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ぼくのかんがえたさいきょうのぶき

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求めた返事は勿論なかったがとりあえずやり取りに満足した俺は、ついに木箱を開いた。

「やばいかっこいいwwwwww」

「うっわいいなソレ」

「イヴも持ちたい」

黒い銃は西洋の棺桶を模した六角形の銃身にシルバーの装飾、白い銃は墓石をイメージした長方形の銃身に金の装飾が施された見事な一品だった。
試作品にはなかった装飾も相まって、特別感も出ている。

「でも銃って弾のコストが高すぎて冒険向きじゃないわよね」

この世界では金属製の物を使い捨てるということがあまりなく、大規模な工場を構える国は極めて少ない。
それに加えて魔法という便利で強力なものもあるせいか、銃は所持者の財力や階級を示すための道具としての意味合いが強いとのことだった。

「だがしかしwwwその問題は既にクリアしているのさwww説明してくれランバット氏wwww」

「おう、そうだな。この銃は弾倉を中心に複雑な術式が何百と刻まれてんだ。

魔導師のネェちゃんが気ィ狂いそうになりながら組んだ術式で、撃った弾を自動で復元して元の場所に収める仕様だ」

「物体の復元……だと……」

「いくら弾のサイズが小さいからってそんな複雑なものを……?!」

「なんかすごいの?カルラ」

「なんかすごいらしいぞイヴっちwww」

復元の術式は一朝一夕で組めるものではなく、構造が複雑であったり大きかったりするとさらに大変で、対象物によっては複数の魔導師が必要になるんだとか。

「お前の持ってきた素材じゃなきゃ到底造れなかったがな。鍛冶屋人生で一番の大仕事だったぞ」

「まさか異世界で銃が触れるなんてなぁ。海外で親父に習ったんだ的なシチュより確率低いのにwww」

「なぁカルラ、それは威力とか精度とか大丈夫なのか?」

「その辺は拙者のサイボーグの機能を使えば問題ナシ」

その後はタカトとランバット氏で武器談義に雪崩込んでしまい、女性陣がおいてけぼりになったりしたが、話題が変わって徐ろにランバット氏から訊ねられた。

「そうだカルラ、この銃の銘はどうすんだ?今なら彫ってやれるが」

「確かにあったほうがいいよなぁ。皆、なんかいいのない?」

「そんなの自分で付けろよ」

「しろとくろ!」

「イヴちゃん、もうちょっと捻ったほうがいいわ。クロネコとシロイヌとかどう?」

「カノンさんのセンスにはがっかりだよwww」

悩んだ。誰も参考にならない。
俺は両方を手に取って暫く考え込む。と、そこで一つの刻印が目に入った。設計図を紙に起こす際にノリで書いた厨二病全開の紋章。

黒い銃には太陽、白い銃には三日月を模したものを刻んでもらっていたのだ。

「ん、決めたぞ。黒いコイツが【スコル】、こっちの白が【ハティ】だ」

「おう、じゃあ待ってな」

彼はカウンターの中で何やら道具を持ち出して、その場で作業を始めた。

「そういえばランバット氏、ここは魔匠石置いてないの?」

「おお、あるぞ。けどお前、金はあるのか?」

「あー、魔匠石は結構高いもんな」

「ウチは魔道具屋よりは安くしてるが、それでも10万はするぞ」

「じゅっwwwwwwまじかwwwwww」

「また依頼をこなして出直しね」

「副団長さん、あんたもローン払えよ」

「うぐっ……わ、わかってます……」

借金副団長が流れ弾に当たってて草。

魔匠石は全国各地で採れるが、魔装具へ変換出来るように加工する職人があまりいないらしく、出している店によって値段のばらつきがあるようだ。

「よし、こんなもんでどうだ?」

「おぉ、あざっす!」

「じゃあ、そろそろ行きましょ」

「ランバット、またね」

「俺も今度装備整えに来るわー」

各々が挨拶を済ませ、俺達は別荘へ戻った。
同じ地球人と偶然会ったって竜胆が知ったら質問責めされそうだなとか思いつつ、ターニャさんの出してくれた紅茶で一休みしていると、竜胆が現れた。

「カルラくん、彼が私達と同じ世界から来たという勇者かな?」

「そうそうwww」

俺がタカトを紹介すると、リンドウは案の定矢継ぎ早に質問を投げかけた。

「【榊 天斗サカキ タカト】っす、よろしく」

「そうかでは、早速だがいくつか質問させてくれたまえまず、『君は西暦何年からここへ来てどれ程の期間この世界に滞在しているのか』『召喚された前後の状況』も聞きたいところだし『この世界に来て体に何か影響があったか』も知りたいねそれから、何か変化があったのなら是非解剖させてくれないかな?」

「え、ちょ、何すか?!早口だし近い!ていうか今解剖させろって言ったか?!」

「はかせ、テンションぶちあげ」

「リンドウ、落ち着きなさいよ。タカトが混乱してる」

ターニャさんが清ました顔でリンドウをソファに案内すると、リンドウはリセットされたように落ち着きを取り戻した。
この数日で扱いを覚えてんのすげぇなwww

「あー、じゃあまず俺がここに来た時の事を喋ればいいんだな?

俺は2023年の8月の夏休み、コンビニの帰り道で光る魔法陣に呑み込まれた。

目が覚めたら北大陸の【シャウレ帝国】の城に居たんだが、どういう訳か勇者の力は消えてて、皇帝のオッサンから自由にしろって放り出された。

それから一年は冒険者として現在に至るって感じだな。体に魔力が宿ってるが、平均より高くて珍しい属性がある程度で、特別な事も無いってよ」

「ふむ、それは……だいたいは理解したが疑問がある。まず君の過ごした時間と我々の時間は大幅に誤差がある。召喚の際に一人だった事も、我々の状況とは異なる……が、君がそれらの原因を知るはずも無いだろうし、参考程度に受け取っておく」

確かに、時間は誤差がある。俺達の過ごした西暦は2028年の5月。計算が合わない。まぁ、時空の歪み的なアレなんだろうなwww知らんけどwww

「あぁ、それは俺も思ってた。ギルマスも地球人って話だが、詳しく聞いたことないから今度会ってみたらどうだ?」

「ギルマス、とは何かな?」

「ギルドマスターね。各支部を統括する人物よ」

「おはなし、難しい」

「今考えてもしゃーないやんwwwとりあえず明日に備えてダラダラしようwww」

竜胆はギルマスに会うついでに明日の依頼に同行する旨を伝えると、再び研究室へ戻っていった。
その依頼が終わったら、俺もメンテナンスされるらしい。怖すぎwwwwww

「お前の仲間、変わり者ばっかりだな」

「アイツは一番の変わり種www」

竜胆に圧倒されたタカトがそんなことを呟いていると、突然後頭部に柔らかい何かが押し付けられた。

「ご主人様♡おかえりなさい!」

「っつぉふwwwwwwお、おぱwwwただいま帰り申したwwwwwぐへふwwwwww」

「なんか難しいお話してたから上で見てたんだ~。もう終わったなら、シャルとお部屋でイイコトしよ?♡」

おっぱいのバーゲンセールからの囁きコンボで死亡しかけたが、とりあえずフルオッキを隠してやり過ごすことにした。
あかんですよ、そんなガシガシボインボイン当てられたらドビュッシーしちゃうからwwwwww

「耳は弱いし友達来てるからあかんですわwww」

「なんだこいつ……」

「シャルはカルラ様の使い魔だよ~」

「ちょっとシャル、いい加減にしなさいよ」

「いつも過激」

その後はタカトが収集しているこの世界のボードゲームで遊んだり、夕食を摂ったりして過ごした。
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