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File.3

リンドウと吸血鬼兄妹

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カルラくん達が出発した後、私はアルカード兄妹を研究室として使用している部屋へ招いた。

最初はだだっ広いだけだったここも、今では私がより研究をしやすいようにデスクや機材が必要な分だけ配置してあり、一番落ち着く空間となっている。

「リンドウ、検査はいいがリリィに傷跡残したら許さねぇぞ」

「ははっ、そこは信用してくれ。私はその手のクレームを受けたことがないんだ」

「胡散臭いです」

信用が無いのも予想が付いていたので特に気にせず、二人にはその辺の椅子へ腰掛けてもらった。

「私はこの世界に来てから、魔核の研究に力を入れているそして、カルラくん達が採取してきてくれた魔物や魔族のサンプルを調べ始めた。

今も興味は尽きない。魔核は魔力を生み、それは君達が魔法を行使する糧となる、そんな素晴らしい臓器だ」

「で、何が言いたい?」

前置きが長かったかもしれない。ヴァンくんが険しい表情で私を軽く睨み付けた。
本題はここから、と切り返して私は手術台に使っていた机のシートを捲る。

「ひっ……」

「何だそりゃ……魔族……なのか……?」

二人が不愉快そうに顔を顰める。そこには、息はあるが微動だにしない魔族が横たわっているからだ。

醜く歪んで剥き出しになった犬歯や、口唇部の局所的な硬質化、漆黒に染まった眼球、全身に所々表出した鱗と羽毛が彼らの表情の原因なのだろう。

「そう、魔族だ。私は魔核の移植を試みたんだそうしたら、このように実験体は別個体の特性を自らの身体に宿し変貌した。

魔核の可能性を試したいんだ、私は。そこで君達に頼みがある」

「実験体になれって事か」

「いや、そうしてくれるなら願ったり叶ったりではあるけど、恐らく君達は拒否するだろうと考えたそこで、血液と細胞の採取をお願いしたいんだ。

君達ヴァンパイアという珍しい個体の魔核の細胞と血液があるだけでも、大分捗るだろうからね
報酬は採血した分の別の血液、でどうかな?」

私が説明と提案を述べると、緊張しているらしいリリィくんの代わりにヴァンくんが口を開いた。

「わかった。俺達に余計なもん埋め込んだり取ったりしねぇなら協力してやる。ついでに健康診断でもしてくれよ」

「お兄様っ、怪しすぎですこの男!とてもそれだけで済むとは……っ!だって、こんな……」

「いや、大丈夫だ。もし何かしようとしても、俺が守ってやる」

実験体をこんなにするような者を信用出来ないと言いたかったようだったが、ヴァンくんは話が早くて助かる。

実際、彼等に不都合になるような事はするつもりがない。協力してくれるなら、その機嫌を損ねるのは得策ではないからね。

こうして交渉は纏まり、早速二人の検査とサンプル回収に漕ぎ着けた。
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