
「だよねー♡どっか食べにいこ♪」
「やった!ごはん!」
ベッドから起きると、シャルは髪を直してくれた。
なんか、お姉ちゃんみたいだと思った。イヴにはお姉ちゃんが居たのかわからないけど。たまにこういうこと考えると、頭がズキッとする。
「髪長いねぇイヴ。顔にかかって見辛くない?」
「だいじょうぶ」
「そっか。じゃ、とりあえずご飯食べに行こー!」
「おー」
靴を履いて部屋を出ると、町に行く。
お昼よりもキラキラの光が一杯で、人も沢山いて、とっても綺麗。
シャルと手を繋いで歩くと、今度はお母さんみたいと思った。また頭がズキッとした。
「おっ、ここ美味しそう♡食べ放題だって!」
「食べほーだい……?!」
「沢山食べても払うお金は一緒なんだって!ここにしよ♡」
「相手にとってフソクなし」
お肉の絵が書かれた看板を見て、またお腹が鳴った。イヴはお肉も大好きなので、沢山食べれると嬉しい。
シャルに手を引かれてお店に入ろうとしたとき、甘い香りがした。シャルもそれに気が付いて止まったから、背中に顔がぶつかって痛かった。
「シャルちゃん見~つけた♡」
「まさか……その声……?!」
一緒に振り返ると、ピンクの長い髪をしたシャルに似てる女の人が立ってた。こっちを見て、ニコニコしてる。
「誰?」
「その子のお姉ちゃんです♡仲良くしてくれてるのね、勇者ちゃん?」
「なんで……?なんでお姉ちゃんが?!」
「こんなとこでお喋りしたら目立っちゃうからぁ、場所変えよっか♡ほいっと」
シャルのお姉ちゃんが指を振ると、お肉の店が無いところに飛んできた。おなか空いてたのに、邪魔された……。
「何のつもり?!シャルは戻らないよ!」
「こらこら、わがまま言っちゃダーメ♡シャルちゃんはお姉ちゃんの大事な妹なんだから♡」
「何が……ッ、大事なの……?あんなことしといて……!!」
お姉ちゃんとケンカを始めたシャルの手は、さっきまでぽかぽかだったのに今は冷たくなってきた。凄く強く、ぎゅってしてきて震えてる。
かわいそう。
「あっはっはっはっはっ!だからぁ、今度はもっと良くしてあげるってば。たくさんたくさん可愛がって上げるよ?ふふっ♡」
「い、いや……もう、やだ……!」
シャルのお姉ちゃんが、こっちに来る。ニコニコしてるけど、目は怖いまま。変な顔。
イヴが助けなきゃ。
「シャルのこと、いじめないで」
シャルの前に立って、イヴは手を広げた。
カルラが言ってた、『大事なひとは全力で守る』をやらなきゃいけない。
イヴが前に出ると、シャルのお姉ちゃんは怒ったような顔をする。
「君には興味ないんだけどぉ……どいてくれる?」
「だめ。シャルが、嫌がってる」
「イヴ……」
首を振って言い返すと、シャルのお姉ちゃんはハァっと息を吐いてイヴの顔に近付いてきた。とっても怖い顔をして。
「あのね勇者ちゃん。この子はアタシの妹なの。家族は一緒に居なきゃいけないの。わかるかなぁ?」
「家族……じゃない。だって、シャルがこわがってる。シャルの家族は、イヴたちだよ!」
イヴには、お父さんもお母さんもいない。
だけど、はかせがいて、カルラもカノンもシャルも、ターニャとか皆がいて、毎日が楽しい。
いっしょに居て楽しいのが家族。だから、守る。
「あっそ……言っても分かんないなら、力尽くで連れて帰るしかないかぁ」
「シャル、カルラを呼んできて……イヴ、頑張るから」
「でも、イヴ……!」
「大丈夫。イヴ、つよい」
シャルはきっとお姉ちゃんとは戦えないんだと思ったから、カルラを呼んでもらった。いまは、このひとから逃げたほうがいい。
「あーあ、行っちゃった……まぁ、勇者は倒せって言われてるから、先にコッチから片付ければいっか」
「どんとこい」
シャルと話してるときみたいな、楽しそうな喋り方じゃなくなったお姉ちゃんは、槍を出してイヴに向けてきた。
前に森で戦ったときから、イヴのからだには皆と同じように魔力があるのがわかった。それを使って、戦えばなんとかなる。
「すばしっこーい♪ネズミみたいね」
「ねずみ、かわいい」
槍を避けて、両手に集めた魔力をシャルのお姉ちゃんに向かって投げる。
「魔力の塊……?魔法は使えないみたいだねぇ♡」
「うん」
何回も突き出される槍でたまに傷付けられながら、イヴも魔力を投げてやり返す。少しの傷はすぐ治るから、気にしないけど。
するとシャルのお姉ちゃんは、何か思い付いたみたいにイヴを見てニヤッとすると、槍をしまった。
「ねぇ、イヴちゃんだっけ?シャルのこと渡したくないんだよね」
「うん。だって、シャルはお姉ちゃんを怖がって嫌がってるから」
「優しいんだねぇ。そうだ、それならさ、キミが代わりになってくれないかな?ふふっ♡」
お話しながら、シャルのお姉ちゃんが歩いてきた。とっても嫌な感じがする。
「アタシはね、昔からあの子を可愛がってあげてたんだけどぉ……それが凄く嫌だったみたいなの」
「何……したの?」
「えー?聞いちゃう?それはね……」
楽しそうなのに、悪い顔に見えた。背中がゾワゾワする。三日月みたいに笑う口が怖かった。
「拷問♡」
「ごう……もん」
足が下がった。どんどん近付いてくる。
「そう。最初は出来心だったの♡でもヤリ始めたらもう止まんなくてっ!シャルちゃんがボロボロになる度に綺麗に治してあげて、また最初から♡
生まれたときからお姉ちゃんお姉ちゃんって慕ってくれた子が、絶望したみたいな顔して泣き叫ぶの見るともう……っ、あはは!!」
「ひどい……」
こんなの、やっぱり家族じゃない。おかしいと思った。
頭がズキズキする。
「もう許してー!から、殺してー!に変わる瞬間がホントに堪んなくてさ♡
……でも、逃げられちゃったの。魔王軍になんか入れて外に出すからいけないんだよね。
今は代わりに人間を攫って遊んでるけど、あいつらすぐダメになっちゃうからさ……だから、イヴちゃんみたいにすぐ怪我が治る子ならあの子の代わりになれると思うの!どうかな?」
「やだ……それから、そんな事……しちゃだめ」
シャルのお姉ちゃんのお話を聴くと、頭が痛くなって、イヴの知らない思い出が頭の中にたくさん浮かんできた。
『君に過去はない。この瞬間、目の前の光景が初めての景色だよ、イヴ』
はかせが言った。
イヴは水の中から出されてそう言われた。なのに、
『#∆%§が生まれてきてくれて、本当に嬉しいよ』
『大事な娘#∆%§』
男の人と女の人がイヴを抱きしめてくれた。
『どうか生きてくれ』
『なんでこの子がこんな目に……』
また別の人たち。男の人と女の人。
『π℉\№が好きだよ』
『¶§£€は大事な』
わからない。覚えてないのに、胸のところがぎゅうっとなって、苦しくなって目と鼻が温かくなって、頭がぼーっとして。
シャルのお姉ちゃんの声も聴こえたけど、うまく喋れなくて。
「あれー?大丈夫?」
「パパと……ママと、オトモダチと……」
何もわからなくなった。目を閉じるまえ、悲しそうな顔をした男の人と女の人、血が付いた女の子、背中を向けてる人達が見えた。
「何……?様子が変だねぇ」
「お薬、のまなきゃ」
イヴは、はかせから貰ったお薬を噛む。
すぐ体が熱くなって、苦しいのが無くなった。体の中から魔力がどんどん溢れてくるのがわかる。
今はシャルのお姉ちゃんを、倒さなきゃ。守らなきゃ。
──ドゴォッ!!
「なっ?!」
「シャル……わたさない……」
手に集まった魔力を、シャルのお姉ちゃんに向けて撃った。お腹に当たって弾けて、飛んでいく。
「あは、ははッ」
「くっ……!!さっきのとは段違い……っ!何が起きてっ」
──バゴッ!!
今度は走ってお姉ちゃんのところへ行くと、手を翳して魔力と一緒に叩き付ける。
「シャルの、お姉ちゃん……ははっ」
「ヤバいかもコレ……っ!しかもこの魔力の質は……きゃあっ!!」
溢れてくる魔力が、イヴの体を包んでいく。シャルを助けて、皆で一緒にお花見するから、早く終わらせなきゃ。
「ばいばい、シャルのお姉ちゃん」
たくさん魔力の玉を作って、全部をぶつけた。
──ドガガガガガァッ!!!!
「あああああああああッ!! 」
シャルのお姉ちゃんが悲鳴を上げながら、地面を跳ねて飛んでいく。イヴは、この人を倒さなきゃいけない。
また新しく玉を作ったとき、遠くからカルラの声が聞こえた。
「イヴっちぃいいいいwwwwww」
「カ、ルラ……」
「あ?そこに倒れてんのリリスさんじゃねwwwww服がボロボロでエチチwwwwww」
カルラの声を、姿を見て、凄く安心した。なのに、魔力が止まらなくて。
「カルラ……シャルのお姉ちゃん……倒さなきゃ……連れていかれちゃう」
「もうダウンしてるのではwwwwww」
「だめ、かぞく……まもる……」
安心したのに、魔力がどんどん溢れてきて、風船みたいに大きくなっていく気がした。
「どうしたイヴっち!なんか変だぞ?!」
「わ、わから……ない……魔力、溢れてる……。ミンナを、たすけな……きゃ」
そこから、何も分からなくなった。
カルラがお仕事に出てから、イヴはシャルとお留守番中。
この町に来たときに行った、ユーギジョーにまた行きたいって言ったけど、ダメっていわれた。
「暇だねーイヴー」
「うん。ひま。おやつも、もう無い」
「はぁ~……ご主人様、早く帰ってこないかなぁ♡」
「うー」
イヴはベッドでゴロゴロしながら、ぼーっとしてる。シャルは、カルラの事をお喋りするとき、すごく可愛い顔になる。
顔がコロコロ変わって面白い。
「シャル、また可愛い顔した」
「そうかなぁ?えへへ、ありがと♡」
「お腹すいた」
頭を撫でられると、お腹が鳴った。もうすぐおやすみの時間だけど、今日はなんだか眠くならない。きっと、おやつが足りなかったんだ。
「イヴは食いしんぼだねぇ。ん~、ご飯行くくらいならいいのかなぁ?」
「いい。カルラもたぶん許可する」
「だよねー♡どっか食べにいこ♪」
「やった!ごはん!」
ベッドから起きると、シャルは髪を直してくれた。
なんか、お姉ちゃんみたいだと思った。イヴにはお姉ちゃんが居たのかわからないけど。たまにこういうこと考えると、頭がズキッとする。
「髪長いねぇイヴ。顔にかかって見辛くない?」
「だいじょうぶ」
「そっか。じゃ、とりあえずご飯食べに行こー!」
「おー」
靴を履いて部屋を出ると、町に行く。
お昼よりもキラキラの光が一杯で、人も沢山いて、とっても綺麗。
シャルと手を繋いで歩くと、今度はお母さんみたいと思った。また頭がズキッとした。
「おっ、ここ美味しそう♡食べ放題だって!」
「食べほーだい……?!」
「沢山食べても払うお金は一緒なんだって!ここにしよ♡」
「相手にとってフソクなし」
お肉の絵が書かれた看板を見て、またお腹が鳴った。イヴはお肉も大好きなので、沢山食べれると嬉しい。
シャルに手を引かれてお店に入ろうとしたとき、甘い香りがした。シャルもそれに気が付いて止まったから、背中に顔がぶつかって痛かった。
「シャルちゃん見~つけた♡」
「まさか……その声……?!」
一緒に振り返ると、ピンクの長い髪をしたシャルに似てる女の人が立ってた。こっちを見て、ニコニコしてる。
「誰?」
「その子のお姉ちゃんです♡仲良くしてくれてるのね、勇者ちゃん?」
「なんで……?なんでお姉ちゃんが?!」
「こんなとこでお喋りしたら目立っちゃうからぁ、場所変えよっか♡ほいっと」
シャルのお姉ちゃんが指を振ると、お肉の店が無いところに飛んできた。おなか空いてたのに、邪魔された……。
「何のつもり?!シャルは戻らないよ!」
「こらこら、わがまま言っちゃダーメ♡シャルちゃんはお姉ちゃんの大事な妹なんだから♡」
「何が……ッ、大事なの……?あんなことしといて……!!」
お姉ちゃんとケンカを始めたシャルの手は、さっきまでぽかぽかだったのに今は冷たくなってきた。凄く強く、ぎゅってしてきて震えてる。
かわいそう。
「あっはっはっはっはっ!だからぁ、今度はもっと良くしてあげるってば。たくさんたくさん可愛がって上げるよ?ふふっ♡」
「い、いや……もう、やだ……!」
シャルのお姉ちゃんが、こっちに来る。ニコニコしてるけど、目は怖いまま。変な顔。
イヴが助けなきゃ。
「シャルのこと、いじめないで」
シャルの前に立って、イヴは手を広げた。
カルラが言ってた、『大事なひとは全力で守る』をやらなきゃいけない。
イヴが前に出ると、シャルのお姉ちゃんは怒ったような顔をする。
「君には興味ないんだけどぉ……どいてくれる?」
「だめ。シャルが、嫌がってる」
「イヴ……」
首を振って言い返すと、シャルのお姉ちゃんはハァっと息を吐いてイヴの顔に近付いてきた。とっても怖い顔をして。
「あのね勇者ちゃん。この子はアタシの妹なの。家族は一緒に居なきゃいけないの。わかるかなぁ?」
「家族……じゃない。だって、シャルがこわがってる。シャルの家族は、イヴたちだよ!」
イヴには、お父さんもお母さんもいない。
だけど、はかせがいて、カルラもカノンもシャルも、ターニャとか皆がいて、毎日が楽しい。
いっしょに居て楽しいのが家族。だから、守る。
「あっそ……言っても分かんないなら、力尽くで連れて帰るしかないかぁ」
「シャル、カルラを呼んできて……イヴ、頑張るから」
「でも、イヴ……!」
「大丈夫。イヴ、つよい」
シャルはきっとお姉ちゃんとは戦えないんだと思ったから、カルラを呼んでもらった。いまは、このひとから逃げたほうがいい。
「あーあ、行っちゃった……まぁ、勇者は倒せって言われてるから、先にコッチから片付ければいっか」
「どんとこい」
シャルと話してるときみたいな、楽しそうな喋り方じゃなくなったお姉ちゃんは、槍を出してイヴに向けてきた。
前に森で戦ったときから、イヴのからだには皆と同じように魔力があるのがわかった。それを使って、戦えばなんとかなる。
「すばしっこーい♪ネズミみたいね」
「ねずみ、かわいい」
槍を避けて、両手に集めた魔力をシャルのお姉ちゃんに向かって投げる。
「魔力の塊……?魔法は使えないみたいだねぇ♡」
「うん」
何回も突き出される槍でたまに傷付けられながら、イヴも魔力を投げてやり返す。少しの傷はすぐ治るから、気にしないけど。
するとシャルのお姉ちゃんは、何か思い付いたみたいにイヴを見てニヤッとすると、槍をしまった。
「ねぇ、イヴちゃんだっけ?シャルのこと渡したくないんだよね」
「うん。だって、シャルはお姉ちゃんを怖がって嫌がってるから」
「優しいんだねぇ。そうだ、それならさ、キミが代わりになってくれないかな?ふふっ♡」
お話しながら、シャルのお姉ちゃんが歩いてきた。とっても嫌な感じがする。
「アタシはね、昔からあの子を可愛がってあげてたんだけどぉ……それが凄く嫌だったみたいなの」
「何……したの?」
「えー?聞いちゃう?それはね……」
楽しそうなのに、悪い顔に見えた。背中がゾワゾワする。三日月みたいに笑う口が怖かった。
「拷問♡」
「ごう……もん」
足が下がった。どんどん近付いてくる。
「そう。最初は出来心だったの♡でもヤリ始めたらもう止まんなくてっ!シャルちゃんがボロボロになる度に綺麗に治してあげて、また最初から♡
生まれたときからお姉ちゃんお姉ちゃんって慕ってくれた子が、絶望したみたいな顔して泣き叫ぶの見るともう……っ、あはは!!」
「ひどい……」
こんなの、やっぱり家族じゃない。おかしいと思った。
頭がズキズキする。
「もう許してー!から、殺してー!に変わる瞬間がホントに堪んなくてさ♡
……でも、逃げられちゃったの。魔王軍になんか入れて外に出すからいけないんだよね。
今は代わりに人間を攫って遊んでるけど、あいつらすぐダメになっちゃうからさ……だから、イヴちゃんみたいにすぐ怪我が治る子ならあの子の代わりになれると思うの!どうかな?」
「やだ……それから、そんな事……しちゃだめ」
シャルのお姉ちゃんのお話を聴くと、頭が痛くなって、イヴの知らない思い出が頭の中にたくさん浮かんできた。
『君に過去はない。この瞬間、目の前の光景が初めての景色だよ、イヴ』
はかせが言った。
イヴは水の中から出されてそう言われた。なのに、
『#∆%§が生まれてきてくれて、本当に嬉しいよ』
『大事な娘#∆%§』
男の人と女の人がイヴを抱きしめてくれた。
『どうか生きてくれ』
『なんでこの子がこんな目に……』
また別の人たち。男の人と女の人。
『π℉\№が好きだよ』
『¶§£€は大事な』
わからない。覚えてないのに、胸のところがぎゅうっとなって、苦しくなって目と鼻が温かくなって、頭がぼーっとして。
シャルのお姉ちゃんの声も聴こえたけど、うまく喋れなくて。
「あれー?大丈夫?」
「パパと……ママと、オトモダチと……」
何もわからなくなった。目を閉じるまえ、悲しそうな顔をした男の人と女の人、血が付いた女の子、背中を向けてる人達が見えた。
「何……?様子が変だねぇ」
「お薬、のまなきゃ」
イヴは、はかせから貰ったお薬を噛む。
すぐ体が熱くなって、苦しいのが無くなった。体の中から魔力がどんどん溢れてくるのがわかる。
今はシャルのお姉ちゃんを、倒さなきゃ。守らなきゃ。
──ドゴォッ!!
「なっ?!」
「シャル……わたさない……」
手に集まった魔力を、シャルのお姉ちゃんに向けて撃った。お腹に当たって弾けて、飛んでいく。
「あは、ははッ」
「くっ……!!さっきのとは段違い……っ!何が起きてっ」
──バゴッ!!
今度は走ってお姉ちゃんのところへ行くと、手を翳して魔力と一緒に叩き付ける。
「シャルの、お姉ちゃん……ははっ」
「ヤバいかもコレ……っ!しかもこの魔力の質は……きゃあっ!!」
溢れてくる魔力が、イヴの体を包んでいく。シャルを助けて、皆で一緒にお花見するから、早く終わらせなきゃ。
「ばいばい、シャルのお姉ちゃん」
たくさん魔力の玉を作って、全部をぶつけた。
──ドガガガガガァッ!!!!
「あああああああああッ!! 」
シャルのお姉ちゃんが悲鳴を上げながら、地面を跳ねて飛んでいく。イヴは、この人を倒さなきゃいけない。
また新しく玉を作ったとき、遠くからカルラの声が聞こえた。
「イヴっちぃいいいいwwwwww」
「カ、ルラ……」
「あ?そこに倒れてんのリリスさんじゃねwwwww服がボロボロでエチチwwwwww」
カルラの声を、姿を見て、凄く安心した。なのに、魔力が止まらなくて。
「カルラ……シャルのお姉ちゃん……倒さなきゃ……連れていかれちゃう」
「もうダウンしてるのではwwwwww」
「だめ、かぞく……まもる……」
安心したのに、魔力がどんどん溢れてきて、風船みたいに大きくなっていく気がした。
「どうしたイヴっち!なんか変だぞ?!」
「わ、わから……ない……魔力、溢れてる……。ミンナを、たすけな……きゃ」
そこから、何も分からなくなった。
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