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エルフの里

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ギルドで正式に依頼を済ませるには契約金が要るのだが、彼女の状況から判断したギルド側が後払いの処理をし、現在は樹海を荒らしている連中のことについて情報を整理すべく、別荘で皆で机を囲んでいる。

「ほう、特徴的な耳だね。君がエルフ族か」

「あ、あぁ。オルガだ、よろしく頼む」

「私はリンドウ。勇者として呼ばれたこの世界で、色々と研究させてもらっているよ。君も非常に興味深い」

「おいリンドウ、解剖とか言うなよwww」

俺の一言にギョッとした顔を見せたオルガさんだったが、冗談として受け取ったようで話題を切り替えた。

「私が樹海で遭遇した連中は三人組だったが、恐らく別行動している者たちも居るだろう。

捕らえられてからは魔力を極限まで抜かれて体の自由も利かない状態だったから詳しくは分からないが……」

魔力を持つ人間がそれを消費すると、その体は消費量相応の疲労状態となる。
生まれた時から魔力によって支えられている体であるが故に、無くなれば一気に弱体化するのだろうとはリンドウの考察である。

「樹海の中の里は特殊な結界に守られている。私は薬草を採取している時だったから運悪く見つかってしまったが……奴等は結界のことも知っているようだったし、とにかく里が心配なんだ。どうか、力を貸してくれ」

「もちっすよオルガ姉さんwww魔族のことで大変なこのご時世に悪いこと許さないwwww」

「決まりね。準備して向かいましょ」

「私も同行させてくれたまえ」

リンドウはあわよくばエルフ族の血液やら何やら採取が目的だろうなと思いつつ、その場に居た全員が続いて同行を申し出てきた。

「お兄様、リリィ達は?」

「転移頼まれてるし、たまにはヒト助けもいいだろ」

「乗りかかった船ってやつだな、俺も行くぜ」

「イヴも」

「クックックッ、僕も個人的に気になることがあるので、是非御一緒に」

そんなわけで、ヴァンの転移魔法でサンクトス樹海へ俺達は降り立った。

「優しいぃぃwww森にはぁぁあwww神話がぁwww生きてぇぇえるぅうwwwwww」

「いきなり変な歌歌い出してどうしたのよ……」

「カノンさんが知らないのは無理もないwwwこの荘厳で神聖で伝統あるCMソングをwwwww」

「あー、なんか知ってるわそれ。神社かなんかのやつだろ」

「テラあやふや知識wwwwww」

サンクトス樹海は昼間でも陽の光も殆ど遮ってしまう程の鬱蒼とした場所で、オルガ姉さんの案内無しでは秒で遭難するのは明らかだった。

「念の為、私が連中に遭遇した場所を経由して里へ向かう。皆、はぐれないようにしてくれ」

オルガ姉さんが魔法で灯りを灯すとそれはひとりでに先頭を漂い始めた。火の玉ですねわかります。

草木ばかりが目に入って、正直さっきからずっと同じ所をぐるぐるしてるような気がしてならないが、ただ歩き続けるのも暇なのでオルガ姉さんに話しかけてみることにした。

「オルガ姉さん、エルフ族って魔法が得意とか寿命めちゃくちゃ長いとか言われてるけど、実際どうなんですか?あとおっぱいの大きエンッ!!!!」

──ベゴォ!!

最後の質問に反応したカノンさんから受けた拳骨のお陰で潰れたカエルのような声を上げてしまったでござるよwwwwww

「何を言い出すかと思えばアンタはっ!」

「ほんと気持ち悪いです!クソ人間!!」

続けて、リリィちゃんの魔力弾も後頭部に命中しました。マジ痛いってばよ。

「いやだって!気になるじゃないですか!!森の恵みってすげぇなって!!!俺感動したんだよ!!!!おっぱいでけぇって!!!!」

「カルラくん、静かにしたまえ」

勢いに任せてみたが効果はなかった。メンバー全員まさかの無口だし、コミュ障なりに頑張ったんですけどね。(すっとぼけ)

「は、はは……。まぁ、エルフ族の寿命は平均で300年程だ。魔力量は人間よりも多いだろうな。それからむ、胸の大きさは……その……」

「オルガさん、それは言わなくていいぞ」

「カルラ、さいてい」

「そ、そうか、良かった。もうすぐそこに里がある、皆無事だといいが……」

恥ずかしそうに顔を俯けるオルガ姉さんがエロ過ぎてカルラはフルオッキした。
そんなやり取りをしている中で、ヴァンとスッキーが足を止めた。

「お前ら、この周辺に人の魔力反応だ」

「噂の奴隷商人、ですかね」

二人が警戒しながら周囲を見渡すと、俺達を取り囲むようにぞろぞろと武装した集団が顔を出す。
賊というよりは、部隊のような。同一の造りの軽装鎧と、目から下を布で隠している。

「そこのエルフの女を渡せ」

「こいつら……!着けてきてたの……?!」

「みてぇだな。どうする?カルラ」

人数では圧倒的に不利だと思われているからか、リーダー格らしき人物がナイフを構えながらゆっくりと迫ってきた。

「渡すわけないですよねwww
助けたらお礼におっぱいのサイズ測らせてくれるって!このオルガ姉さんは約束してくれたんだ!!俺の見立てではカノンさんとほぼ同じHカップッ!!絶対に守るッ!!」

「いや、してないが?!」

「カルラ!あとで覚えてなさい!!」

「ふざけたガキだ……!お前ら、エルフ以外は殺して構わん。やれ!」

号令一下、およそ二十数人が武器を手に襲いかかってきた。
俺は咄嗟に全身を強化すると、敵の懐に入り込んで空中へ投げ飛ばす。

「サテライト人間砲弾ッ!!」

「あがぁ゛っ!」

跳躍して追い付くと、首を掴んで地上の敵目掛けて叩き付けやった。

──ボギャァアッ!!

骨の砕ける音を響かせて三人が戦闘不能に陥る。残りの敵も各個撃破されており、リーダー格と思われる男が、ヴァンによって踏まれていた。

「アンタ、こいつらのリーダーなのか?エルフの拉致が目的なんだろうが、相手が悪かったな」

「ぐっ、クソッ!俺は探索部隊の指揮をしていただけに過ぎない……!」

「クックックッ、それは良いことを聴きました。僕はこの男を使って残存する敵を始末してきますよ」

その後、二手に分かれて里の様子見と索敵の2チームで動くことになった。

スキア、ヴァン、リリィちゃん、タカトの四人が索敵を買って出てくれたので、オルガ姉さんの案内で勇者パーティはエルフの里へ足を踏み入れた。

「おぉ、ここがエルフの里……初めて見れて感動した、と言いたいところだが……」

「ふむ、どうやらオルガくんの不安は的中してしまったようだね」

「くっ……!遅かったか……!!」

「めちゃくちゃになってる」

「酷い……」

リンドウを除き、目の前の光景に俺達は言葉を失った。
家屋は焼かれ、血痕がいたるところに飛散している。人の気配は感じられなかった。

握り締められた彼女の拳は、此方が心を痛めるほどに白くなっている。

「奴らの中に、結界を破れる者が居たということか……しかし、どうやって……」

「姉さん、もしかしたら隠れてやり過ごせた人もいるかも知れないし、俺ちょっと探して来ますねwww」

そう言って踵を返した瞬間。
軽薄そのものと言っていい、場違いな男の声が響き渡った。

「おっ、エルフちゃんはっけーん!いらっしゃいませ~!」

全員が一斉にそいつを見ると、浅葱色の髪を項で纏めた若い男が、ムカつくニヤケ面で立っていたのだ。
両側には頭の悪そうな色黒で派手な金髪の女が二人。似たような表情で俺達を嘲るように声を荒らげた。

「バカじゃん?!捕まりに来たわけぇ?!」

「キャハハ!!ウケるんですけど~!」

「こいつ等……今や絶滅危惧種とされる黒ギャル……っ!?」

「カルラ、たぶん違う」

既に里へ入り込んでこの惨劇を起こしているということは、かなりの実力者には違いないだろうが、このやかましい奴らには負ける気がしねぇwwwwww

「これ以上好きにはさせないわ」

「お前らが拐った人達も返して貰わないとwwww」

俺とカノンさんは、オルガ姉さんを守るように前に出た。ふと横目に見るカノンさんの表情は、今まで見たこともないような険しいものになっていた。

「はははっ!つーか、あれー?なんか赤髪のおねえさん見覚えあるなぁ?俺の事も薄々分かってんじゃね?なぁ、カノン・・・ちゃん」

「えっ、知り合いなの?!元カレか何かですかwww」

「アンタやっぱり……!!ギースッ!!」

ギースと呼ばれた男がおどけて肩を竦めると、カノンさんは此方が止める間もなくギースへ殴りかかった。

「絶対許さないッ!!」

「ちょ、カノンさん?!」

「こっわ!二人共よろしく~」

葛葉紘汰よろしく絶許ムーブをかますカノンさんの突進からの拳は、止めた方の掌が痛そうな、弾けた音を上げて黒ギャル二人に止められた。

「いったぁ~。マジ痛いんですけど」

「調子乗んなよブス!」

「くっ!」

押し返されて着地したカノンさんは、憎悪と怒りで満たされた顔をしておられた。いつもイジッて怒ってくるのとは違う、本物の殺意。
あとカノンさんのことブスって言った方の黒ギャル許すまじwwwwww

「カノンくん、少し冷静になりたまえ。あの人物と一騎打ちがしたいのなら、私達も協力させてもらおう」

「もちついて」

「でもアイツは……っ」

イヴっちの抱き付きで二回目の無謀突進を阻止すると、オルガ姉さんも続く。

「あの男とは、浅からぬ因縁があるようだな。私達も加勢させてもらう」

「カノンさん、事情はわかんないけど一人で突っ込むより俺達を頼るのがいいwww元カレと二人になりたいんだったらギャルはお任せあれwwww」

「元カレとか、そんな関係じゃないわよ……。でもなんか、少し落ち着いた。ありがとう皆」

邪念を振り払うように頭をふるふるしたカノンさんは、自らの掌に拳を打ち付けて顔を上げた。

「アイツとはサシでやりたいの。黒いのは頼んだわよ」
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