34 / 132
File.3
リンドウと吸血鬼兄妹
しおりを挟む
カルラくん達が出発した後、私はアルカード兄妹を研究室として使用している部屋へ招いた。
最初はだだっ広いだけだったここも、今では私がより研究をしやすいようにデスクや機材が必要な分だけ配置してあり、一番落ち着く空間となっている。
「リンドウ、検査はいいがリリィに傷跡残したら許さねぇぞ」
「ははっ、そこは信用してくれ。私はその手のクレームを受けたことがないんだ」
「胡散臭いです」
信用が無いのも予想が付いていたので特に気にせず、二人にはその辺の椅子へ腰掛けてもらった。
「私はこの世界に来てから、魔核の研究に力を入れているそして、カルラくん達が採取してきてくれた魔物や魔族のサンプルを調べ始めた。
今も興味は尽きない。魔核は魔力を生み、それは君達が魔法を行使する糧となる、そんな素晴らしい臓器だ」
「で、何が言いたい?」
前置きが長かったかもしれない。ヴァンくんが険しい表情で私を軽く睨み付けた。
本題はここから、と切り返して私は手術台に使っていた机のシートを捲る。
「ひっ……」
「何だそりゃ……魔族……なのか……?」
二人が不愉快そうに顔を顰める。そこには、息はあるが微動だにしない魔族が横たわっているからだ。
醜く歪んで剥き出しになった犬歯や、口唇部の局所的な硬質化、漆黒に染まった眼球、全身に所々表出した鱗と羽毛が彼らの表情の原因なのだろう。
「そう、魔族だ。私は魔核の移植を試みたんだそうしたら、このように実験体は別個体の特性を自らの身体に宿し変貌した。
魔核の可能性を試したいんだ、私は。そこで君達に頼みがある」
「実験体になれって事か」
「いや、そうしてくれるなら願ったり叶ったりではあるけど、恐らく君達は拒否するだろうと考えたそこで、血液と細胞の採取をお願いしたいんだ。
君達ヴァンパイアという珍しい個体の魔核の細胞と血液があるだけでも、大分捗るだろうからね
報酬は採血した分の別の血液、でどうかな?」
私が説明と提案を述べると、緊張しているらしいリリィくんの代わりにヴァンくんが口を開いた。
「わかった。俺達に余計なもん埋め込んだり取ったりしねぇなら協力してやる。ついでに健康診断でもしてくれよ」
「お兄様っ、怪しすぎですこの男!とてもそれだけで済むとは……っ!だって、こんな……」
「いや、大丈夫だ。もし何かしようとしても、俺が守ってやる」
実験体をこんなにするような者を信用出来ないと言いたかったようだったが、ヴァンくんは話が早くて助かる。
実際、彼等に不都合になるような事はするつもりがない。協力してくれるなら、その機嫌を損ねるのは得策ではないからね。
こうして交渉は纏まり、早速二人の検査とサンプル回収に漕ぎ着けた。
最初はだだっ広いだけだったここも、今では私がより研究をしやすいようにデスクや機材が必要な分だけ配置してあり、一番落ち着く空間となっている。
「リンドウ、検査はいいがリリィに傷跡残したら許さねぇぞ」
「ははっ、そこは信用してくれ。私はその手のクレームを受けたことがないんだ」
「胡散臭いです」
信用が無いのも予想が付いていたので特に気にせず、二人にはその辺の椅子へ腰掛けてもらった。
「私はこの世界に来てから、魔核の研究に力を入れているそして、カルラくん達が採取してきてくれた魔物や魔族のサンプルを調べ始めた。
今も興味は尽きない。魔核は魔力を生み、それは君達が魔法を行使する糧となる、そんな素晴らしい臓器だ」
「で、何が言いたい?」
前置きが長かったかもしれない。ヴァンくんが険しい表情で私を軽く睨み付けた。
本題はここから、と切り返して私は手術台に使っていた机のシートを捲る。
「ひっ……」
「何だそりゃ……魔族……なのか……?」
二人が不愉快そうに顔を顰める。そこには、息はあるが微動だにしない魔族が横たわっているからだ。
醜く歪んで剥き出しになった犬歯や、口唇部の局所的な硬質化、漆黒に染まった眼球、全身に所々表出した鱗と羽毛が彼らの表情の原因なのだろう。
「そう、魔族だ。私は魔核の移植を試みたんだそうしたら、このように実験体は別個体の特性を自らの身体に宿し変貌した。
魔核の可能性を試したいんだ、私は。そこで君達に頼みがある」
「実験体になれって事か」
「いや、そうしてくれるなら願ったり叶ったりではあるけど、恐らく君達は拒否するだろうと考えたそこで、血液と細胞の採取をお願いしたいんだ。
君達ヴァンパイアという珍しい個体の魔核の細胞と血液があるだけでも、大分捗るだろうからね
報酬は採血した分の別の血液、でどうかな?」
私が説明と提案を述べると、緊張しているらしいリリィくんの代わりにヴァンくんが口を開いた。
「わかった。俺達に余計なもん埋め込んだり取ったりしねぇなら協力してやる。ついでに健康診断でもしてくれよ」
「お兄様っ、怪しすぎですこの男!とてもそれだけで済むとは……っ!だって、こんな……」
「いや、大丈夫だ。もし何かしようとしても、俺が守ってやる」
実験体をこんなにするような者を信用出来ないと言いたかったようだったが、ヴァンくんは話が早くて助かる。
実際、彼等に不都合になるような事はするつもりがない。協力してくれるなら、その機嫌を損ねるのは得策ではないからね。
こうして交渉は纏まり、早速二人の検査とサンプル回収に漕ぎ着けた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
ある日無職を職業にしたら自宅警備員になったのでそのまま働いてみました
望月 まーゆ
ファンタジー
西暦2117年。
突如現れた社会ゾンビクリーチャー。
その対処に困った政府が白羽の矢を立てたのは引きこもり世代と呼ばれる無職の若者達だ。
この時代になりたくない職業、警察官・自衛官がトップを占めていて人員不足。
その穴埋めの為、自宅警備隊制度を導入した。
僕、神崎カケルも漏れなく自宅警備員として働く事になった。
更に入隊前に行われる魔導適性検査結果がランクAと判明する。
チート能力【 レイブル 】を使いこの新トーキョーを守る!!
☆が付いている話は挿絵ありです。あくまで雰囲気がわかる程度です。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる